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アビス・グランブルー 〜クラン追放された最底辺ダイヴァー、わたしはやめたくなかった〜  作者: ロートシルト@アビス・グランブルー、第四章も毎日20時更新!
第二章 アクア・ヘイヴン

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第二十三話 フィアス

 扉を閉めると、店内の空気がふわりと肌を撫でた。

 油と金属と、海で採取できる藻を織り込んだ特殊布の匂い──そのどれもが、ここが“本物の潜行具専門店”だと教えてくれる。


「いらっしゃい──」


 奥から響いた声は、やけに艶めいていた。


 振り返った瞬間、ナナミは目を丸くした。


 長い金髪が波のように揺れ、豊満な曲線を惜しげもなく包んだ深藍色のスーツ。

 右眼には眼帯。左眼は妖しく煌めき、唇は深紅。


 ──妖艶で、どこか危険な香り。


「まぁ……可愛い子が来たわねぇ。食べちゃいたいくらい」


「えっ!? ええっ?!」


(すごい女主人が出てきたわね! クセがあるどころじゃないわ……!)


 髪飾りからアストラルの警戒を孕んだ声が聞こえる。


 フィアスと名札のついたその女性は、ゆっくり近づきながら艶やかに微笑んだ。


「そんな怯えた顔しないで。私は噛まないわ……たぶん」


「た、多分……?」


 ナナミが後ずさると、フィアスは気まずいほど距離を詰めてきた。


「今日はどうしたの? 可愛い子が一人で潜行具を買いに来るなんて」


「あ、あのっ! ブレイカーさんの紹介で来ました! 装備を……揃えに!」


 その名前が出た瞬間、フィアスは目を細めた。


「あぁ。あの堅物ね。昔はもう少し可愛げがあったのに……クスッ」


(なんか……知り合い以上の雰囲気あるんだけど!?)


 フィアスは満足そうに頷き、ナナミの全身を一度見渡した。


「なるほど。ブレイカーが『面倒見てやれ』と言うなら、あなたは本当に放っておけない子なのね。いいわ──全部選んであげる」



 ♢



 そこからの動きは速かった。

 測定具を取り出しサイズを測り、布地を吟味し、防具の硬度を指先で確かめる。


「初心者用の潜行スーツ一式。軽防具は繊維強化タイプね。ある程度の深度ならこれで十分」


 テキパキと見繕いながら、時折こちらに妖しいウインクを飛ばしてくるのが困る。


「あとは武器ね。あなた、何を使ってるの?」


「あ……これなんですけど……」


 ナナミは海底でずっと使ってきた、折りたたみ式のトライデントを取り出した。


「展開しますね──」


 シャキン──と音を立てて刃が伸び──


 ガチャンッッ!!!


 次の瞬間、刃がひとつ、またひとつと崩れて床に散った。


「えっ……!? な、なんで……!」


 金属片がカラン、と乾いた音を立てる。


 フィアスは一瞬、言葉を失ったように固まった。


「……ちょっと待って。あなた……これを普段使いしてたの?」


「は、はい……これしかなくて……!」


 フィアスは落ちた刃を拾い上げ、眉を寄せる。


「何に向けて攻撃したの?こんな摩耗……

 刃は限界を超えてるどころじゃないわ。構造そのものが崩壊寸前。普通ならとっくに折れてる」


「え……?」


 刃面に残る、微かに光る痕跡。

 フィアスは指先でそれをなぞり──目を細めた。


「……魔力で無理矢理強化して“形を保たせて”たわね。しかもこれは──なんの魔力?」


(輝流種の魔力ね。間違いない)


 アストラルの言葉にナナミの心臓が跳ねた。


 ルミナの魔力。

 追放されてから、いつもそばにいたあの光。

 自分を守り続けてくれた……あの子。


(そんな……私、装備まで魔力を付与されてずっと……守られてたの……?)


 胸の奥がじんわり熱くなる。

 同時に、武器の崩壊が、自分の無力さの証みたいで目が滲みそうになった。


 フィアスはそっとナナミの肩に触れた。


「大丈夫よ。

 あなたが無事だったのは……誰かが必死に守ってくれたから。

 それは悪いことじゃないわ」


 ナナミは深呼吸し、ゆっくり頷いた。


「……はい。もう……頼りきりにはなりません。ちゃんと、自分の力で潜ります」


 その言葉に、フィアスはにっこりと微笑んだ。


「いい子ね。じゃあ、あなたに合う武器を選ぶわ」


 フィアスが棚から取り出したのは、

 軽量のスピアーランス──初心者向けだが扱いやすく、そこそこの深度でも安定する万能武器だ。


「これならあなたでも振り回せるし、魔力の流れも素直よ」


「これ……買います!」


 フィアスは明細を見て、指を折る。


「潜海スーツ、防具、採取工具セットに収納鞄、スピアーランス……全部で金貨15枚ね」


 それは初心者用の装備にしては少々値の張る価格であったが……


「はい!」


 ナナミは、ためらわずに金貨を15枚差し出した。

 それは新しい一歩を踏み出す決意でもあった。


「更衣室は奥よ。可愛い姿、私に見せて?」


「み、見せません!」


「残念」


 妖艶な笑みを背中に受けながら、ナナミは急ぎ足で着替えへ向かった。


 * * *


 新しい潜海装備に身を包み、スピアーランスを背負ったナナミは、心なしか背筋が伸びていた。


(うん……軽い。前の装備とは全然違う……!)


 店を出る前に、フィアスがそっと手を振った。


「気をつけて行きなさい。ブレイカーによろしくね」


「はい! ありがとうございました!」


 扉が閉まる直前──


「また来てね。可愛い子」


「──!」


 フィアスの言葉にナナミは顔が真っ赤になって返事ができなかった。


 * * *


 ──ダイヴァーズギルド。


 戻ってきたナナミを見て、ブレイカーは目を丸くした。


「……おお。見違えたな。いい装備を選んでもらったな」


「はい! 武器も、装備も!」


(よかったわね。これで深度35にも行けるわ)


 ナナミは力強く頷いた。


「準備、できました!」


 ブレイカーはにっと笑う。


「よし──じゃあ“青の洞窟”へ向かう段取りを説明するぞ」



──次回へ続く。




  キャラクター紹介

 名前:フィアス・アリアンロッド

 性別:女性

 年齢:??歳

 経歴:元ダイヴァー⇒現グリーンリーフ堂の女主人

 ダイヴァーズギルドのブレイカーとは旧知の中。

 元ダイヴァーだったが今は引退してダイヴァーの装備を販売するグリーンリーフ堂を営む。またダイヴァーにとって優れた装備を作成する技師でもある。

 可愛い女の子がとても好き。


挿絵(By みてみん)

 

 【ナナミのお財布】

 金貨14枚、銀貨3枚

明日も20時更新です!


是非とも★★★★★評価お願いします⸜(*˙꒳˙*)⸝

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