5話
広くて明るい店内。
白を基調としたテーブルや椅子が
よく磨かれた床に
規則的に配置されている。
向い合わせで座り
ティモシーが注文をすませると
少し緊張気味にリディアが
「よく来るお店ですか?」
と聞いた。
「ルークと何度か
ランチは仕事になることもあるから
ゆっくり食べられる日はそう多くはないが」
「そうなのですね…」
「君は?
ランチは施設で?」
「はい
外食する機会はあまりありません
子供たちが下校してくる前に
私たちスタッフは
短時間でサッとすませることがほとんどです」
「君も料理を?」
「はい
朝と夜は調理師が作りますが
子供たちがいない昼は
スタッフだけなので交替で作ります
洒落た料理は作れませんが
家庭料理なら馴れているので
短時間で簡単に作ります」
そんな話をしていると
料理が運ばれてきた。
前菜やサラダ
メインの肉料理が
それぞれ大皿に2人分ずつのせられている。
取り皿が何枚か置かれ
各自で取り分けるようだ。
「お取りします」
リディアがティモシーに言うと
「私がやろう
とりあえず すべて取り分ける」
そう言って
ティモシーが慣れた手付きで取り皿に料理をよそう。
「じゃ いただこう」
「はい
ありがとうございます」
手際の良さに驚きながら
リディアは早速料理を口に運ぶ。
「とてもおいしいです
フレンチのようですが
エスニックな香りもします」
顔を綻ばせて
リディアがティモシーに言うと
「口に合ってよかった
このあとの デザートもオススメだから」
ティモシーが取り分けてくれた料理を食べ終えると
デザートとコーヒーが運ばれてきた。
大きめの白いお皿に
アイスクリームとプチケーキ
カットされたフルーツがそれを取り囲むように並べられ
赤いソースが曲線を描いている。
「わぁ 素敵
食べるのがもったいないわぁ」
リディアは
笑顔でティモシーを見た。
「甘いものは好きかい?」
「はい 大好きです
内緒ですが
子供たちが学校に行っている時間に
こっそりおやつを食べてます」
笑顔でデザートを食べていると
ティモシーの視線に気付いた。
「あの…なにか?」
「いや
そんな甘い顔を初めて見た
いつも 施設で話すときは
あまり表情を崩さないから」
「すみません
ロズウェル様にいらしていただくときは
粗相のないよう緊張しているので…」
「謝らなくていい
君の仕事ぶりや施設長を補佐している姿は
高く評価している」
「ありがとうございます
そんな風にお褒めいただいて嬉しいです」
「そこで
ここからが本題なのだが…」
コーヒーを飲みながら
ティモシーがリディアを直視した。