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時の魔女

 そもそも私がこのクレッシェンテにたどり着いてしまったのには理由がある。

時の魔女に出会ってしまったのだ。

時の魔女に出会う前は、私は真冬の北海道で雪かきに追われながらも比較的平和に、悪く言えば退屈に生活していた。

 初めて時の魔女に出会ったのは二年前であった。

時の魔女はある女性を探しているといって、いや、女性というにはまだ幼い、少女を探していると、私の元へと現れたのだった。

彼女は決まって私の夜の瞑想の時間に訪れた。

瞑想と言っても、それほど大層なものではない。ただ、森へと、深い森へと意識を飛ばし、蛇と鹿と戯れる。それだけのものだった。

 そうして出逢った時の魔女は、私にあるものを渡した。巨大な砂時計だった。


「これは新月の砂時計クレッスィードゥラ・クレッシェンテよ。あなたにはこれから必要になるはず」

渡された砂時計はバスケットボールより少しばかり大きかった。おそらくは一時間とかそのくらいの時間を計るものなのだろう。

金属製のそれには水晶が飾られ、そして中の砂はまるでブラックシリカを砕いたように黒く煌いていた。

「これで私に何をしろと?」

「どう使うかはあなたしだい。この新月の砂時計があれば過去も未来も思うままに見られるの。勿論

パラレルワールドの全てを覗くことも可能よ?」

そう妖しく笑う時の魔女に私は背中が震えるのを感じた。

「先が見えたらつまらない」

「ええ、そうかもしれない。だけど、あなたは過去を知ることを求めている」


 心を見透かされたと思った。

確かにそれは事実であった。

私はいつだって過去の歳月を知りたいと願っていた。

だけど、本当に? という疑問があった。

時の魔女の言う通り、過去と未来の全てを見られるとしたら…

「何故これを私に?」

「あなたなら彼女に逢えるから」

それだけ言って時の魔女は消えた。


跡に残されたのは砂時計。

しんしんと降り積もる雪が肩の上で山を作っているのもどうでも良くなた。

私はただ、砂時計を抱え、自室へ戻った。


 砂時計は正直なところ、大きさ的にかなり邪魔だった。

仕方なくベッドサイドに置いたが、これが頭に降ってきたらと思うと、少なからず恐怖を感じた。


「過去と未来…一体どうやって使う?」

そういえばあの魔女は、この道具を渡すだけ渡して使い方を指示しては居なかった。


「ひっくり返す、とか?」

砂時計といえばそれしか思い浮かばない。

そう思って、私は砂時計をひっくり返した。


その瞬間、天地が逆さになるような感覚に襲われ、目の前が真っ暗になった。



次に目を覚ましたとき、私はクレッシェンテ首都、ムゲットのとあるアパートメントの一室に居たのだった。

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