4話
翌日
いつものように
賑やかな朝の時間が過ぎ
それぞれのスタッフの仕事が一段落した頃
ルイーズがリディアに声をかける。
「リディア
そろそろ支度を始めたら?
お待たせしないように早めに準備しないと」
そう言われて
リディアは自室で支度を始めた。
いつも
綿シャツにパンツという
機能的な服装で過ごしているため
こんなときに着ていかれるような
おしゃれな服はあまり持っていない。
「昨日の今日で
新しい服なんて買えなかったものね…」
呟きながら
クローゼットを物色する。
「あっ これならいいかな」
施設を卒業した子が
勤務先のレストランに招待してくれたときに
着ていったワンピースを取り出した。
白地に淡い色の小さな花柄がプリントされた
ロング丈のもので
いつものパンツスタイルとは
ずいぶん違う印象を受ける。
ルイーズに念を押され
朝のナチュラルメイクもきちんとやり直し
金色の髪も整えた。
…そういえば
昨日渡そうと思ったのに忘れてた…
ティモシーへの誕生日プレゼントにと用意していた
ネクタイの包みを手にとって自室を出た。
「ルイーズ先生
こんな感じていかがでしょう」
自室を出たリディアは
キッチンで寛いでいたルイーズに声をかける。
「とてもキレイよ リディア
いつものあなたと違うから
ロズウェル様も驚くわよ きっと
ふふふ」
「そんな…
でも ルイーズ先生に褒めていただいて
少しだけ自信が持てました」
「リディア
もっと自信をもっていいのよ
あなた とてもキレイなんだから」
「ありがとうございます
身内の贔屓目かもしれませんけど
今日は素直に…」
「お話し中 失礼します
リディア
ロズウェル様がいらしたわ」
スタッフが呼びにきてくれたので
「では いってきます」
ルイーズに告げて
リディアはキッチンから玄関に向かった。
玄関前に停まっている車の
すぐ近くに立っていたティモシーが
近づいてくるリディアを見て
表情を柔らかくした。
「こんにちは
今日はよろしくお願いします」
少し緊張気味で
リディアがティモシーに声をかけた。
「突然の誘いに
都合をつけてくれてありがとう
乗って」
助手席のドアを開けると
リディアがシートに身を沈めるのを
優しい眼差しで見守る。
運転席にティモシーが座ると
「今日はロズウェル様が運転されるのですか?」
リディアがティモシーの横顔に声をかけた。
すると
エンジンをかけながら
「デートだから
ふたりで話したいこともあるし」
リディアを見つめながら
ティモシーが答える。
その答えに
リディアの心臓がさらに早くなった。
「ランチは何かリクエストはあるか?
何でも構わないが」
「いえ おまかせします」
「わかった
じゃ 雰囲気のいい店に行こう」
「はい」
そうして
ティモシーが運動する車は
白い壁と赤い屋根が印象的な
素敵なレストランに着いた。
リディアがドアを開けて降りると
運転席側からまわってきたティモシーが
「ドアは私が開けよう
それくらいのマナーはあるつもりだ」
「あっ
ありがとうございます」
大企業の代表であるティモシーに
ドアを開けさせるなんてと
自ら降りたリディア。
そんな様子に気付いたティモシーは
「何度も言うが
デートなんだから」
ティモシーから
そんな言葉をかけられ
恥ずかしい反面
肩の力がスッと抜けたリディアだった。