プロローグ
小説を書く練習をしております。
気ままに読んでくれると嬉しいです。感想や改善点があればご指摘ください。
"過去と向き合わずして、道を切り開くことはできない"
◆◇◆◇◆◇
その子供は戦争で両親を失った戦災孤児だった。
しかし、生まれ育った環境のせいなのか、彼は物心がついた時には戦場で戦うことを望んでいた。
それは戦争を勝利に導いた英雄として凱旋されて栄誉を得たかったわけではない。徹底された規律で縛られることなく、戦場で自由に力の限り戦い、生死をかける純粋な殺し合いを楽しもうとしていた。
いつしかその夢は傭兵になることで叶うことになる。
戦火で居場所を追われて路頭でスリを働いていたら、傭兵派遣会社から派遣された傭兵に捕まった。
そしてリーダー格の男に一つの提案をされる。
「気概が会って結構だ。その力を正しく使いたいのなら、俺達と一緒に来るのはどうだ?」
彼がその提案を断る理由はなかった。二つ返事で了承して傭兵としての道を歩むことになる。
居場所を与えられ、名前のなかった彼はクラウドと名付けられた。
傭兵になって最初こそ戦場で戦うことに高揚感が高まっていたが、感情はそれだけに留まらなかった。
仲間と過ごすうちにこれまで経験することのなかった社会性や協調性が芽生えてきていたのかもしれない。人として心が成熟してきた証拠なのだろう。仲間を失うことに対する恐怖を少しずつ感じるようになってきた。
仲間の死に直面したら、その悲しみや悔しさを乗り越えることはできるのだろうか?
戦場は常に死と隣り合わせだ。
苦楽を共にした仲間は、明日にはもういないかもしれない。
◆◇◆◇◆◇
戦争を望んだ者として当然の報いなのかもしれないが、彼の心を支配しようとする恐怖は精神的な苦痛を与えてくる。これからもずっと。
考えることを止めて現実から逃げようと、全てを投げ出すように意識を手放した。
暗くて底の見えない深淵に身を委ねながら。