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アビス・グランブルー 〜クラン追放された最底辺ダイヴァー、わたしはやめたくなかった〜  作者: ロートシルト@アビス・グランブルー、第四章も毎日20時更新!
第四章 居場所

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第六十一話 蒼の槍と、まだ選ばない道

 翌朝。


 宿の窓から差し込む朝日が、ナナミの頬をやさしく照らした。


「……よし」


 身支度を整え、髪を結い直す。

 腰元にはまだランスがない。けれど、不思議と不安はなかった。


(今日は受け取りの日ね)


「うん」


 ナナミは宿を出て、朝の通りを歩き出す。

 目指す先は──グリーンリーフ堂。


* * *


 チリン、と鈴が鳴る。


「いらっしゃい、可愛い子」


 いつもの艶やかな声。

 作業台の上には、布に包まれた細長い影があった。


「……できてるわよ」


 フィアスが布を払う。


 現れたのは、見慣れた形。

 けれど──明らかに違う。


 蒼く澄んだ金属光沢。

 槍身には青鉱石由来の補強線が走り、魔力導管がより深く、強く刻まれている。


「わ……」


「スピアーランス改め、“ブルーランス”よ」


 フィアスは満足げに微笑む。


「青鉱石で全体を補強したわ。

 魔力の流れも安定してる。今のあなたには、ちょうどいい相棒ね」


 ナナミは、そっと手を伸ばした。


 握った瞬間、しっくりと馴染む。

 まるで、最初から自分のためにあったみたいに。


(……良いわね)


「ありがとうございます……!」


「ふふ、どういたしまして」


 フィアスは少し真剣な眼でナナミを見る。


「無茶だけはしないこと。

 武器が良くなったからって、海が優しくなるわけじゃないのよ?」


「……はい」


 ナナミは、ひと呼吸置いてから、思い切って尋ねた。


「フィアスさん……白銀鉱って……どこで手に入るんですか?」


 フィアスの眉が、わずかに上がる。


「白銀鉱……ね」


 少し考えてから、はっきり告げた。


「暗海域のマリモよ。

 深度300から先」


「……!」


「ソロのブロンズ級には、正直きついわ」


 そして、ふっと声を和らげる。


「だから……無茶はしないで。可愛い子が無理するの、私は嫌いよ」


 ナナミは、深く頷いた。


「……ありがとうございます」


* * *


 店を出ると、朝の風が頬を撫でた。


(ナナミ)


 アストラルの声が、静かに響く。


(白銀鉱が目的なら……昨日、ニーナが声をかけてくれたでしょう?

 クランに入るのは、ひとつの手よ)


 ナナミは、歩みを止めた。


「……うん。良い方法だとは、思う」


 正直な気持ちだった。


 暗海域。

 深度300。

 100すらまだ潜っていない。

 恐らく一人では、厳しい。


「でも……」


 ナナミは、ブルーランスの柄を握りしめる。


「それでも……そのためにクランに入るのは……違うと思う」


(……)


「目的のために、潮騒の宴を“使う”みたいなの……」

「それは……なんだか嫌」


 しばらくの沈黙。


 そして──


(ふふ)


 アストラルは、優しく笑った。


(そうね。ナナミなら、そう言うと思ったわ)


 胸の奥が、少しだけ軽くなる。


(今日は潜るの?)


「……うん!」


 ナナミは顔を上げた。


「潜る! ギルド行こう!」


* * *


 ダイヴァーズギルド。


 いつもより少し早い時間帯。

 受付に立っていたのは──ミストではなく、体格のいい男性だった。


「おう、ナナミ」


「ブレイカー副長……!」


「今日は潜るのか?」


「はい!」


 ブレイカーは親指で奥を示す。


「ブロンズ級とアイアン級の依頼は、あっちのボードだ」

「好きなの選びな」


「ありがとうございます」


 ナナミは、ブロンズ級の依頼ボードの前に立つ。


 張り出された依頼の深度は100〜200超え

 討伐。採取。また護衛も出始めた。


 どれも深度100超えだ。

 分かり易く、少しずつ難度が上がってきている。


(ナナミ)


 アストラルの声。


(右端の……あれは、どうかしら?)


 ナナミは、言われた通り右端の依頼書に目を向けた。


 紙が、わずかに揺れる。


「……?」


 中身は、まだ見えない。


 けれど──

 なぜか、胸の奥が静かにざわめいた。


 ナナミは、その依頼書に、そっと手を伸ばした。


──続く。

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