告げる
「……ヴィンス、ごめん、ごめんなっ、俺…」
「…アーティ？なんで謝るの？」
「だって、ヴィンスの大切な日に……俺っ…
ヴィンス俺、今日でヴィンスへの気持ち……
す、捨てるからっ…………」
嘘だ。
そんなこと絶対にできない。したくない。
でも、上手く隠す練習をするよ。
こうやって、俺を大切にしてくれるおまえが、
幸せになるために。
「…良くない気持ちってこと？
そんなのあったの？それはつらいなぁ 」
くすくすと笑いながら
本当に哀しそうにいうヴィンスに
心が痛くなる
そう。そうなんだ。
俺のこの気持ちは、ヴィンスにとって、
このクソみたいな世界にとって、
良くない気持ち。
乙女ゲームとか製作者さんとやら
俺は今から、ストーリーとやらを
少し変えてしまうかもしれない。
だけど、謝らない。
謝りたくない。
だから許さなくていい。
「…ごめんっ、ヴィンス
捨てるから、きいてくれる？」
捨てれねーけど。
「うん、きくよ。」
あたたかいままの背中、
胸の前に組まれたヴィンスの腕を
ぎゅっと力を込めて握る
「…俺、ヴィンスのこと、
愛してるんだ。どうしようもないくらい。」
そう。
もうほんとに、惚れ込んでいるんだ。
どんな言葉でも足りないくらい。
「……え？」
そんなに驚くなんて、
案外、俺、隠すの上手いのかも
「ヴィンスとは違って、俺の好きって、
友達とか主君とか、あたりまえにこえてて…
恋人とかでも足りないくらい、
意味わかんねぇくらい好き。」
「……それを、捨てる、の？」
「…うん。
俺ちゃんと、ヴィンスとオヴェット嬢のこと、
応援するから……だから、傍にいさせて……
嫌ならっ…気持ちもちゃんと……消すからさ……」
最悪、禁忌の魔法でもつかってやらぁ
ほんっっと、消したくなんてないけどな…！
「……」
「…ヴィンス？」
ぎゅっー
俺を抱きしめる力が強くなる
「…アーティ、悪い子だね。」
「…へっ？……っ！んんんっ！！」
振り向かされ、目が合う前に、
唇を重ねられ、口の中を熱く、熱く、犯された。
「……っは、はぁっ、……っ！！」
息を整え、顔をあげると
ヴィンスが泣きそうな顔をして
とても苦しそうに、でも
とても幸せそうに、俺に告げた
「…アーティ、ぼくへの気持ち、捨てるの？
ぼく、きみのこと…
……愛しているのだけど？ 」
俺の頬を優しく包み、
ヴィンスは軽く唇を重ねた
その言葉とその行為は、
俺の心臓をぎゅっとしばりつけた
「……っ」
涙が止まらない
でも、俺の涙も
喜びの涙に、変わった
そう気づいた
「……っな、んだよ、それっ……
だって、おまっ、番……いるじゃんっ……」
「……うん、いるよ？」
……？！？！
こいつ……っ！！
「……はぁ？！んだそれ 「 アーティだよ 」
俺に被せてそう言いながら、
ぎゅっと俺を抱きしめるヴィンス
……は？
ん？え？んん？？
涙が引っ込む
「…あっと……気持ち的には……ってこと？
う、嬉しいけど、俺がいってるのは…」
「運命の番なんだよ。アーティが。
そして俺たちは、もうずっと、番だよ。」
「…………え？」
かたまる俺
のうなじに手を当てて、
なにやら魔法っぽいなにかを呟くヴィンス
触ったみて と俺の手を誘導して
にこにこしてるヴィンス
「……っ！」
みなくてもわかる
は、歯型がある。
俺のうなじに、しっかりと。
「アーティは覚えてないと思うんだけど、
俺が噛んだんだ 8歳のときに 」
へへっと笑いながら
衝撃の告白をするヴィンス
「……え？！は？！……え？！」
「ぼくとアーティが、運命の番だからかな。
まだ幼いのに2人とも発症がはやかったんだ。
でもその時、それに気づいたのはぼくだけ。
他の誰にも盗られないように、触れさせないように、フェロモンすらあげたくなくて、噛んじゃった 」
ふふっと微笑みながら伝えられたそれは
普通なら軽蔑すべきことなのだろうか
「……なにそれ、すき 」
でも俺は、ぞくぞくするほど嬉しくて興奮した
「首の跡は、魔法で隠してたよ
あとは、抑制剤も欠かさず食事に混ぜてたし。」
さらりということが、
8歳のやることじゃねぇーよ！すき！
愛を感じるじゃねぇか！
