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9話

「少し早いが食事に行こう」



荷解きを終えてリビングに戻ると

ソファで寛いでいたティモシーが言った。



「もしよかったら

私が作りましょ…

作ろうかと思うんだけど?」



「リディアが?

だが 疲れているだろう?

今日はゆっくりするといい」



「さっき 冷蔵庫を見たら

材料がギッシリ詰まってた…の。


豪華な料理は作れないけど

準備するにも十分時間はあるし」



「じゃ 私も手伝おう」



「えっ

ティムは料理する人?」



「いや」



「えっ?

じゃあ なんで?」



「リディアだけにさせるのは申し訳ないから」



そう言うティモシーは

どこか照れているようだ。



「大丈夫!

おまかせください」



そう言ってティモシーを座らせると


リディアは本格的に

冷蔵庫と向き合った。



…何でも作れそうなくらいストックされてるわ…


そう思いながらメニューを考え

てきぱきと必要な材料を取り出す。



「苦手な食べ物やアレルギーは?」



ティモシーに聞くと



「いや なんでも食べられる」



と言われて



「了解で~す」



と言いながらリディアは髪を結んだ。



時間と材料はたっぷりあるし

広くてピカピカのキッチンに気分が上がったので

リディアは料理に没頭した。


そんなリディアを

やさしい碧色の瞳が見つめているのに

本人は気づいていない。



「ワインは飲めるだろう?」



と聞かれて

リディアはようやくティモシーを見た。



「はい

私もお酒に合うようなものを出すつもりなの」



キッチンの横にある

小さめのワインセラーから

ティモシーが白ワインを取り出した。


ダイニングの真ん中に

ふたりでは大きいくらいの木製のテーブルが置かれ

真ん中に小さな花が生けられた花瓶がある。


いつの間にか

ワイングラスとカトラリーが

2人分用意されていた。


そろそろ料理もすべて出来上がる頃で


すでに盛り付けられているお皿を両手に持ってテーブルに近付くと


きれいに並べられた食器があり

リディアは笑顔でティモシーを見た。



「やさしい旦那様ですねぇ

何か欠点はないのかしら ふふふっ」



お皿をテーブルに置きながら

独り言のようにリディアが呟いた。


ワインの蓋を開けながら

ティモシーは微笑む。



「これから一緒に暮らす中で

お互いに初めて見る姿もあるだろう

もしも不快に思ったり

腹が立ったりするようなことがあったら

我慢せずに話し合おう」



「はい

改めてよろしくお願いします」



リディアがすべてのお皿を運び終えると



「さぁ いただこう」



ふたりは向かい合わせに座ると

ワイングラスを持ち上げて口に含んだ。


ティモシーがマリネを食べて

ワインを再び飲む。



「うん うまい!」



「よかったぁ」



他にも

カナッペやアンチョビパスタ

色とりどりの野菜を使ったサラダ

チキンソテー

冷蔵庫には

カットフルーツが用意されている。



「料理上手なんだな」



「慣れているだけで」



「手料理なんて何年ぶりだろう」 



「そうなの?」



…そうか

ティモシーとお付き合いするような方は

自分で料理をする必要のない

お嬢様なのね…


リディアは

ズキンと胸が痛むのを感じた。


…なんだろう なぜ胸が痛むの…



その後もふたりは

料理とワインを楽しみ


フルーツを食べながら

翌日からのことを話した。



「明日から私は

こちらのオフィスに行くことになる

リディアにはここで講義の準備をしてもらいたい


と言っても

2週間後くらいからで構わないから

焦らず準備をしてほしい」



「わかりました」



少し緊張気味に返事をすると



「今まで私が見ていたリディアは

いつも今みたいな表情だった

でもここ数日

かわいい笑顔が見られて嬉しかった」



突然のティモシーの言葉に



「そんな…」



と頬を赤らめて俯いた。



「その笑顔に癒される」



リディアが顔を上げると

柔らかな笑顔を浮かべるティモシーに見つめられていた。



…私だって

あなたのその素敵な笑顔は

今まで見たことないわ…



リディアは心の中で呟いた。

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