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アビス・グランブルー 〜クラン追放された最底辺ダイヴァー、わたしはやめたくなかった〜  作者: ロートシルト@アビス・グランブルー、第二章毎日20:00更新
第一章 深淵での出逢い

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第五話 昏い海の底を征く

 暗く冷たく底がしれない深海。危険な生物が跋扈し生きることも出来ないと思われた。


 そこでルミナという仲間を得ることが出来たナナミ。一筋の希望を胸に秘める。


 ナナミは脱出を決意したものの、上を見上げれば恐怖は容赦なく蘇る。


 闇の中を巨大な影が幾つも滑り、牙をむき、互いにぶつかり合う。


 深海の巨大な海魔がしのぎを削って争っている。音のない咆哮が圧力となって肌を刺す。


 こんな光景――誰も、見たことも聞いたこともない。アクア・ヘイブンのどんな海洋図にも載っていない“地獄”が広がっていた。



 さすがに人間ひとりの手に負える相手ではない。



「……どうしたら、いいの?」


 ルミナは返事のように一度だけ柔らかく光り、くるりと前へ回り込む。


 “ついてきて”――そんな意図が伝わった。


 ナナミは小さく息を吸い、震える足を海底へ踏みしめる。


 ふたりはゆっくりと、底を伝うように歩き始めた。



 ◆



 突然だった。


 海底の砂が爆ぜ、黒い影が“下から”襲いかかる。


 ――小型海魔。まるでイカのような形をしている。しかしそれは三つ目で、ヌメりとした手が鉤爪のように伸びてくる。


「きゃっ――!」


 反応が遅れ、ナナミは倒れ込む。


 魔力膜へべったりと触手がまとわりつき、ギチギチと軋む嫌な音が耳の奥で鳴る。


 このまま破られる――!


 その瞬間、視界を金色の閃光が横切った。


 ルミナが強烈に発光し、小型海魔はうめき声もなく痙攣し、その場で動きを止めた。


「ル、ルミナ……!」


 生き延びた安堵が胸を衝く。しかし息をしている余裕はない。


 動きを止めただけで、まだ死んでいない。

 チャンスは一度だけ――。


 ナナミは腰へ手を伸ばす。

 そこに“予備として”隠していた武器。誰にも言っていない切り札。


 柄を握る。

 スイッチを押すと――


 カシャッ! ギンッ――!


 折り畳まれた三叉が瞬時に展開し、銀の光を帯びたトライデントが姿を現した。


 柄は魔導伸縮式。海中でも最適な長さに一気に伸び、ナナミの手に馴染む。


「……こ、これ以上は……やらせない!」


 震える膝を必死で抑え、ナナミは立ち上がる。


 ルミナの光が背中に寄り添う。暖かい。怖いのに、前に出られる。


 止まっているイカ型の海魔へ、一気に踏み込み――


「はぁぁあっ――!!」


 刃が深海の闇を切り裂き、三叉が海魔の中心を射抜く。


 砂が舞い、鈍い衝撃が腕に伝わってくる。

 海魔が痙攣し、やがて動かなくなった。


 動かなくなったイカ型海魔はやがて宝石のようなものを吐き出した。


 海晶核だ。海魔を撃破した証だが…ナナミはそれどころではなかった。


 息が荒い。全身が震えている。

 でも――生きた。


「ルミナ……ありがとう。あなたがいなかったら、今ので終わってた……」


 金色の光がそっとナナミの肩に触れる。

 慰めるように、励ますように。


 ふと、あることに気づく。


 よく見ると……会った時より少しだけ、身体が小さい?


 「ルミナ……大丈夫?」


 ルミナはかすかに光り返すが、その光はほんの少し儚い。


 ナナミは深く息を吸い、覚悟を決めた。


「……行こう。早く。出口を探さないと。この海底を、必ず抜けるんだ……!」


 ルミナの光が力強く明滅する。

 それは“YES”。迷いのない返事。


 未知の深海。恐怖と絶望の世界。

 だけど――今はもう、ひとりじゃない。


 戦闘の恐怖から落ち着いたナナミは、海晶核を拾い歩を進める。


 二つの光が、ふたたび暗い海底を進み始めた。

ご覧いただき、ありがとうございます!

公開二日目でございます。早くも色々な方に観て頂けて嬉しいです!

作者名に記載している通りしばらくストックがあるので毎日更新を行います!

★★★★★次回11/20 20:00更新予定です★★★★★

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ハイファンタジー
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