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アビス・グランブルー 〜クラン追放された最底辺ダイヴァー、わたしはやめたくなかった〜  作者: ロートシルト@アビス・グランブルー、第四章も毎日20時更新!
第三章 アイアン級

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第二十八話 ギルドに満ちるあたたかな潮風

 ミストが差し出したのは、細い鎖の先に吊られた小さなプレート型のネックレスだった。

 波紋のように広がる紋様が刻まれ、光を受けて淡く蒼く揺らめく。

 プレートには……’’アイアン級──ナナミ・マリーネラ’’、その刻印をナナミは指でなぞる。


「そちらが正式な〈潜海証〉です。ナナミさんは今日から──アイアン級のダイヴァーになります」


 その言葉が落ちてきた瞬間、ナナミの指先がぴくりと震えた。

 胸の奥で、何かが“ふわり”と浮き上がる。


「……これ、が……わたしの……潜海証……?」


(ええ。あなたの証よ。ナナミ──あなたは今日、本当に“海の世界”の住人になったの)


 アストラルの声が、潮騒のように優しく響く。

 それと同時に、胸の奥に温かい波紋が広がり、視界の端がじわりとにじんだ。


 ──こんな日が、自分に来るなんて。


 かつて、何をやっても自信がなくて、うまく笑えなくて。

 でも、それでも前に進もうと足を動かしてきた時間が、ひとつ報われたような気がした。


「……ありがとうございます……!」


 かすれた声に、ミストは目を細めて微笑みながら続ける。


「〈潜海証〉には周囲の水圧を測定し、その結果から……’’深度’’を測定する機能があります。」


 彼女はカウンター端の分厚い冊子を開き、丁寧にページをめくりナナミへ見せながら説明を始める。


「そして、ダイヴァーにはランクがあります。アイアン級からはじまり、ブロンズ、シルバー、ゴールド、プラチナ、ダイヤモンド、そしてオリハルコン級」


「お、オリハルコン……!」


「実際に到達できる人は、ほとんどいませんけどね。さらにその上も存在しますが……まあ、伝説みたいなものです」


(ナナミ、ひっそりとすごいことを聞かされてるわよ)


「すごい……本当にそんな世界があるんだ……」


「ランクが上がるほど、ギルドからの支援も増えます。専用装備の貸与、深層遠征の便宜、クラン設立の補助……今後のお楽しみですね」


 ナナミは胸元の潜海証をそっと握りしめた。

 金属のひんやりとした感触が、現実を確かに伝えてくる。


 ──自分は、この海で生きていくんだ。


 そんな覚悟が潮の満ち引きみたいに心へ押し寄せた。


「では、発行も済みましたし……」


 ミストが手元の銀色の小さな鐘を“チリン、チリン”と鳴らす。

 澄んだ音はギルド内の喧騒の中で不思議なほどよく響き、視線が自然とミストへ集まった。


 あたりの喧騒が鎮まった中でミストは話し始めた。


「本日、ダイヴァーの仲間が一名新たに加入しました。

 ──アイアン級ダイヴァー、ナナミさんです!」


「えっ、ちょ、ま……!?」


 突然の紹介に、ナナミの思考が真っ白になる。

 だが、その直後──ギルドの空気が一気に温かくなった。


「おう、新人ちゃんか! よろしくな!」

「こないだのあの子だろ? 海晶核持ってきたって噂の!」

「へぇ、可愛いな〜! あ、でもしんどかったらすぐ言えよ!」


 笑顔のひげ面の大柄の男、肩まで髪を垂らした微笑む青年、そして明るく笑う女性ダイヴァー──

 それぞれ違う色を持つ“明るい声”が、次々とナナミに向けられた。


 女性ダイヴァーは金の髪をひとつに結び、巨大なハープーンを背負ったまま手をひらひら振ってくる。


 彼女はニッコリと微笑みナナミへ声をかける。


「アイアン級のときは不安だらけだからね〜。困ったら女子組に声かけなよ!」


「わ、わ……!」


(ふふっ、ナナミ。あなた、もうここで“仲間”として見られてるのよ)


 胸がぎゅっと熱くなる。

 見ず知らずの人から向けられる歓迎が、こんなにも心を揺らすなんて知らなかった。


「み、みなさん……よろしくお願いします!」


 深く頭を下げると、拍手や笑い声があちこちから返ってくる。

 ギルドの空気が、まるで湯気の立つスープみたいにあったかい。


「では──ナナミさん」


 ミストが優しい声で呼びかけた。

 さっきまでの柔らかさとは少し違い、正式な事務口調に切り替わっている。


「ここからが本題です。

 あなたがアイアン級として受けられる、最初の正式依頼──紹介しますね」


 差し出された依頼書が、ナナミの未来を静かに照らしていた。

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ハイファンタジー
― 新着の感想 ―
こんにちは!とても面白かったので、またコメントさせてください。読みながら、物語の先の展開について妄想が止まらなくなってしまったので…(長文ですみません!)。 違うとはわかっているのですが、どうしても「…
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