#44 プレゼントは爆弾よりも花で良いですかね
あれから、16柱の精霊、聖獣たちを統括できるこちら側の初めての存在となった大樹の王として再度生まれたグスターク
アルブエストの後任にはエディかカイウスのどちらか、そういう話し合いの末、カイウスが正式に国王となり、エディはその補佐をすることに決まった
アチラ側の世界の大樹を出現させ、グスタークはその大樹に身を移して世界を見る
どちらの世界も見守り、グスタークは今存在している
ただ、以前のようにリヴァストと共にあるには、グスタークの力は強くなりすぎた
歩けば地から草木が生えるし、ずっとそこにいると地が腐る
かと言って離れ続ける事はグスタークの心情に影響が出て危険
それは、アレクでもエテーナアロゥでも超えられない力の源となった
基本は大樹で眠り、目を醒ませばリヴァストの元へ
そうして世界は循環し始めた
ただ、一度失われたグスタークの感情を取り戻すことはバタティーク国民の使命みたいなものになっている
全ての事に反応を示さなくなり、眠る日々が続くグスターク
それでも世界を守り助けるという考えは残っているのか世界の循環は以前よりもスムーズで、だからこそ誰もがグスタークを助けたいのだ
人、聖獣、魔獣、精霊、妖精
全てを愛して全てを切り捨てられるグスターク
それでも彼が切り捨てない限り世界には彼が必要だ
新たな理ができた以上、彼の行いは全てが善となる
「グスタ」
「………」
リヴァストは話しかけても反応をあまり示さないグスタークを抱き上げる
記憶が覚えているのか、グスタークはリヴァストの背に腕を回す
リヴァストはグスタークの肩に顔を埋めて強く抱きしめる
「グスタ、ルーシスが飯しようってよ……」
「……」
反応がないように見えて、リヴァストやヘルミーナが居ると感情があるような仕草があって、少しずつ取り戻しているのだと思うと嬉しい
焦ってしまってはグスタークの心にも影響があるので焦りはしないようにしているつもりだが、やはり焦ってしまうのはある
「ミーナがお前に会いたいって聞かないんだ、大樹から出るのは無理だから大樹の下で会おうってなった」
グスタークは微かに身動ぐ
それが、早く行きたい、という感情の表れであることを最近漸く解ったリヴァスト
歩き出し、最近の出来事や他愛ない話をするとグスタークは微かに指や足を動かす
「そういえば、俺達もお前のおかげで魔導学院とかで講師してるわ、ヴォザークは元からあんな性格のくせに人に好かれるからびっくりだぜ?アイツ講師やりながらカイウスとエディの相手してやがるし、ナタリシアとカリュファーは頑張って学院に入ったし……」
リヴァストが色々と話している内に大樹の根本へ到着し、そこにはヘルミーナ達や聖獣、精霊達が集まっていて、ランチの準備は出来ているらしかった
ただ、グスタークは大樹や世界から直に栄養を吸収できる為、基本食事を必要としない体に作り変わっている
なので、食事はただの気分転換だ
「おいハディ、何してやがる」
「あー、お前の座る椅子に爆弾仕掛けてみた」
「テメエが座れ」
「ぐえっ」
リヴァストがハディレイの背中を踏みつけると、そこまでの威力はなかったが椅子は消し飛んだ
勿論、リヴァストはハディレイ以外すべての人間、物に守護結界を張り巡らせた為、被害はハディレイのみだ
「ただのバカじゃねえかお前」
「………ぃ……」
「…グスタ!今声出したか!?」
「……り…ぶ……?」
「何だどうした」
『リヴァストのああいう過保護癖は治らないんだろうなぁ』
「みー……さ……」
「はいっ何でしょうっ」
グスタークはヘルミーナが手を握ってくることに少し反応している
やはり戻りつつあると思うと誰もが喜ぶ
「………ん…」
ヘルミーナは席へ降ろされたグスタークに今日は何を食べましょうね?と問いかけ、リヴァストはグスタークの好きなリッシャーをグラスへ注ぐ
絶対グスタークかヘルミーナにしかしないだろう
「ミーナ、何を飲む」
「私今日は紅茶いれますね」
「そうか」
「ハーブティー、恋しいですね」
「まあ、な」
「んっ」
「どうした」
グスタークはボーッとしたままだが、ハーブティーに反応をしたらしい
ただ、ここにはハーブティー用のグスタークお気に入りのティーポットが無いし、そもそもハーブのブレンドやら出来る者は居ない
「グスタ、元気になったら淹れてくれ」
グスタークはそのまま、また目を伏せて眠りについてしまった
リヴァストは一応グラスを目の前に置いてやる
グスタークに匂いへの反応があるかも一応確認したいがためだ
「リヴァスト、序に花でもやればいい」
「そうだな……」
大樹の王になってまだ日が浅いので眠ったり起きたりを繰り返すだろう
それが身体が作り変わる代償
そして、場合によっては人間の時の記憶が引き継がれないなんてこともあり得る
消えていく記憶が少ない可能性もあるが、多い可能性もある
だから、少しでも名前や記憶が引き継がれていたのなら、それは嬉しいことだ
「ロディスの花なら匂いも微かに甘いし、安心させられるだろうからそれにする」
「まあ、ロディスは宜しいですね、ロディスの花はグスターク様押し花にされてませんでした?」
「あー、してたなぁ、映えるしな」
あーだこーだとグスタークの事を話す
いつか、完全に目を覚ます日が来たら、グスタークはどれだけ覚えているかは分からないけれど
どうか忘れていることが少ない事を願っている
遅くなりすみませんでした
スマホ治りました




