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アビス・グランブルー 〜クラン追放された最底辺ダイヴァー、わたしはやめたくなかった〜  作者: ロートシルト@アビス・グランブルー、第四章も毎日20時更新!
第三章 アイアン級

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第五十一話 激突

 迫りくる影は──さっきよりも濃く、重い。


 水圧すら震わせるような怒号混じりのうねりが、こちらへ真っ直ぐ迫ってくる。


「数……もっと多い……っ!」


「オーガ・カサゴにシェード・フィッシュ、サージ・オッターまで……さっきの倍はいるぞ!」


 周囲のダイヴァーたちがざわつき、呼吸がざらつき始める。


 その空気を断ち切ったのは、ふたたび響いたあの声だった。


『まだ1人も脱落してねぇ!!』


 海流ごと揺らすような、バルバスさんの叫び。


『踏ん張れ!ここが見せどころだ!!

 安心しろ!後ろには──俺たちが控えてる!

 何かあったら必ずフォローするッ!!

 シルバー級は後方から前進開始!!』


 その声は恐怖を吹き飛ばし、胸の奥まで震えるほどまっすぐだった。


 後方に控えていたガンツさん、ルキアさんを含むシルバー級10人ほどが前進し始める。


「バルバスさん達が……後ろにいるよな……!」


「なら、行ける……っ!よし──行くぞーーーッ!!!」


「おおおおおおおっ!!」


 どっと海が揺れるほど、ダイヴァーたちが一斉に突撃した。


 ナナミも、ニーナも、ホープさんも──身体が自然と前に出ていた。



 第二波との激突。


 シェード・フィッシュが視界を乱すように泳ぎ、オーガ・カサゴが横合いから噛みつこうと迫る。


「こっち来ないでっ!」


 ナナミは左腕のアームガードで海魔の攻撃を弾き、スピアーランスを横薙ぎに振り、水を切る一閃で二体を撃破。


「ニーナさん、右から来るよ!」


「任せて!」


 ニーナが鋭い蹴りで海魔の軌道をずらし、その隙にホープさんが突っ込む。


「どけぇぇッ!!」


 ホープさんの両手短槍がサージ・オッターの突進を受け止め、そのまま胸へ深く突き刺さる。


 海魔が力尽き、沈む。


「くっ……まだ来るぞ!」


 その時だった。


 ナナミの視界の奥。


 第二波の“さらに奥”で──

 とてつもなく巨大な影が、ゆっくりと動いた。



 暗闇の海を割るように、巨大な触手がゆらりと揺れる。


 皮膚は黒く光り、何本もの吸盤が不気味に光っていた。


 そしてその中心──


 つぶれた片目。


 そこに宿るのは、深海に棲む捕食者だけが持つ、底知れない憎悪。


「あれ……っ」


 ナナミの息が止まった。


 胸が凍る。


「な、なんだあれ……デカすぎ……っ!」


「ひぃっ……!触手が……!」


 周囲のダイヴァーが一瞬で怯む。


 ──だが。


(大丈夫よ、ナナミ)


 ふっと、頭の内側にアストラルの優しい声が響いた。


(この距離なら、あの海魔からの攻撃は届かない。まずは“慣れて”)


(……う、うん……)


 ナナミは喉を鳴らし、心臓の鼓動を整えた。


 怖い。

 でも──見失わない。



 次の瞬間。


『ワン・アイドを視認したなッ!!』


 バルバスさんの声が、海中に轟く。


『シルバー級──突撃開始ッ!!

 俺たちゴールド級も続く!!』


「了解!!」


「行くぜ、ルキア!」


「……前進する」


 サポートに当たっていたシルバー級ダイヴァー──ガンツとルキアが、まるで槍弾のように加速した。


 サージ・オッターが行く手を塞ぐ。


 だが──


「退けェッ!!」


 ガンツの一撃が海を震わせ振動が波を伝わる、サージ・オッターを一撃で撃破していた。


「道、開けるわよ!」


 ルキアのスレンドスピアが閃き、シェード・フィッシュを二体まとめて貫く。その後早業で背中のボウガンを構え──連射。


 オーガカサゴ三体の額に矢が突き刺さり、力を無くす。


 他のシルバー級ダイヴァー達もどんどん、海魔を撃破していく。


 まるでそこに“水路”ができたように、道が開いた。


「す、すげぇ……!」

「つえぇ……さすがシルバー級……!」

「俺たちもやるぞ!」


 ワン・アイドの圧に押されかけてたブロンズ級以下のメンバーも奮闘し、海魔群を押し返し始めた。


 ダイヴァーたちの善戦、感嘆を背中に、シルバー級以上のダイヴァー達は──ワン・アイドのもとへ突き進んでいった。



 巨大な触手がゆらりと揺れる。


 黒い皮膚。

 沈むような圧。

 潰れた片目が、まっすぐこちらを捉える。


 ──海底の悪夢、ワン・アイド。


 決戦が、始まろうとしていた。


⸻続く

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