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アビス・グランブルー 〜クラン追放された最底辺ダイヴァー、わたしはやめたくなかった〜  作者: ロートシルト@アビス・グランブルー、第5章更新中!
第4章 居場所

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第78話 シェル・タートル

――ナナミ視点――


 深度計の数字が、ゆっくりと200を指した。


 藍色だった海は、さらに色を落とし黒が混じる静かな世界へと変わっていく。


 その瞬間。


(深度200まで来たわよ)


 頭の中に、アストラルの声が響いた。


(ここからは普通の魔力の質だと、魔力膜への負荷が更に増すわ)

(ナナミならば体感ほぼ変わらないと思うけれど……油断しないで)


「……はい……」


 小さく返事をする。


 意識を、自分の内側へ。


 魔力の流れ。

 魔力膜の状態。


(……確かに)


 魔力は、僅かに、確実に消耗し続けている。


 でも──


(浅い海と……そんなに、変わらない……)


 強い圧迫感も、息苦しさもない。


 ただ、静かに魔力が削られていくだけ。


 ――不思議なくらい、穏やかだった。


* * *


 さらに降下。


 ――210


(……来たわよ)


 アストラルの声が、少しだけ鋭くなる。


(サイズが大きい。……これは大型の海魔。しかも二体)


 アストラルに導かれた方向へ、意識を向ける。


 群青色の向こう。


 重たい影が、ゆっくりと動いた。


「……!」


 姿を現したのは──

 巨大な亀の形をした海魔。


 分厚い甲殻。

 岩のように重そうな四肢。


「……でっか……3メディルはある」


 ホープが、思わず呟く。


 グレイスさんが、即座に判断する。


「シェル・タートルね。動きは遅いけど、防御が異常に硬い」


 視線が、私たちへ。


「私が一体引き受ける、ナナミちゃん、ホープ、ニーナ。もう一体をお願い」


「……はい……!」


 頷く。


 大型。

 しかも、防御特化。


(……慎重に……)

 


* * *


 

 グレイスさんは、迷いなく一体へ。


 金色の魔力が閃き、

 別次元の戦闘が始まる。


 私たちは、残る一体へ。


 シェルタートルは、

 こちらを認識すると、低い唸り声を上げた。


 ――遅い。


 でも。


 ニーナさんの斬撃が、甲殻に弾かれる。


「……っ、硬い!」


 ホープの槍も、深く入らない。


「マジかよ……岩じゃん!」


(……やっぱり……)


 私は距離を取りながら、観察する。


 甲殻は、ほぼ無傷。

 正面突破は、無理だと思える。


(……弱点……)


 その瞬間。


 アビス・シェルタートルが、身体を沈めた。


「来る!」


 ホープの声。


 次の瞬間、

 鈍い衝撃波。


 水ごと叩きつけるような突進。


「……!」


 ニーナさんが後退。

 私も、すぐに位置を変える。


(遅いけど……一撃が重い……)


 長引き、集中が途切れるとこれは危険だ。


「……ホープさん……ニーナさん」


「ん?」


「……足……関節の内側……」


 甲殻に覆われていない、僅かな隙間。


「そこ……狙ってください……」


「了解!」


 ホープが、派手に動く。


「おいデカ亀! こっちだ!」


 注意が逸れた、その瞬間。


 ニーナさんが、逆側へ回り込む。


「今ね!」


 私は、一気に加速。


 ブルーランスに力を込める。


「……っ!」


 狙うのは、関節の奥。


 魔力を、細く、鋭く。


 ――突く。


 甲殻の隙間を貫き、

 内部へ魔力が流れ込む。


 シェル・タートルが、

 大きく身体を震わせた。


「今だ!」


 ホープの一撃が追撃。

 ニーナさんの刃が、同じ箇所を抉る。


 ――鈍い音。


 そして。


 巨体が、ゆっくりと崩れ落ちた。


「……はぁ……」


 思わず、息を吐く。


 硬かった。

 本当に。


「ナナミちゃん、ナイス判断!」


 ニーナさんが、微笑む。


「いやー、時間かかるかと思った!」


 ホープも、ほっとした顔。


「……ありがとうございます……」


 胸の奥で、

 小さく安堵する。


* * *


 グレイスさんは、既に撃破を終えて3人の戦闘を静観していた。


「さすがね……3人ともいい連携だった」


「……!」


 褒められて、少しだけ照れる。


「海晶核を回収して、先へ行こう」

「目的地は、もうすぐよ」


 再び、降下。


 静かな闇の中──

 やがて、巨大な影が見えてきた。


「……あれ……?」


 それは、

 海底に根付く、巨大な球体。


 岩と藻と鉱物が絡み合ったような──

 調査対象のマリモ。


 周囲の地形は、明らかに異質だった。


 鉱脈の気配。

 魔力の滞留。


(……ここ……)


 胸が、高鳴る。


(……白銀鉱……)


 目的地は、目の前。


 でも──

 まだ、探し当てたわけじゃない。


 私は、拳をそっと握った。


(……焦らない……)


 今日の私は、

 “探す”役目。


 静かな深海で、

 本当の目的が、ゆっくりと近づいていた。


──続く。

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