アーティの独白 ー決意ー
ーその夜ー
別に俺たちは恋人同士ってわけではない。
それよりも濃い繋がりがあると思っている
だけど、俺はヴィンスを
恋人に向ける愛以上に愛している。
だけどそれよりも本能的な愛が
運命の番というものなのだろう。
はっ
信じられんな
俺のヴィンスへの愛より強い気持ちなんて
どこを探してもあるはずがないのに
ヴィンスは、
俺がヴィンスを想うのと同じように
あの女を想うのだろうか
「はぁーー…」
俺の検査結果は、みる前に捨てた。
悪あがきというやつだ。
この歳にもなって1度も症状が現れない Ω なんていない。
α と診断されたやつの匂いがするとかもない。
どう考えたって β 。
こんな容姿のいい β がいてたまるかよ。
こんなに中性的な 男がいてたまるかよ。
絶対に俺が Ω でヴィンスの番だ。
そう信じていた頃が懐かしい。
国に宛てがわれたヴィンスの婚約者
だからこそ気にもとめなかった
俺が番だと証明されてしまえば
すぐにその座も俺のものだ
そう信じて疑わなかったんだ
俺は、前世の頃から、
何事も冷めて受け止めて上手く生きていたはずなのに、ヴィンスと出逢い変わってしまった。
欲深く、あいつのことだけを愛し求め、
こんなにも都合の良い思考に染まっていたんだな
「…ははっ。 別にあいつは俺を求めたことなんて、
ねーのに。」
時期さえくれば、証明される
時期さえくれば、名実共にヴィンスは俺のもの
そのときに、ヴィンスに恥じない俺でいようと、
側近補佐官としての仕事を完璧にこなすことはもちろん、王太子妃教育だって、仮初と思っていたあの婚約者に手配しつつ、こっそり俺も学んだんだ
乙女ゲームのヒロインみたく、
ラッキーで収まって幸せ!なんてご都合主義に甘んじず、いざ現れた運命の番が、完璧なるパートナーって、ヴィンスの隣にいて恥じない存在でいたくて、
俺 懸命だったんだ
俺の愛とは違っても、
ヴィンスの1番が俺だって、気づいてたからだ
だから、
俺が後継を産める Ω なら、
運命の番であれば、
それ以上に優秀で立派な俺でいれたなら、
ヴィンスの俺への愛の形も、
俺に染ってくれるって、
俺 信じて疑わなかったんだ。
なぁ、ヴィンス。
今ならまだ、セーフってことにしてくれないか。
俺は狂おしいほどおまえが好きで
おまえから離れることなんて
絶対にできない
でもおまえが他の人と幸せになってることなんて
絶対にみたくないんだ。想像もしたくない。
でも、それ以上に、
俺、お前が幸せなのが1番だからさ
俺の気持ちをなんとか押し込めるってことで
本当の意味で、友達になろう。