表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アビス・グランブルー 〜クラン追放された最底辺ダイヴァー、わたしはやめたくなかった〜  作者: ロートシルト@アビス・グランブルー、第5章更新中!
第5章 光の海と闇の海

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

97/115

第90話 幻を断つ蒼の槍

 濃紺の海は、静まり返っているようで――

 決して、止まってはいなかった。


 触手を一本失ったシャイン・レイスは、

 淡い光を震わせながら、ゆっくりと距離を取る。


 だが、その動きは先ほどまでの余裕を失っている。


(……来るわよ)


 アストラルの声が、低く告げた。


(焦り始めてる)


「……分かってる」


 私は、短く息を吐き――

 水を蹴った。


 


 ♢


 


 一気に近づき、しかし――

 深追いはしない。


 触手が伸びる、その直前。


 身体をひねり、すり抜ける。


「――っ!」


 ブルーランスが、光の縁をかすめる。


 今度は――


 ぷつり。


 また一本。


 触手が淡い粒子を失い、散った。


 距離を取り、再び加速。


 攻撃しては離れ、

 離れては、また踏み込む。


 ヒットアンドアウェイ。


 生死を賭けた土壇場、ナナミは新しく戦闘技術を昇華させた。


(いいわ、その調子)


 アストラルが、冷静に評価する。


(確実に、削れてる)


 シャイン・レイスの動きが、目に見えて鈍る。


 触手の本数は、もう――

 半分以下。


 それでも。


 油断は、しない。


 


 ♢


 


 私は、一度――

 大きく距離を取った。


 右腕を、胸元へ引き寄せる。


 魔力を、集める。


 ブルーランスが、

 じわり、と蒼く輝き始めた。


(ナナミ……?)


 アストラルが、僅かに声を強める。


(まさか……本体を?)


「……うん」


 私は、シャイン・レイスを真っ直ぐに見据える。


「狙うよ」


 魔力が、腕の奥で脈打つ。


 水が、震える。


 その様子を見て――


 シャイン・レイスが、反応した。


 残った触手が、一斉にこちらへ向く。


(……来る!)


 次の瞬間。


 私は――


 踏み込まない。


 狙いを、ずらす。


「――っ!」


 ブルーランスが描く軌道は、

 本体ではなく――


 触手の、付け根。


 油断しきった、その一瞬。


 蒼い閃光が、走る。


 ざん、と。


 光が、まとめて断たれた。


 触手が、二本、三本――

 一気に、切り落とされる。


 深海に、光の残滓が舞った。


「……!」


(フェイント……上手い……!)


 アストラルが、息を呑む。


 シャイン・レイスは、

 はっきりと動揺した。


 光が、不規則に明滅する。


 


 ♢


 


 ――その直後。


 視界が、歪んだ。


 深海の闇が、柔らかくほどけて――


 そこに。


 あの、淡い金色の光が現れる。


 小さく、揺れる――

 懐かしい存在。


「……ルミナ……?」


 一瞬、胸が――

 締め付けられた。


 でも。


 次の瞬間。


 私は、強く歯を食いしばる。


「……また……」


 胸の奥から、感情が湧き上がる。


「また、それを使うの……?」


 ルミナの姿が、

 助けを求めるように揺れる。


 でも。


 その光は――

 どこか、冷たい。


 私は、首を振った。


「……違う」


 ナナミの胸元にある金色の石が入った小さな袋。


 その袋を、強く抱きしめる。


 ナナミは今、確かにその石から温度と鼓動を感じた。


「……ルミナは――」


「わたしの、ここにいる!」


 幻が、ひび割れる。


 光が、歪む。


「またルミナを出すなんて……!」


 怒りが、声になる。


「――もう、許さない!」


 


 ♢


 


 幻が、砕け散った。


 視界が、現実に戻る。


 そこにいるのは――


 動揺したままの、

 シャイン・レイス。


「……今だ……!」


 私は、即座に――

 魔力を、解放した。


 右腕いっぱいに込めた蒼が、

 一気に噴き上がる。


 ブルーランスが、

 深海を裂く。


「――はああっ!」


 躱させない。


 幻を使う隙を、

 私は――見逃さなかった。


 蒼い一閃が、

 シャイン・レイスの本体へ――


 ドォォォォンーー!


 確かに。


 叩き込まれた。


 光が、大きく揺らぐ。


 深海に、低い衝撃が響く。


(……当たった……!)


 アストラルの声が、震えた。


 私は、息を吐きながら――

 ランスを、構え直す。


 弾かれた初撃とは違う、ハッキリとした手応えを感じた。


 確かに今――


 この一撃は、

 シャイン・レイスへ届いていた。


──続く

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ハイファンタジー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ