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アビス・グランブルー 〜クラン追放された最底辺ダイヴァー、わたしはやめたくなかった〜  作者: ロートシルト@アビス・グランブルー、第四章も毎日20時更新!
第二章 アクア・ヘイヴン

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閑話 エクセイルの覚悟

 エクセイルはドレッド・シャークに向けて構え、臨戦態勢をとる中……


 ──突如、ドレッド・シャークが“消えた”。


 水が圧縮されるような静寂。

 次の瞬間、横合いから黒い閃光が襲いかかる。


「ッ──!」


 ギリギリで槍を構えて受け流す。

 だが衝撃で腕が痺れ、身体ごと後方へ吹き飛ぶ。


 水中が揺れる。

 魔力膜がビリビリと振動し、警告めいた光が走る。


(……速すぎる……! 本当に、同じ“海魔”かよ……!)


 エクセイルはすぐに身をひねり、横から迫る第二撃を避ける。

 鰭が水を裂く音すら聞こえない。

 ただ、避けた後に“何かが通った痕跡”だけが残る。


「クソッ……来いよッ!!」


 彼は渾身の力で槍を振るう。

 黒い刃が目の前を横切った瞬間、隙を狙って突き込む──が。


 ──キィンッ!


 硬い。

 まるで金属を突いたような感触が腕を逆に痺れさせた。


(硬すぎる……! 鱗が……ネームド級みたいじゃねえか……!)


 ドレッド・シャークがひるみもしないまま、口を開く。

 その奥に、渦のような暗流が巻き上がる。


「──ッ!?」


 エクセイルは身を翻し、死角へ逃げるように動く。

 しかし追ってくる速度が異常だ。

 暗海域の水圧を無視しているかのように、影がひたすら迫る。


(逃げきれない……!

 こいつからは……絶対に逃げ切れない……ッ!)


 頭では理解している。

 だが身体は戦闘の負荷と魔力膜の維持で限界に近い。


(もっと……魔力を乗せて槍を振らなきゃ……!

 けど……そんなことしたら魔力膜が保たねぇ……!

 この深度で膜が崩れたら──即死……!)


 葛藤が、胸を締め付ける。


 ドレッド・シャークはその迷いを嗅ぎ取るように加速した。


 水が爆ぜた。


「──ッ!!」


 エクセイルは槍を振り下ろす。

 だがやはり鱗に弾かれる。


 さらに尾の一撃が迫る。


「ぐっ……あああッ!」


 脇腹から食らい、身体が回転しながら吹き飛ぶ。

 内臓が揺れ、呼吸が乱れ、魔力膜の色がさらに薄くなる。


(まずい……もう限界が……!

 このままじゃ……一撃で、押し潰される……!)


 しかし、逃げても追いつかれて終わり。

 だったら──と、彼の中で一つの覚悟が固まる。


(……なら、一撃に賭けるしかねぇだろ……!!)


 エクセイルは深く息を吸い込む。

 魔力膜が悲鳴を上げても構わず、魔力を槍に集中させる。


 槍全体から、青白い火花が散った。

 暗海域の冷気に逆らうように、魔力が燃え上がる。


「……来いよ……!

 俺はまだ……折れてねぇ!」


 ドレッド・シャークが口を大きく開く。

 全身の鱗が逆立ち、突撃態勢に入る。


 ──その瞬間。


「今だ……ッ!!」


 エクセイルは全身の魔力を叩きつけるように加速。

 死角へと一気に回り込む。


 そして。


「おおおおおッ!!」


 渾身の槍が、ドレッド・シャークの脇腹へ突き刺さる。


 ──ゴギャッ!!


 金属を砕くような衝撃。

 黒鉄の鱗がはじけ飛び、赤黒い血が散った。


 ドレッド・シャークが短い悲鳴を上げ身体をくねらせる。


「ブォォォ……」


(通った……!やったか……!)


 しかし──。


 その傷は、巨体を止めるほど深くはない。


 ドレッド・シャークの複眼が、ゆっくりと、エクセイルを捉えた。


 先ほどまでとは違う。


 “捕食対象”としてではない。


 明確な──“敵”として。


 水が震える。

 サメの全身から、怒りと殺意が噴き出した。


(……やばい……完全に……こっちを“殺す”つもりだ……)


 逃げ場はない。

 魔力も残りわずか。

 魔力膜は今にも破れそうに震えている。


 エクセイルはゆっくりと目を閉じた。


(……あぁ……ここまで……か……

 ナナミ……お前が見た景色を……

 俺も追っていけると思ったんだが……)


 ドレッド・シャークが、闇そのものを裂く勢いで突進してくる。


 海が震え、圧が押し寄せる。


 ──巨大な影が迫る。


 エクセイルの心臓が、ひとつ大きく脈打った。


………………………………続く。

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