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藍の魔術師




「くっそー!また負けた!」

 



「騙された!」


酒場の中で、悲惨な声が聞こえる。

私は中に入るのが怖くなった。



「あの、スペード・ジョアン・アンジェリスさんはいらっしゃいますか?」

思い切って少し大きな声を出してみた。


「おや?僕に何か?」


返事をしたのは、藍色の髪を肩ほどでそろえた『妙』と言う言葉以外に合わせられる言葉が無いような格好をした男だった。


「えっと、お届け物です」

「どなたからですか?」

「アラストル・マングスタ」

「……アラストル・マングスタ……ああ、ハデスの。結構です。持ち帰ってください」

「え?あの、私は使いなので渡せとしか言われてません」

「ですから、持ち帰ってください。今、ハデスと関わっても僕に得はありませんからね」

そう言って彼は自分の髪に触れる。

「お帰りなさい。ここはあなたのような子供が来る場所じゃない」

「……これでも18なんですけど?」

「とてもそうは見えませんがね。とにかく、必要ありません」

「いえ、受け取ってください」

「持ち帰ってください」

「受け取ってください」


激しい攻防が続いた。


 



 私、個人として言うのであればスペード・ジョアン・アンジェリスと言うこの男はつかみどころの無いといった印象を受ける。

何よりも、彼は『奇妙』なのだ。


「受け取ってください」

「受け取って、僕に何の得があるんですか?」

「封筒の中身です」

「では、その中身は?」

「『情報』です」

そういうと彼は『ハハン』と言う不思議な笑い方をする。

なんとなく人を馬鹿にしているようなそんな印象を受ける笑い方だった。

「気に入りました。今日のところは受け取って差し上げましょう。ですが、アラストル・マングスタに伝えてください」

「何を?」

「『カトラスエースは今回はディアーナにつく』と」

「確かに伝言預かった」


そう、答えると鋭い視線を感じる。


スペードのものだ。



「本当に生意気な子供ですね。年長者に対する態度も知らないのですか?」

「貴方こそ。私のような『旅人』にまでそのようなことを強要するなんて、クレッシェンテ人のプライドりは無いのか?」

殺気が充満したかと思うと、スペードはどこからか黒いレンズを取り出した。

「地獄へ堕ちますか?」

「地獄…懐かしいですね。尤も、私は地獄からも追い返されますよ」


ハッタリだ。


だけども、詐欺師を騙すには時にはハッタリも必要だ。



スペードがレンズを私に向けたとき、声がした。



「そこまでだよ。スペード」


金の、王子がそこに居た。

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