表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アビス・グランブルー 〜クラン追放された最底辺ダイヴァー、わたしはやめたくなかった〜  作者: ロートシルト@アビス・グランブルー、第四章も毎日20時更新!
第四章 居場所

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

63/64

第五十六話 金色を求めて

今日から第四章の更新がスタートです!

第四章も今までと変わらず20:00に更新します!

◆翌朝──海辺の子ブタ亭にて


 潮騒が朝の光を運び、窓の外でカモメが鳴く。


 ベッドの上でナナミは、ぱちりと目を覚ました。


 天井の木目。

 ほのかに塩の香りが混じる旅籠の布団。

 胸の奥に残った、まだ抜けない高揚と疲労。


「……あ、ここ……昨日……」


 昨日の激闘が、波のように脳裏へ押し寄せる。


 暗い海。

 第二波の乱戦。

 ワン・アイドの巨大な影。


 そして──


(グレイスさん……)


 脳裏に鮮烈に焼き付いている光景がある。


 黒い水を裂き、ただ一人で突っ込んだ背中。

 背負い続けていたあの巨大なハープーンを引き抜き──

 一つしかない“眼”へ、迷いなく突き立てた瞬間の光。


 海中の闇すら割るような、白い衝撃。


「すごかった……」


 その言葉しか出てこない。


 同時に、自分がもし同じ場面に立っていたら──

 そんな思いが胸に湧く。


(わたし、あの海魔に……攻撃、通ったのかな……?)


 心の中でそっと問いかける。


 すると──柔らかく、それでいて凛とした声が返る。


(──正直に言うなら、通用しなかったでしょうね)


「……だよね」


 アストラルの声は淡々として、けれど優しい。


(ナナミの魔力の質はとても高いわ。

 でも、まだ“量”は訓練途中。

 そして──あなたの今の装備では、あのクラスの海魔は相手にするには荷が重い)


 ナナミは小さく唇を噛む。


「やっぱり……強い武器って、必要なのかな」


(必要よ。もしナナミが“深い海”へ潜るつもりなら)


「深い……海……」


(ええ。でも──生活のために浅瀬で依頼をこなすだけなら、無理に潜る必要はないわ。

 どうするの、ナナミ?

 深海へ行きたいの?

 その理由は?)


 ナナミは胸元へそっと手を伸ばした。


 肌の上で温かく揺れる、小さな革袋。

 その中には──金色に光る、小さな石。


(……ルミナ……)


 唇が震える。


「もし……もしだけど……

 深海に行けば、ルミナの手掛かり……見つかるかな……?」


 しばらく、アストラルは答えなかった。


 静寂。

 潮騒だけが、ゆっくりと波を刻む。


(……輝流種は、深海で姿を見かけることがあるわ。

 だから──手掛かりが“ない”とは言わない)


「……!」


(でも、深海の危険は……身をもって体験したわよね?

 覚悟が必要だし……命を掛ける場面もあるかもしれない。

 それに、行っても何も得られない可能性もある。

 それでも──ナナミは求めるの?)


 ナナミは息を吸い、ぎゅっと拳を握った。


 迷いはあった。

 怖さもある。

 だけど──


「……うん。

 わたしを助けてくれたルミナのこと……知りたい。

 できるなら……“恩返し”がしたいの」


 その決意は、震えていても揺らがない。


 アストラルの声が、一瞬だけ柔らかく和らいだ。


(……わかったわ、ナナミ。

 なら私は──あなたが深海へ挑むための“標”になる)


「アストラル……ありがとう」


(そのためにも、武器は必要ね。

 ギルドに報酬を受け取りに行くんでしょう?

 そのあと……装備屋にも寄ってみるといいわ)


「うん……!」


 ナナミはベッドから立ち上がり、身支度を整えた。

 いつものアームガード。

 だいぶ使い慣れてきたスピアーランス。

 海の匂いを含んだ上着を羽織る。


 昨日の疲れは残っている。

 でも──胸の奥の気持ちは、どこか軽くて、強い。


「じゃあ……行こっか」


 海辺の子ブタ亭の扉を開くと、潮風が頬を撫でた。


 陽光の射す石畳を踏みしめて、

 ナナミはダイヴァーズギルドへ向かって歩き始めた。


──続く

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ハイファンタジー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ