第三話 同期
クレイバーは惑星サドニアに着くまで休むように命令して解散となった。
ジャンプトンネルを使っているので実際に休める時間は短い。それでも、これから臨むテロの対処に覚悟を決めることはできるだろう。
常に戦場に身を置いているからこそ、命のやり取りはお手の物だ。それが他者の命であっても・・・。
「さて、一休みでもしようか」
船の後方でクラウドは横たわって仮眠をとろうとする。そこから船内全体を見渡せた。
二人で話し合うクレイバーとオプレスの姿。
正座をして瞑想をするサクラの姿。
データパットを忙しく操作するルオウの姿。
各々好きなように過ごしていた。
何気ない光景だったが、胸の奥がざわついている。いつもなら気にしていなかっただろうが、クラウドは己の意志なのかもわからないまま、無意識のうちに立ち上がっていた。
また横たわるのも面倒に感じてゆっくりと歩きだす。
「動揺しているのか・・・ルオウ? 一つに集中する悪い癖が出てるぞ」
クラウドはルオウに近づいて静かに話しかけた。
「私は大丈夫なつもりです。まさかあなたが心配してくれるとは心境の変化でもあったようですね。まあ、必然とでも言いますか」
「入った経緯が異なれど、俺達は同期だからな。声くらいかけてもいいだろ」
「・・・なるほど。こう表現するが正しいかは置いといて一歩前に進めたようですね。人並みになったと言いますか・・・。そうなってくると、今は私が問題を抱えていることになりますね」
話している最中でもルオウは目を合わせることなく、その手を止めることはなかった。
端的に話しているが、内心はとても深刻そうであった。表情から読み取ることはできない。しかし、ルオウの行動が全てを物語っていた。
「それは惑星サドニアの環境的な問題か?」
「そうですね。あなたの言う通りで環境は私にとって地獄のような場所です。正直このヘルメットなしでは活動は厳しかったでしょう。日中の気温は50℃を超えることもあり、湿度は10%しかありません。それでもテロの対処は問題とは考えていません。クレイバー隊長がいるだけで解決すると思っていますし、一人で戦うわけではないですから」
「それでも兵士としての覚悟ができるようだな。言葉からそう伝わってくるよ」
最後の言葉に強い語気が込められていた。
ルオウは滅多に感情を出さないが、僅かな変化をクラウドは見抜く。
「どんな状況でも任務はこなします。それが私達の使命ですから。それに・・・戦場に出るたびにあなたとの実力の差が広がっているように感じてなりません。同期として負けてはいられませんし、一緒に精進しながら任務を成功させましょう」
ルオウは目を合わせてそう言うのだった。
「そうだな。その調子なら大丈夫だろう」
ルオウの心境の変化を見届け、クラウドは船の後方に戻って仮眠を取るのだった。
――数時間立ったのち、クラウドの耳に大音量で声が聞こえた。
「もうすぐで到着する。お前ら、準備を整えとけよ」
クレイバーが命令した直後、宇宙船はジャンプトンネルを通り抜ける。
惑星サドニアに到着したのだった。