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英雄物語2〜嘘つきナイトと姫君〜  作者: 射和まゆか
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第十章 成せば成る!

「なんとか、希望が見えましたね。」


会議が終了し、セナはケントに微笑んで言った。ケントも小さくうなずく。


コダの報告後、緊急会議がもたれた。現状報告の中でケントを打ちのめしたのは、ニトラのタクへの敵対心、それによって引き起こされた最悪の結果だった。


会議の途中、ルルからコダへの通信があり、タクの生存が確認され、ニトラも調査団に引き受けられただろうと言うことだった。


「セナ、本当にすまない………。」


「いえ、とんでもない。」


セナは、ニトラのことはよく知らない。でも、ケントの家の者を悪く言うことは、したくない。


「何でも器用にやる子なんだ。自分から行きたいって、熱意があったので行かせたのだが………。」


「ケントさんは、ニトラさんの前で、タクの話しはしましたか?」


コダが、話しに加わった。


「ああ、先日の剣術大会、タクは立派だなという話しはしたよ。」


「それですね。」


「………?」


「嫉妬、です。」


「ああ、そうか………。」


ご当主様はいろいろ大変だけど、そういう所も見抜いて、しっかりなさってくださいねと、コダにチクリとやられた。


「でも、私も人の事ばかり、言えないんですよ。ルルに料理なんて………、求められると思ってなかったから………。」


「えっ?何か問題あるのか?」


セナは、ルルのことなら良くわかる。明るく気の付く、有能な魔法使いだ。


「何かって、そりゃ、あの子の料理ですよ。ルルの料理は凄いから。」


「凄く旨い、ではないのか?」


コダは、ふるふると首を振った。


「上等の肉をゴムのようにしたり、チーズを石のようにしたりする、凄い、です。」


「は??」


コダは、人間誰でも得手不得手があると、あまり気にしてなかったので、最近では一切させてなかった。


それが、こんなことになろうとは。まずい料理で、魔物を激怒させはしないか………。


「まあ、タクもついてるし。………任せるしか、ないじゃないか。」


そうだ、任せるしかない。


 



タクも、ルルの凄さにすぐ気づいた。


タクの周りにいる女性は、母キナを筆頭に、料理上手な人が多い。セナの妻であるマリカは、使用人が作る食事を喜んでいただくが、子どもたちのおやつはよく手作りしていて、パイやケーキは絶品だ。ミリヤやリリヤも、母に教わって上手に作れる。


ルルは料理が出来ると、勝手に決めつけて、申し訳なかった。しかし、これ程とは………。


雑なのではない。一生懸命やっている。しかしできるものはすべて、固くて苦い、食べれるものでない。


「あれー?おっかしいなー?」


幸い、材料となるカムリファスの実はたくさんある。だけど、無限にはない。タウロタに十分食べさせたら、薬とするため町に持って帰りたいのだ。


しかし、何か幸いするかわからない。ルルの様子を見かねて、キリルが手伝いだした。父と二人で生きていたキリルは、料理もそこそこ出来た。加えて、ルルの持ち込んだ鍋や包丁といった道具に、カムリファスが興味を持った。


気づけば、ルルは指示するのみ、キリルとカムリファスが楽しそうに料理をしだし、これで次々、旨いものを作れるようになっていった。


「ねえ、タク。これ食べて。」


ホカホカと、湯気の出てる煮物。一口食べると。


「………う、旨い!」


それは、衝撃的に味だった。ルルのアイデアで、シリル・ガリルドの特産品、トル酒をふんだんに使って煮物にしたという。カムリファスの実の、苦さとニオイが消されて、まろやかな煮物になっている。


「これで、行けるんじゃない?」


「うん、これなら大丈夫。」


「でしょ!すごいね、成せば成るってね。」


(いや、あなたがしたんじゃないでしょう………。)


こうして、美味しい料理は出来上がった。


後は、如何にして、タウロタに食べさせるかである。

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