前半 オーバーツーリズムは観光地にとって死活問題
筆者:
本日は当エッセイをご覧いただき誠にありがとうございます。
今回はオーバーツーリズム対策を中心に姫路市が姫路城で行おうとしていることについて語っていこうと思います。
全く関係ないですが姫路城に行ったときに「ゆるキャラ」の「しろまるひめ」が出てくるタイミングだったので待ち時間ゼロで写真を撮れた時は嬉しかったですねぇ……。
◇簡単に言えば「観光地キャパオーバー」
質問者:
そうですか。(ポケモンもそうだけど意外と可愛いキャラクター好きだよなこの人)
ところでオーバーツーリズムってどういう事なんですか?
筆者:
オーバーツーリズムとは、「Over(許容範囲を超えた)」と「Tourism(観光)」を組み合わせた造語。観光客の大幅な増加によって観光地が過度に混雑し、地域住民の生活や自然環境に悪影響を及ぼす状態のことであり、世界各地の観光地で問題視されています。
交通渋滞、トイレ不足、ごみの不法投棄、騒音、無断駐車などの問題が起きています。
2019年の訪日外国人旅行者数は約3188万人にも上り、これは2012年比で3.8倍、2023年はコロナ対策も全面解除されたことから2506万人。
23年の1人あたり消費単価が新型コロナウイルス流行前の19年比で31%増えたことが24年の観光白書で分かっています。
24年は更に過去最高の3310万人となることが予測されていますが、
その“代償“を観光地が支払っているという事です。
質問者:
インバウンドの「闇の部分」と言う感じですか……。
筆者:
京都府では観光に従事する方が京都府民の20%以上を占めており、欠かせない産業である一方、二条城周辺などの市中心部では、観光客による混雑やごみのポイ捨て、民泊の増加による騒音、急激な地価高騰が住民内でも問題視されています。
富士山でもゴミの不法投棄、宿を取らずに1日で登って下山しようとしたところ人が多すぎて野外泊するなどと言った人が出現することや“富士ローソン撮影スポット“が人が殺到するために黒幕で目隠しするなど様々な問題が生じています。
インバウンド需要はGDPの1%にも満たない2023年では4兆9,580億円です。
この程度の数字のために日本の文化や地域環境が破壊、地価の高騰など地域住民の被害があってはとてもたまらないというのが正直なところです。
質問者:
なるほど、これは早急に対策が必要ですね……。
筆者:
一部の有名観光地ではこれ以上観光客が増えることは簡単に言ってしまえば「もはや限界」とも言える状況だと思います。
◇姫路市の案は市としては◎の対策法
質問者:
そんな中で姫路市の「外国人が日本人の4倍支払う」と言うのもオーバーツーリズム対策ということなのでしょうか?
筆者:
そうですね。姫路城は入場者の3分の1が外国人観光客となっていまして、これ以上の受け入れは困難みたいなんですね。
あまりにも受け入れすぎますと城の維持・改修費用がかかりすぎると言ったこともあります。
姫路市の清元秀泰市長は17日の国際会議にて、
「値上げしようかと思っている。外国の人は30ドルくらい払ってもらい、市民は5ドルくらいにしたい」
外国人観光客に限って、現在約7ドル(約1100円)の入場料を、30ドル(約4700円)ほどにしたい、と発言していることから実はタイトルとは違って日本人の6倍にするといった話のようです。
質問者:
二重表記による価格設定は問題にはならないんでしょうか?
外国人かどうかって、「子供料金」みたいに見た目で判断するんですか?
筆者:
どちらかというと「日本人であることの証明」になる可能性が高いと思います。
「通常価格は4500円、日本人は割引価格で700円」とかそういうことになることが予測されます。
日本人は運転免許証、保険証、マイナンバーカードなどで日本人を証明することになるだろうと予測します。
高い方が証明するという事は相手が“しらばっくれる”可能性が出てきますからね。
(中国人や韓国人の方を見た目で判別することはかなり難しいですし)
質問者:
なるほど、証明できなければ日本人の方も正規料金を払うというのでしたらまだ納得と言うところですね。
世界では二重価格の制度はあるのでしょうか?
筆者:
フランスのルーブル美術館は、EU諸国の若者は無料、一般価格は約3700円。
エジプトのピラミッドは、エジプト・アラブ諸国 約200円、その他の国の人約1800円となっているようです。
世界では二重価格は普通となっています。
姫路城も価格差分は姫路城の維持費に充てるという事なので来てくださる外国人の方も納得しやすいのではないかと僕は考えています。
◇国の現在の対策
質問者:
でも、こういう対策って地方だけでは限界があると思うんですけど、
国はどういったオーバーツーリズムの対策を考えているのでしょうか?
筆者:
国土交通省、観光庁の 24年3月22日が最終更新の
『オーバーツーリズムの未然防止・抑制に向けた取組』からまとめますと、
1-1受け入れ環境の整備・増強
乗り換えを増やすことの要請、輸送力増強、受け入れ環境の充実
1―2需要の適切な管理
入域規制やガイド同伴の義務化、混雑運賃設定を可能にする
1-3需要の分散・平準化
混雑状況の可視化、・文化財や美術館・博物館等を早朝・夜間に体験する特別プログラムの実施
1-4マナー違反行為の防止・抑制
統一ピクトグラムを策定、世界的な旅行ガイド本への掲載等を通じ周知、私有地や文化財等への防犯カメラ等の設置支援
2 地方への誘客の推進観光地の魅力上昇、空港業務人材の確保や施設整備等への支援
3 地域住民と協働した観光振興
住民を含めた地域の関係者による協議に基づく計画策定・取組実施への包括的な支援を全国約20地域で実施し先駆モデルを創出。他地域にも横展開
とあります。
具体的なプランを出してはいるのですが、その内容は「民間にほとんど全部丸投げ」と言う印象を受けます。
質問者:
「混雑運賃設定を可能にする」についてはどうなんでしょうか?
筆者:
これは一見に良さそうに見えるのですが、二重価格設定でない限り一般に暮らしている人も混雑時に通常時よりも高い価格を支払う必要があるので非常に危険です。
この中で国ならではの有効な施策としては「統一ピクトグラムを策定、世界的な旅行ガイド本への掲載等を通じ周知」ぐらいだと思います。
質問者:
現状では、地方自治体が価格設定を日本人と外国人との間で各々差をつけて対策をしていくしかないという事なんですね……。
筆者:
この二重価格について外国人差別ではないか? と言うご意見もあるかもしれないのですが、
そもそも日本に来ている段階で円安の恩恵を多分に受けているわけで4倍以上の価格設定でも「安い」と思える方と言うのは普通にいらっしゃると思うのです。
需要と供給のマッチでもって価格が決まるのが本当の市場経済ですので、
「払える人が払う」と言うのは間違っていない考えだと思います。
そして日本人観光客だけの場合ではオーバーツーリズムの問題はほとんど生じなかったことから、過剰な観光客の流入防ぐ・対策費用捻出のためにも有名な観光スポットであればあるほど必要な措置であると僕は考えます。
質問者:
中々日本人と同じモラルの醸成と言うのは難しいかもしれないですからやむを得ないという事なんですね……。
筆者:
難しい判断ですし、本当はやりたくはない施策ではあると思うのですが現状の問題点を解決する有効な手立ての一つだと考えます。
これで「しろまるひめ」が安心して暮らしてくれればと思います。
質問者:
(ズルッ!) そっちですか!?
筆者:
丸々してて可愛いじゃないですか~!
僕なら二重価格があるなら10倍ぐらいまでなら写真撮影料支払えますよ!
後半では国が本来やるべきオーバーツーリズムの対策について語っていきたいと思います。
コメント欄にてオーバーツーリズムは大規模災害が起きた際に非常食や避難所などの施設が外国人用が無いために非常に困ったことになるのではないか? と言うご指摘がありました。
災害規模が大きければ大きいほど海外の方が出国までの日数がかかることから、
やはり今の状況は「限界」に近い状況だと考えます。