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アビス・グランブルー 〜クラン追放された最底辺ダイヴァー、わたしはやめたくなかった〜  作者: ロートシルト@アビス・グランブルー、第二章毎日20:00更新
第一章 深淵での出逢い

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第十四話 古の海路

 髪飾りを装着した直後も、教会は深海の静寂をまとったままだった。

 けれどナナミには――世界の輪郭がほんの少し明るくなったように感じられた。


(さて……ナナミ。まずは、あなたがどのようにしてここへ来たのかを教えてください)


 アストラルの声が、頭の奥でやさしく震える。


「ど、どうやって……?」

 

(ええ。深海は容易に人が踏み入れられる場所ではありません。あなたが“落ちた”理由を知る必要があります)


 ナナミは金色の石を胸に抱えたまま、ゆっくりと言葉を探した。


「わたし……アクア・ヘイブンの海辺にいたら……

 そのとき、急に海が暗くなって……黒い渦が現れて……飲み込まれたんだ」


(黒い渦……)


 アストラルの気配がわずかに揺れた。


(……それは、おそらく “アビスリフト” ですね)


「……そう!アビスリフト!」


(本来アビスリフトは、深海と浅海層を繋ぐ “昇降流のゲート” でした。

 海流を組み替え、潮の階層を往来できる――我々の文明がつくった、古の海路です)


「門……」


(しかし今は壊れ、昇る流れを失い、落ちるだけの…… “堕落の渦” となってしまった)


 ナナミは息を呑んだ。

 渦に呑まれたときのあの感覚――押し潰されるような重さと、声すら出ない恐怖が蘇る。


「じゃあ……わたしがここに落ちたのって……」


(偶然ではありません。壊れた門が、深海へ落ちる流れを形づくり、あなたを引き込んだのです)


 アストラルは静かに告げる。


(ですが、ここに来たのもまた……必然だったのかもしれません)


「必然……?」


(この施設――教会に見えるかもしれませんが、本来は “門の鍵”。

 乱れたアビスリフトの流れを 一時的に“反転” させ、

 深海から浅海層へ戻すための装置なのです)


「も、戻れる……!」


(はい。あなたが望むなら)


 胸の奥が熱くなる。

 ついに戻れる――アクア・ヘイブンに。

 ルミナが導いてくれた、この場所から。


「戻りたい……ルミナが導いてくれて、ここにやってきたから!」


 ナナミの声に、アストラルの声が静かに導くように響いた。


(わかりました。それでは、起動します。ナナミ……しっかり掴まっていてください)


「な、何を掴めば……!」


(心の準備だけで十分です)


 その瞬間、教会全体が低く震えた。

 天井に埋め込まれた蒼光石が一斉に光を増し、

 ステンドグラスが海水の中とは思えないほど鮮やかな輝きを放つ。


 足元から、微かな上昇流が生まれた。


「……わ、わあっ……!」


(大丈夫です。これはまだ“息吹”に過ぎません)



 次の瞬間――



 ナナミの身体がふわりと浮き上がった。


 海水が逆巻いて天へ向かい、

 巨大な一本の光の柱が、教会の中心から立ち上がっていく。


(反転流〈リバースゲート〉、起動……。

 ナナミ、あなたは今“門”の道筋に乗っています)


 水が上へ上へと駆け昇り、

 ナナミの身体はそれに引き上げられるようにして浮上していく。


 教会の天井が遠ざかり――


 深海の闇が、まるで引き裂かれるように開いていく。


(……ナナミ。怖くありませんか?)


「……ううん」


 胸に抱えた金色の石をぎゅっと握る。



「だって……ルミナがいてくれるから」



(……そうですね。あなたは本当に、強い)


 水圧が少しずつ軽くなる。

 暗闇に、淡い光が差し込む。


 上昇するほどに、世界が明るく――温かくなっていく。


 ナナミは目を細めた。


(まもなく浅海層です。光に備えて――)


「うん……!」




 ♢




 長い闇の旅路の果て――

 ひときわ眩しい、白い光が視界いっぱいに広がった。



 ナナミは思わず手で目を覆う。



 深海ではありえない、生きた太陽の光――

 “人の棲む海” の明るさが、全身を包み込んでくる。



(……おかえりなさい、ナナミ)



 その声に、胸がきゅっとなる。



 ルミナ。

 わたし、帰ってきたよ――。



 そしてナナミの視界が光に馴染んだとき、

 波間に揺れる、見覚えのある影が形を結び始めていた。



 

 第一章 深淵での出逢い 完


 

 

 次章――アクア・ヘイブンへ

ここまで観て頂き、誠にありがとうございました!

これにて第一章は閉幕です。


深海パートからの生還は成功し、ナナミはアクアヘイヴンへ帰還します。


明日11/30 20:00より、第二章開幕!


ここまで楽しかった!良かった!など感じましたら…

是非とも★★★★★評価や感想、ブックマークをお待ちしております⸜(*˙꒳˙*)⸝


書くのが面倒、であれば︎︎スタンプも喜びますw

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ハイファンタジー
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