表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アビス・グランブルー 〜クラン追放された最底辺ダイヴァー、わたしはやめたくなかった〜  作者: ロートシルト@アビス・グランブルー、第5章更新中!
第5章 光の海と闇の海

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

99/111

第92話 海の戦果と、静かな眠り

 ダイヴァーズギルドの扉を押すと、

 いつもの潮と紙の匂いが鼻をくすぐった。


 人の声。

 装備の擦れる音。

 それらが、今日は少しだけ――

 遠く感じる。


 私は、網を引きずりながら受付へ向かった。


 


 ♢


 


「……ミストさん」


 カウンターの前で、声をかける。


「依頼、完了しました」


「あ、ナナミさん……!」


 ミストが顔を上げ、

 すぐに柔らかく微笑んだ。


「確認しますね……」


 そう言いながら、

 ふと、視線が下へ落ちる。


「……あの」


 網と、私の後ろを見て。


「その……引っ張っている網は……?」


「えっと……」


 私は、鞄から保存袋を取り出し、

 カウンターへ置く。


「まずは、依頼品の《星紡ぎ糸藻》です」


 そして。


 少し、間を置いて。


「……それと」


 網を、軽く持ち上げた。


「道中で遭遇した海魔です」


 ミストが、

 一瞬、固まった。


 


 ♢


 


「……は?」


 低い声が、横から割り込む。


 割り込んだ声は副長――ブレイカーだった。


 彼は、網の中身を覗き込み――

 次の瞬間。


「おいおい……!」


 目を見開いた。


「これは……シャイン・レイスじゃねぇか……!」


 ギルド内の空気が、

 ぴし、と張り詰める。


「……独りで、討伐したのか?」


「はい……」


 私は、頷いた。


「採取中に遭遇して……攻撃を仕掛けられたので、やむを得ず……」


 一拍、置いて。


「見たことが無かったんですが……危険、ですよね……?」


 ブレイカーは、

 ゆっくりと息を吐いた。


「珍しすぎて滅多に遭わないが、危険なんてもんじゃねぇよ……!」


 声が、低く響く。


「よく……よく、生きて帰ってきてくれたな」


 じっと、私の顔を見る。


「今後の為に、どんなモンか説明はしたいところだが……ナナミ、顔色悪いな」


 肩に手を置かれる。


「ヤツに魔力……やられたな」


 その横で。


 受付嬢ミストは――

 完全に、顔色を失っていた。


 


 ♢


 


「この死骸と海晶核はな」


 ブレイカーが、真剣な表情で言う。


「査定に時間が掛かる」


「特に……その白い核は、な」


 彼は、一度だけ私を見てから、


「依頼の報酬だけ、今日は受け取れ。

 そして――早く、休め」


 その言葉に、

 胸の奥が、少し緩んだ。


 


 ♢


 


 その間に。


 ミストは、既に――

 保存袋の中身を確認し終えていた。


「……検品、問題ありません」


 報酬袋が、差し出される。


「こちらが、今回の報酬です」


 金属音が、小さく鳴った。

 金貨1枚と銀貨2枚が置かれる。


「ナナミさん……」


 ミストは、ぎゅっと手を握りしめている。


「……無茶、しないで下さいね……

 また一緒にお茶したり。お話したいので」


「はい……」


 私は、苦笑して頷く。


「本当に、本当に……危なかったので……次は……気をつけます」


 


 ♢


 


 ギルドを後にし、

 私は、海辺の子ブタ亭へ戻った。


 扉を開けると、

 潮と木の匂いが、優しく迎えてくれる。


 部屋に入った瞬間――


「……疲れたかも」


 ぽつりと、零れた。


 身体が、

 一気に重くなる。


(当然よ)


 アストラルの声が、穏やかに響く。


(今日は魔力消耗が激しすぎる

 何も考えず……休みなさい)


「……うん」


 私は、装備を外し――

 そのまま、ベッドへ倒れ込んだ。


 


 ♢


 


 瞼が、重い。


 意識が、ゆっくりと沈んで微睡んでいく。


 深海の闇とは違う――

 安全な、暗さ。


 最後に浮かんだのは、

 淡い蒼の光と――


 心配そうな、声。


(……おやすみ、ナナミ)


 私は、その声に包まれながら――


 深く、ぐっすりと――眠りに落ちた。


──続く


【ナナミのお財布】

金貨39枚

銀貨53枚

銅貨22枚

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ハイファンタジー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ