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前世の記憶をましろで染めて  作者: ブロンズ
第一章:俺と彼女のこれまで
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第三話:もしかして君も転生者?

「刀夜君、一緒に帰ろう?」

「うん。準備できてるから行こうか」

「じゃーねー、刀夜君」

「またなー」

「ああ、また明日」


 クラスメイト達に挨拶をして真白と共に教室を後にする。


 小学校に入学してからはクラスも違うため学校での交流は減ったが、それでも行きと帰りは真白と一緒に帰ることにしているのは真白の両親からのお願いもあってのことだ。


 はじめは一年生の最初の内だけかとも思ったが、二年生に上がってからもそれは継続している。

 いつもの通り下駄箱側に近い俺の教室に真白が迎えに来て、そのまま靴を変えて並んで帰路に就く。


「今日はどうだった? 図画工作とかあったと思うけど」

「うーん、牛乳のパックでいろいろ作ったんだけど、男の子たちみたいにうまく作れないの」

「そういうのは男子の得意分野かもね。でも、花とか作るのは結構簡単なものだよ?」


 今では前世の小学校で何をやったかなどほとんど覚えていないが、廊下によく立たされたことだけは鮮明に覚えている。


 あれって、今の小学校でやったらPTAとかがうるさいだろうなぁ。


「刀夜君は昨日だったんだよね? 図工の時間は何をやってたの?」

「ボールとかサイコロを沢山作ってみんなに配りまくったね。というか、作った先からみんなに持っていかれちゃったんだけど」


 小学生は遠慮がない。

 まあ、量産した俺も俺だが、今頃学校は紙パック製の遊び道具であふれていることだろう。

 

 ―――体育会系の先生方が摘発のためにアップを始めなければいいのだが。

 


「で、家に帰ったらどうしようか」

「今日も一緒にお勉強する? 社会のところで分からないところがあるの」

「じゃあ、そうしようか。いつも通り真白の家で良い?」

「うん!」


 幼稚園の頃俺が言った通り、小学校では真白は人気者になった。

 現在は殆どクラスの中心にいるらしく、俺も安心できる。


 それもこれも児童たちが彼女の優しさといった魅力に気付いてきた証拠だな。

 

 学校で一緒に居ることは少なくなったものの、家が隣同士なので互いの家を行き来することは頻繁にある。

 特別な日とかは互いの家族でホームパーティーとかやっているし。


 というか、うちの両親と真白の両親は本当に気が合うらしいのだ。

 よく子供たちを差し置いて交流を行っているし。




「あら、真白と刀夜君。お帰りなさい」

「ただいま、お母さん」

「こんにちはティネラさん。お買い物ですか?」


マンションへと戻ってくるとティネラさんが出かけるところだった。

 買い物かごを下げている姿は主婦そのものだが、どうにもお忍びのモデルさんに見えてならない。


 いや、忍べてないが。


「ええ。調味料がいくつか切れてたからついでに食材を買いに行こうと思っていたのだけど、恵那を一人にするもの心配だったから助かるわ。これから一緒にお勉強?」

「うん。刀夜君に教えてもらうの」

「ほとんど教えるとことなんてないくらいに真白の成績はいいですけどね」

「いつもありがとうね。刀夜君のおかげよ?」


 いや、決してそんなことないです。


 正直教えられるようなことなんてほとんどない。 

 まだまだ小学生とはいえ、計算問題は完璧なので、教えられるものと言ったら暗記科目の問題くらいなものだ。


「じゃあ、行ってくるわね。真白、一応恵那の事も見ていてね?」

「うん。行ってらっしゃい」

「またあとで会いましょう」


 真白と共にティネラさんを見送ってドア閉じる。


 マンションであるため間取りはほぼ同じなのだが、こちらは女性が多いので生活空間もそれに合ったものだ。

 前に誠さんが男一人で肩身が狭いと愚痴をこぼしていたが、小学二年生に聞かせるようなことではないだろう。


「ただいまー恵那」

「お姉ちゃんお帰りなさ―――あ! とうやお兄ちゃん!」

「こんにちは。元気そうだね恵那ちゃん」

「うん! 一緒に遊ぼ!」

「残念! 只今から勉強の時間なのです」

「えー」

「こら恵那、刀夜君を困らせないの」

「大丈夫大丈夫、勉強しながらでも相手は出来るし」

「やったー!」


 うんうん、子供は元気なのが一番だよ。

 片手間で相手をするのはかわいそうだとも思うが、しょうがないだろう。


 恵那ちゃんに手を引かれるままにリビングの席に座り、勉強道具を広げながら姉妹と話をする。

 全国一千万のロリコンの皆さんが発狂しそうな光景であるが、今の俺にとっては日常風景の一つなので感動とかは無い。


 というか、俺はロリコンではないので事案に発展するはずはないのだ。


「とうやお兄ちゃん、膝の上に乗ってもいい?」

「だめ! 刀夜君は私と勉強中だから」

「お姉ちゃんには聞いてないもん」

「そうだね。流石にそれは事案になりそうだから遠慮しておくよ」

「「じあん?」」


 子どもは知らなくていい言葉だよ。

 大きいお友達が寄ってきたら追い払うだろうから。―――誠さんあたりが。








「とりあえずこんな感じでいいかな?」

「うん、ありがとう刀夜君。恵那、何して遊びたい?」

「おままごと! 恵那は姑さん役ね?」

「「・・・・・・」」

「で、私がお嫁さん役のお姉ちゃんを―――」


 恵那・・・・ちゃん? 

 そんなおままごとをどこで覚えてくるのかな? 


 というか、最近の幼稚園児はそんなドロドロしたおままごとをやっているのだろうか。

 つい最近まで俺と真白も同じ幼稚園に通っていたはずなのだが。


 そんな遊びを持ち込んだ児童と小一時間ほどお話をしたいところなのだが、もしかして転生者じゃないよね? 


「・・・やっぱり別のあそびにしようか」

「そうだね」

「なんで? 幼稚園で一番流行ってるんだよ? うちの園長先生が――――」


 おう園長、ちょっとお前表出ろ。


 明らかに子供に教える遊びじゃないだろ。


「じゃあ、ババ抜きにしよう。トランプあるよね?」

「うん、あるよ」

「わーい! ババ抜きだ―。やっぱり姑はいらないんだね」

「・・・・・恵那ちゃん?」


 もしかして、君も転生者だったりするのかな? 

 ちょっと診断とかしたいからおじさんと来てくれるかい?


 で、結局三人でババ抜きをやることになった。

 俺は高校の時によくやった大富豪とか好きなんだけど、二人にはまだ難しいかな。


 とりあえずババ抜きも手加減を――――



「わーい!刀夜お兄ちゃんの負けー」

「ゴメンね? 刀夜君」

「・・・なん・・・だと!?」


 いや、この姉妹おかしい。

 明らかに神を味方につけているとしか思えないような引きを持っている。


 ポーカーフェイスには俺も自信があったし、最初の内は手加減を考えていたのだが、二回目や三回目も圧倒的な感じで敗北。

 もはや立ち上がることもできないほど完膚なきまでに叩きのめされた。


「二人はちょっと強すぎないかな? ババ抜きなんてそこまで実力が試されるゲームじゃないと思うんだけど」

「でも、お母さんはもっと強いよ?」

「・・・マジ?」

「うん。私たちは一回も勝ったことないもん」


 それはそれでどうなのだろうか。

 まあ、勝負事で手を抜きたくないという考えはよくあるだろうし、そういうこともあるのだろう。


 ・・・と、玄関の方から鍵を開ける音が聞こえる。どうやらティネラさんが帰ってきたようだ。


「―――ただいまー。恵那、いい子にしてた?」

「うん! 刀夜お兄ちゃんとババ抜きしてたの」

「私もやってたよ?」

「二人には一回も勝てなかったですけどね。なんでこんなに強いのか分かります?」

「うーん、やっぱり相手の機微を見るとかかしら。この子たちも得意だと思うんだけど」

「・・・・・」


 それ本気で言ってる? 


 もしかして白峰家の子供は天才がデフォルトなのか?

 

 その言葉を信じるなら、なぜ真白があそこまでの人気を獲得するに至ったのかも説明がつくが、普段からほんわかしているこの娘がそんな特技を持っているとは想定外だ。


 能ある鷹どころか、何の害も持たなそうな小動物として振舞っているということなのか?


 もしかしたら、俺もその術中に嵌まっている可能性が・・・・・


「お母さん! 刀夜君が困ってるよ!」

「まあ、冗談なのだけど」

「・・・・・ティネラさん? 純情な少年をからかうものじゃありませんよ?」

「フフフッ、ゴメンなさい。まさかそこまで深く考えるとは思わなかったのよ。本当に刀夜君はいろいろなことを知っているのね」

「ママー、ジュンジョウって何?」

「恵那みたいな子のことよ」


 せやろか? さっきこの子ドロドロおままごととかやろうとしてたんですけど。

 素直に違いは無いのだろうが、どうにも将来が不安である。


 男を手玉に取るような女性にならないと良いんだけど。


「じゃあ、ティネラさんも戻ってきましたし、僕はそろそろ失礼しますよ」

「「え?」」

「なんで二人はそんな疑問に満ちた顔を? そろそろ遅いし―――」

「あら、刀夜君は聞いていないの?」

「へ?」

「今日は香奈枝さんたちを誘って、家で一緒にご飯を食べる約束をしているのだけど」

「・・・・・初耳です」


 あの両親は・・・。

 大方俺が驚くの顔を見たいとかで言わなかったのだろう。


 というか、俺以外みんな知っていることにならないか? コレ。

 本当に人が―――いや、悪い両親だ。

 まあ、毎回楽しいサプライズばかりなので結局許してしまうのだが。


「まだまだとうやお兄ちゃんと一緒に遊ぶー!」

「次は何をする? 刀夜君」

「そうだなぁ、じゃあ―――」


 結局お暇するのはまだまだ先になりそうだ。








「やぁ刀夜。両手に花だね?」

「・・・からかわないでよ父さん。それに、これからはこういうことをするときは事前に言ってくれると助かるんだけど」

「ゴメンね刀夜。誠君が秘密にしたら面白んじゃないかって」

「―――誠さん?」

「ははは、たまには僕もこういう役回りをやってみたくてね」


 いろいろ突っ込みたいところはあるのが、とりあえず犯人が見つかった。

 俺の両親発案だと思っていたのだが、普段は一番真面目な人がボケに回るとは。


 まさかの伏兵だった。

 

 誠さんまでがボケに回ってしまうとなると、それこそツッコミが追い付かないのだが。


 頼むから俺の味方を一人送ってくれないだろうか。


「パパ、ママ、ごはーん」

「私もお腹空いたよ」

「そうね、そろそろご飯にしましょうか。じゃあみんな、席について」

「「わーい!」」


 小学生と幼児に交じって聞こえてくる男共の歓声。

 マジで、誰かツッコミ役を変わってくれないものだろうか。


「どうしたの? 刀夜。そんな夜勤が終わって帰ろうとしたら、友達に無理やり飲み会に誘われたような疲れた顔をして」

「・・・もう、何でもいいよ」


 どんな例えだよ。

 大してウケそうもない上に、そのボケが小学二年生に通用すると思っているのだろうか。


 まあ、通じるのだが。


「じゃあみんなで―――頂きます」

「「頂きまーす」」


 まあ、いいか。

 前世ではこんな賑やかで楽しいホームパーティーなど、一度として体験することは無かった。

 何より、真白と恵那ちゃんが美味しそうに料理を食べている姿が可愛らしくて癒されるし。


 今なら転生したことの意味を見つけられそうで。


 今世はまだまだ満足はしなそうである。


「あ、刀夜? 明日はお礼に白峰さん一家を家に呼ぶから、そのつもりでよろしく」

「・・・・・」

「わーい! 明日もとうやお兄ちゃんと一緒!」

「明日は何する? 刀夜君」

「・・・・ハハッ、そうだね――」



 本当に退屈しないですね? あなた達。

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