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人前で号泣しちゃったわけ
「お母様は最後まで息子が心配だと言っておられました。こうも仰っていました。私がいなくなったら息子は・・・と。最後の最後までご自分の息子を大変思ってあの世にいかれましたよ」
美咲の言葉に彼は申し訳ないような気がしてたまらなかった。
母さんは最後苦しんでいなかったのだろうか。ここに来て涙がこらえられなくなった彼は、静かに一粒目からそれを流した。
田口と美咲は彼を黙ってみつめていた。
「最後、母は苦しまなかったんでしょうか?」
美咲は微笑して首を横に振った。
その仕草と無言の母の最後の姿に、彼の脳裏は悲しみに溢れた。せめて心配をかけずにあの世に送ってやりたかった。今更後悔しても、母親はもういない。
やり場のない怒りが、自分に向けられるのが分かった彼は、悔しさのあまりはじめて人前で声をあげて泣いた。




