第四話 ラガセー・サンラック
ジャンプトンネルを抜けると、クレイバーが再び宇宙船を操縦する。
相変わらずの荒っぽい操縦で、惑星サドニアの大気圏に突入した時も揺れが止まることはなかった。操縦のひどさに4人は悩まされるが、幸いにも方向感覚はあるようで目的地とされる発着場に一直線で着いた。
レンガ造りの発着場は重厚な佇まいを見せ、宇宙船が上空に近づくや否や、備え付けられた巨大なフロアハッチが軋むような音を立ててゆっくりと開かれていった。
「なんだか物々しい雰囲気だな」
降下する宇宙船から、クラウドは兵士が隊列を組んで並んでいるのを見た。
厳重な警備態勢を敷いているようだった。
「大勢で出迎えるのがここのしきたりだそうだ。そう警戒しなくていい」
殺気を放つクラウドに対してクレイバーはそっと宥めた。
その言葉を聞いてクラウドの肩の力は抜け、殺気は次第に収まっていく。
「だったら知り合いというは高官か何か? それなりの地位がないと動員できないだろ」
「そんなもんだ。出会った頃からあいつは全く変わってない。・・・どうやら来たみたいだな。降りるぞ」
宇宙船が着陸すると、奥から金糸の刺繍が施された派手な上着を羽織る男が歩いてきた。
男は大柄というほどではないが、わざとらしく開けられたシャツの襟元から光沢のあるペンダントと一緒にしなやかで鍛えられた体つきが見て取れた。
クレイバーが率いる5人は宇宙船を降りてその男と対面する。
「久しぶりだな」
クレイバーは力強く握手を交わした。
少ない動作で男からは香水の甘い匂いが漂い、鼻の奥を刺激する。
男は笑顔を浮かべているが、その表情はどこか作り物めいており、4人にどこか胡散臭い印象を残した。
「今回は大勢を連れてきたようだな。友として君達を歓迎するよ。俺の名前はラガセー・サンラックだ。これでも警護所長の職に就いている」
ルオウがそっとクラウドにデータパットを見せた。ラガセーのプロフィール情報が記載されており、警護所長であるのは間違いなかった。
人は見かけによらない典型例だった。
「訓練も兼ねて<ジェネラル・トルーパー>からメンバーを少し連れてきた。オプレス、サクラ、クラウド、ルオウだ」
「お前が連れてきた仲間なら、優秀なんだろう――」
ラガセーは一人一人を吟味する。
そして宝を見つけたように目の色を変えるのだった。
「まじかよクレイバー・・・お前の部下に清楚でかわいい女性がいたのかよ。――どうだい、今夜は一杯一緒に過ごそうぜ」
甘い言葉を使ってラガセーは、整った顔つきを常にサクラの視線に入るように近づく。
「・・・・・・事態は良くないはずなのにそんな軽口を叩ける余裕があるんですね。まあ、それに関係なくお断りさせてもらいます」
サクラはラガセーの態度に心底不快に感じており、軽蔑する目を向ける。
「アハハ、嫌われちゃったな。――冗談はこれくらいにして本題に入ろうか。とりあえずは指令室まで付いて来てくれ」
ラガセーの背中を追いかけながら、指令室まで続く通路を歩くのだった。
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