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儀式で与えられたスキルが変身ヒロインだった少年の話

作者: 斎藤

 俺の国では13~15歳になると、神託の儀式を受ける、その位の年齢になると腕に特徴的な痣が出来るのでそれで判断する


 儀式では各々にスキルと呼ばれる特殊能力が付与される。というかスキルが与えれる年齢になりましたよと伝える為の印が痣なんだ



 スキルの内容如何で今後の人生方針が決まる、例えば筋肉もりもりでゴツい指の大男でも米に彫刻を掘るスキルが付与されたら彫刻師として生きていく事なる


 流石にそこまで限定的なスキルは与えられない筈だけど


 父さんは鑑定士のスキルが与えられた、今では贋作を見抜く達人として貴族からも重宝されている。母さんもも鑑定士で日夜ひよこの選別に精を出している。王都のお土産と思われていたひよこ型の菓子が実は西の地方が発祥の菓子だったというのを見抜いたのも母さんだった


 俺も13歳の誕生日を迎えた瞬間に腕に痣が出来たので成人の義に参加している。スキルが与えられるのが楽しみだ。神託を受ける列に並んでいると頭を叩かれた、振り返ると長身の少年がいる。俺の友達のハーマンだ


「アルはさあ、何のスキルが良いよ?」


 ハーマンは暇そうにそう言った。列は遅々として進まないので俺も暇だ


「んー…やっぱり鑑定士かなあ。父さんも母さんも鑑定士だし」


 割と真面目に鑑定士が良いけど、ハーマンは俺を見下ろして本当か~と問うてくる。何が言いたいのかと思ってると…奴は俺の頭をポンポン叩きながら


「身長を伸ばすスキルが良いんじゃ無いか? それとも俺が身長を分けるスキルを手に入れた方が良いかな?」


 そう言いやがった。確かに俺は背が低く逆にハーマンは背が高い。頭1つ分以上の差がある


「余計なお世話だ!」


 そう言って俺はハーマンを脛を軽く蹴る、全く……身長を伸ばせるスキルなんて……欲しいか欲しくないかで言えば……凄く欲しい

 




 


 スキルを貰った奴が当たり外れで阿鼻叫喚の大騒ぎをしているせいで中々列が進まない。と、知り合いのフルロドが喜色満面で駆け寄ってきた、相当良いスキルを渡されたらしい


「俺は透明化だぜ! これで女どもの裸見放題! うっひゃひゃっ! 」

 

 ……最低だ…近付くな、同類と思われたくない、だけど俺の思いとは無関係にフルロドは俺達の前で足を止めた、そして俺を見下ろしてニヤあと笑いを浮かべる


「アルちゃんは何かなあ? 楽しみだなあ」



「アルちゃんって言うな!」


 フルロドは事ある毎に俺を女の子扱いして揶揄っている、いい加減にしろと睨むが良スキルを得て有頂天になっているフルロドはじゃあなーと足取り軽く帰って行った


 ちなみに直ぐにフルロドは捕まった。透明化する為に外で脱いだのだが、透明化するにはそれなりの時間が必要だったので。見回りの兵士に見つかり投獄された、露出狂が一人増えたが被害者は居ない。良かった、牢獄ではスキルが使えないらしく透明化も役に立たない。ざまーみろ



 俺の前で当たりを得た奴の2度目のスキル神託が終わり、ようやく俺の番だ、鑑定士か…それとも何か他の


 神託を授ける神父様が俺に聖水が充満した桶を見下ろすように言う。水面にスキル名が浮かぶ、俺が水面を見ると

 

 『変身ヒロイン』『はずれ』とあった。ちぇっ、はずれか


 しかし……なんだこれ?


 変身…は分かる。姿を変える事。ヒロインって……? 謎のスキルに神父も困惑しているのかフームと唸り、俺の顔をじっと見据えて口を開く

 

 

「神がお与えになったスキルです。今は使い道が分からなくともこの先、貴方の人生の指針となるはず。頑張ってください」


 確かに、何か発動条件があるかも知れない。神父に礼を言って、俺は列を離れた



 

 数日後、俺とハーマンは街の直ぐ近くにある森に出掛けていた、小遣い稼ぎの薬草摘みだ。スキルの謎は尽きないけど考えても仕方ないから棚上げにしている


 ハーマンのスキルは古式マッサージと古式武術だった、既に何人もの人間を治癒させているとか、奴の家からは悲鳴が引っ切り無しに聞こえてくる……とんでもねえ奴だ


 夢中で薬草を摘んでると、気味の悪い音が森の中に響いた。ハーマンが俺の手を引く


「何か変だし、帰ろうぜ」


 俺も頷き2人で帰路につく、が、そんな俺達の目の前に巨大な影が降ってきた……人間のように見える……いや…頭が骨……禍々しいモヤを纏う骸骨頭の化け物だ! 化け物は背中から落ちて立ち上がろうと藻掻いている


「ぎゃあああああ!」


「うわあああああ!」


 俺とハーマンは脱兎の如く逃げ出した!


 骸骨頭の化け物を背に過去イチって位に全力で走る!


 隣を走るハーマンが声を上げた


「なんだアイツ! あんなのこの森に居たか!?」


「知るか! 兎に角逃げなきゃ!」


 そう叫んで、ハーマンの方を見ると


 頭蓋頭が俺達と併走していた


 しかもめっちゃ良い姿勢で走ってる。速い、直ぐに髑髏頭は俺達を追い抜き前に出た! そして振り返る! 後ろ走りだ、一定の距離を保って走り続けている!


「いやああああっ! なんで追い掛けて来るんだよおおおっ、てか、追い抜くならそのままどっかいけよよおおっ! 後ろ走りで俺ら見ながら走るんじゃねえよおおおお! 」


 俺は思わず情けない叫びを上げる。と、ハーマンが骸骨男に飛び膝蹴りをぶちかました、もう一つのスキル、古式武術を使ったのか!


 骸骨男も攻撃されるとは思わなかったのかマトモに膝蹴りを食らって倒れた! しかし、直ぐに立ち上がる、中々頑丈だ。ハーマンと骸骨男は互いに構えを取って向かい合う。ハーマンは低く構え、骸骨男は両手を顔の前に構え、小刻みに跳んでいる


 骸骨男がハーマンに接近する、仕掛ける気だ!


「でいっ!」


 ハーマンは強烈な前蹴りを骸骨男の腹に見舞い出鼻を挫いた!


「ええいっ!」


 体勢を崩した骸骨男に向かいハーマンは飛び、脳天へと肘を叩き込む! そのまま顔に向け、左右の肘を何発も入れる、いけー! そんな頭粉砕しろー!


 溜まらずに距離を取る骸骨男の脇腹にハーマンの回し蹴りが食い込む!


 たたらを踏む骸骨男。奴は苦し紛れに真っ直ぐに拳を放つがハーマンは左肘の丸みを利用して受け流し体を回転させて骸骨男の後頭部へと右の肘鉄を入れた!


 勝てる! 勝てるよこれ!


 だが、骸骨男はフラつきながらも体勢を立て直して、全身から黒い光を放った! 光は物理的な力を持ち、ハーマンを吹っ飛ばしてしまう


 「ハァァァマァァァンッッ!」


 俺は名前を叫びながらハーマンへ駆け寄る。息はしているが意識はない! ちくしょう! 格闘で勝てないからって!


 骸骨男は俺達に躙り寄る、くっ、俺はハーマンを背に奴と対峙する、勝ち目は無いけどハーマンを見捨てるわけにはいかない


 骸骨男が再び光を放った


「うわああっ!」

 

 光が発せられた時、周囲が止まった


 俺の脳内に声が響く


『スキル、変身ヒロインを使用しますか?』


 使う使う! 何でも良いからこの状況を何とか出来るなら使いますっ!


『認証しました。スキルアクティべージョン、フィールド展開、変身シークエンスを開始します』


 脳内の誰かの声が何やら言うと、俺の体が浮き上がり周囲が夜のような空間になる。上も下も星空のようだ、何処だここ!?


 俺の周りには腕に抱える位の大きさの球体が幾つも浮遊している、その球体から赤い光の線が俺に向かって放たれた


「ひぃっ!」

 

 思わず目を閉じるが痛みはない、なんだ…攻撃じゃないのか…と、光を浴びたからなのか…体がむず痒くなる


「な、何が起こって…」


『肉体構造の最適化完了、ユニフォームを生成します』


 俺の困惑を余所に声は淡々と進行する


『変身シークエンス完了、戦闘モードアクティブ……ご武運を』


 夜空のような空間が消滅し、俺は骸骨男の前に立っていた。エラく時間が掛かったように思えるけど、骸骨男は光を放った時の格好のままだ


「な、何が…」


 意味が分からず呆然と呟いた…ん? 声が変…それにスースーする


 胸もなんだか重いような……


「ええ……」


 骸骨男も俺を見てるが明らかに向こうも狼狽えてる……というか喋られるのかよお前…けど、何か嬉しそうだ…俺に向かって拳を突き出し親指を立てた。そして付いてこいと手招きをする


 攻撃の意思は感じない、俺も大人しく後に続く。直ぐに泉についた。奴は泉を覗くような仕草をしている


 恐る恐る覗き込むと


 美少女が見つめ返していた。青空に映える金髪、蒼い瞳、真っ白な肌の美少女が俺を見返している……てか俺だ……


「ええええええっ! 変身ってこれえええ!?」


 慌てて見下ろすが足元が見えない……おっぱ……しかも肩も出てるし生足剥き出しの姿だ…装飾も過多でどっかの姫の衣装にも思える


 肩を叩かれる、振り変えると骸骨男が後ろにいた


「ガアアアッ!」


 奴は俺に掴みかかってきた。ちくしょう! こんな変な格好で死んでたまるか!


「もう、どうにてもなれえええ!」


 思いっきり骸骨男を殴る…と、エラい遠くまで飛んでいく。はええ、凄え力だ。それっきり骸骨男は姿を現さなかった。ハーマンの元に駆け寄って様子を見る、怪我は無い……良かったー


 揺さぶっても起きない。仕方ない、担ぐか


「よっと…軽っ!」


 それなりに良い体格をしているはずのハーマンがまるで綿のように感じる、変身ヒロインって凄いんだなあ


 目を覚まさないハーマンを街の近くまで運んで行く、この姿で街には入れない、どうやって元に戻るんだと試行錯誤している内にハーマンがうめき声を上げる。ヤバい目を覚ます!?


「う…」


 慌てる俺の脳内に再び声が響く


『状況終了を確認。スキルを停止します』


 おお、戻った! と、ハーマンと目が合った


 「お、女の子が……アルにっ!? お前ええっ!! え、マジで?? ええー!」


 見られたあっ!



「いやー。あれがお前のスキルねえ、ビックリしたけど助けてくれてありがとな」


 帰りの道すがらハーマンに骸骨男との顛末を話す、結局骸骨男は何だったんだろう?


「しっかし、結構可愛かったなあ」


「辞めろ、男から可愛いなんて言われても気持ち悪いだけだよ……」


 ハーマンはそりゃそうかと高らかに笑った



 街に戻ると買い物中の神父様と出会った。なんか足を引きずっていて調子が悪そうだ、どうしたんだろう。俺は彼に駆け寄ってスキルが発動した事を伝える、神父様は嬉しそうに笑みを浮かべ俺の頭に手を置いた


「良かった。これからはその力。世の為にお使いなさい、それとどのようなスキルか確認したいので、時間があるときで良いので教会へ顔を出してください」


 神父様はそう言って足を引きずりながら歩いて行った


 

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