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アビス・グランブルー 〜クラン追放された最底辺ダイヴァー、わたしはやめたくなかった〜  作者: ロートシルト@アビス・グランブルー、第四章も毎日20時更新!
第三章 アイアン級

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第三十一話 サージ・オッター

 フロート・オーブを後にし、ナナミは静かな海をゆっくりと泳ぎ出した。


「……ふぅ。たくさん採れたね……!」


(ええ。これだけあれば、初日の評価としては破格ね)


 鞄の重さが嬉しい。

 胸の内側も同じくらいあたたかく満ちていた。


「アクア・ヘイヴンに戻ったら、ミストさん驚くかな……」


(ふふ。間違いなくね)


 そんな穏やかな会話を交わしていた、その時──


 ──水が震えた。


「……え……?」


 遠くで、白い影が横切った。


 形は……アシカ。

 でも、その輪郭はどこか“裂けて”いて、尾びれの先には刃のような骨が覗いている。


(……ナナミ、止まって)


 アストラルの声が、わずかに鋭さを帯びる。


(アシカ型の中型海魔──《サージ・オッター》)


 鋭い牙、海流を纏うような滑らかな体表。

 光海帯では脅威……つまり“強敵”扱いだ。


(この辺りではめずらしく強い個体よ。油断しないで!)


「……やるしかない!」



 海魔がナナミへ飛びかかった瞬間、

 彼女は一歩“横”へ滑るように跳び、スピアーランスを低い姿勢で突き出した。


 槍の先端が海魔の腹をかすめ、青い火花のような魔力が散る。


(いい回避! そのまま間合いを取って!)


 しかしながら海魔はナナミの攻撃をものともせず、ずぶ濡れの弾丸のように二撃目を仕掛けてくる。


「速──っ!」


 ナナミは槍を横に払って受け流し、衝撃で大きく弾かれながら後退した。


 だが、その腕は震えていない。


(魔力の流し方……よくなってるわ。衝撃を“抜けている”)


「本当に……? やれる、気がする……!」



 海魔が咆哮とともに駆ける。

 ナナミは足に魔力を滑らせ、距離をギリギリまで引きつけて──


「──っ、今!」


 踏み込みと同時にスピアーランスを突き上げる。

 刃の軌跡が残光を描き、海魔の喉元をかすめて深く抉った。


 海魔が怯み、動きが一瞬止まる。


(ナナミ、離れて! 一撃で仕留められるほど甘くないわ!)


「わかってる──!」


 ナナミは身を翻し距離を取り、深く息を吸う。



 海流が渦巻く。

 海魔の周囲に水が集まり、まるで“水弾”を撃ち出す予兆のように膨らんだ。


(来るわよ……!)


 海魔が跳んだ。

 その身体が青い弾丸となり、ナナミの胸元へと一直線に迫る。


 だが──


「……見える!」


 ナナミは水を蹴り、海魔の真横へ“滑り込む”。

 スピアーランスの柄に魔力を流し込み、刃が蒼白く輝く。


「──はあぁッ!!」


 横薙ぎ。

 弧を描く一閃が海魔の側腹を割り、勢いのまま叩きつける。


 海魔は短く鳴き、痙攣し、やがて動かなくなった。


 そして海晶核を吐き出した。



「……はぁ……倒した……?」


(ええ。ナナミ、今の──見事だったわ)


「ほんと……? やった……!」


(魔力の扱いが明らかに上達しているわ。)


 褒められたナナミは、荒くなった息を深呼吸で収めたのち、笑った。


「アストラルのおかげだよ。……帰ろっか」


(ええ、報酬を届ける場所が待っているもの)



 海を泳ぎ、アクア・ヘイヴンの街灯りが見えてくる。

 海面に漂う青光の粒が、ナナミの帰還を祝うように揺れていた。


 アクア・ヘイヴンへ上陸しギルドの扉を開くと、温かな潮風の匂いとざわめきが迎えてくれる。


「ただいま……! 依頼、完了しました!」


(ナナミ。今日も素晴らしい一日だったわね)


──続く。

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ハイファンタジー
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