運命の番への嫉妬
あの騒ぎのとき、
ヴィンスがヒロインをみてどんな反応するかなんて
絶対にみたくなかった
仮にヒートに当てられてでもしていたら、
俺は正気を失ってただろうし
そんな騒ぎから、1ヶ月。
「アラリック殿下ぁ!」
まじうぜぇ。
猫なで声で俺のヴィンスに近づいてくる
ヴィンスの婚約者・ベアトリス。
ヴィンスはベアトリスの抱擁を
触れられる前に華麗にかわし冷たい微笑みを向ける
「…名前で呼ぶことを許した覚えはないけど?」
アラリックとは、
ヴィンスの王太子として授かった名前。
そう、本来、こちらの名前ですら
軽々しく呼べるものではないのだ。
「まぁ!ではなぜあの元平民にはお許しになるのですか…!殿下の婚約者はこのわたくしですのよ?!」
…は?
「…きみに説明するつもりはないよ。」
……は??
「…!殿下!!
もしやあの女が Ω だからと誑かされてしまったのですか?!」
「失礼、ベアトリス・ト・ベイリ公爵令嬢。
殿下に対してそのような発言は見過ごせません。」
そう、すべての発言が見過ごせねぇんだよ
「アーティ・アーシュミィ…
私が殿下とお話してますの。ご理解頂けるかしら?」
「アラリック殿下ぁぁ!」
その声で俺たちの睨み合いが終わりを告げる
「アラリック殿下!
その、少し、お話が……」
「あぁ。構わない。
…ベイリ嬢、私の側近に少しでも無礼を働くな。
アーティ、執務室で待っていてくれ。」
そう言い残し、ヴィンスは去っていった。
ヒロインとやらと共に。
「…っあの女っ…!ルシル・オヴェット…!!」
そう呟くベイリ嬢にすら殺意がわく。
おまえが嫉妬をするな。
俺の。だ。
俺のヴィンスに嫉妬していいのは、
俺だけだ。
ヴィンス
あぁ、ヴィンス。
本当にそいつが運命の番なんだな。
おまえが俺を置いて
誰かと2人になるなんて初めてだ
例え、アラリックとはいえ
おまえが俺以外の生徒に名を許すのは初めてだ
乙女ゲーム、
プレイしとくんだった。
そしたらおまえとその女が
そこまで親しくなる前に、
いや、出逢う前に、
こんなクソみたいな筋書きなんて壊せたかもしれないのにな。