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#41 望まぬ終結

書きたいところの話でした





「本物の【ラディ】には、それを制御する小型の制御コアがあり、そのコアは生成するためにいくつもの人や妖精、魔獣の命をすり潰して創られるのですよ」


話し始めてから全員から放たれる殺気にも全く動じず、外道は如何にグスタークが素晴らしい器であるか、だけを語り続ける


それは只管にリヴァスト達を煽るだけ


「どこでその情報を聞いた」


そもそも大昔に作られた【ラディ】がどんな仕組みだなんて知っているのは聖獣や精霊、大樹の王やエテーナアロゥだけのはず


禁書庫へ入れて、その古代文字を読める者も今の時代じゃグスタークだけ、そう考えたリヴァストの顔から血の気が引いた


教えたわけでもなく、その言語は幼い頃にリヴァスト達の話して覚えた事だ


なら、その言語を持ってすればきっとその作り方も知っているだろう


リヴァストはゆっくり顔を上げる


そして、ゲスは厭らしく笑ってみせた


それは肯定の笑み


「彼の記憶ですよ、彼は我々にとっては情報そのものですからねぇ、まあ、口からではなく脳を切って直接拝見しましたが」


何せ強情で、どれだけ痛めつけたりしても全く吐かない上に、途中で話せないように舌を噛みちぎろうともしたし、そう説明されるだけでグスタークが味わった苦しみを酒のアテにされていた気分で殺意しかない


途端に精霊や聖獣達の殺気が強くなるのを誰もが感じる


脳を裂かれても、イジられても悲鳴一つ上げなくなった頃には廃人にでもなった、そう思った


だが、それは拒絶していた力の半分を受け入れた後だったから


『貴様、我らの愛し子を愚弄するか』


ウィルナスがゲスを捕らえようと駆け出すが男は慣れたように躱していく


「【ラディ】を彼が複数所持していたのすら知らなかった貴殿らに説教される謂れはないですねぇ」


殺戮兵器を複数所持しているというグスターク


もし限界が来たら使うなんてこともあり得る話だ


所持、というよりかは、今まで討伐した魔獣から採れた命をそこへ還元しただけ


だから複数を作ることができた訳だ


もしもの為、自分を護るか、人を護るかする為に


『複数だと』


「何故彼が強い力を持って生まれたか、それは大樹の王の思し召しだからだ、彼が世界の破滅を齎す為に産み落とされた存在!破滅は彼を祝福し、失われた筈の古代兵器の認証コードを与えて継承させた、赤子だった彼に………エテーナアロゥにすら為しえなかった世界の破滅!子供のまま成長させた貴殿らは彼を止められやしない!」


ミレニアノールの想いなんてものはこのゲスには届かない


このゲスに届いていたなら人一人を犠牲に新たな大樹の王を作るなんて馬鹿げたマネをする事はない筈


完全にこの男は自分の中で勝手な言葉を作っただけに過ぎない


ミレニアノールの願いは人が人と手を取り合って平和に幸せに命を育んで行く事を望んだ


この男の言う虚構のミレニアノールは、男が望んだ姿にしかならない


『それはどうかな』


リヴァストはため息をつく


「何?」


すっ、と腕を差し出すと、その手の先はワープして男の頭を鷲掴み、リヴァストの元へ引き寄せられた


ハディレイもリュエラスもルシュテーカも一歩下がる


ウィルナスのみが下がらずに男を睨みつけている


あの時、自分と離れなければこんなゲスにグスタークが痛めつけられることは無かった


未だにその考えがウィルナスの中に渦巻いて消えてくれない


きっとグスタークならウィルナスのせいではないし油断したのは自分だよ、と言うだろう


『俺達の殺気に怯まなかった褒美だ、イイコトを教えてやろう……………』


リヴァストは男の首を掴んで持ち上げる


その力はまだ手加減しているようだが、男は藻掻いているだけで逃げられていない


『グスタークの悪い所は、隠し事をする上に質が悪い隠し事をすること、だが、良い所は、何だかんだで一人が嫌いなチビだから、結局、尾は俺に掴ませる、何年も共にいた俺の大切な子供だ、あれの考える事なんて、決まっているだろう、ただ今回は質の悪い事だな、グスタ…………』


リヴァストは男の心臓目掛けて手を突き下ろす


案の定男の胸にリヴァストの腕が突き刺さる


そのまま心臓を握ったまま器用に血管には傷をつけずに外へ引きずり出す


細かい血管は切れても、大切な血管さえ無事なら活かす場合は楽だろうな、生かす気はないけど、と一人で解決したリヴァスト


「な、に"ッ、こ、こんな"ッ、ことでっ、もどる、は、はずがっ」


制御コアは必要ないものは除去しているはずだ、とでも言いたいのだろう


だからどうした、とリヴァストは鼻で笑う


『戻る戻らないじゃない、アイツが俺に気付けと言う時はいつも面倒すぎるんだ』


「な"に、っをっ」


『お前の心臓に魔力痕があった』


『魔力痕……?』


ルシュテーカは、リヴァストの持つ、男の心臓を見てなるほどな、と頷いた


少し手助けしてやると、グスタークのかけた魔力痕は魔術紋へ変わる


これは、たとえ逃げたとしても術者に居場所を教えてくれるし、今リヴァストも手助けした事によって、リヴァストも男が逃げても探し出すことは容易い


顔を変えようが魔力の流れを変えようが関係ない


その心臓が変わるなんてことはないのだから


「あいつの得意魔法は、人に知られている分では、全てに長けてすべて等しく使えるといわれて育っているけどな、そうじゃない、生まれながらに、アイツが得意としてきたのは刻印魔法と力の分配だ、元々は戦闘援護に向いてるんだよ、刻印魔法は禁忌魔法に分類されるものも多いから下手に使えない、だから他を極める事にした」


ちなみに刻印魔法の殆どは禁術指定の危険なもの


【ラディ】の製造も刻印魔法が使われるからだ


使えるとするなら物を魔術道具、主に生活必需品などにしたりする、それだけ


だから他を伸ばすしか方法がなかった


人に怒られることは実はそんなに慣れていないし、元々臆病で人と話すのも不安でいつも練習していた事を知っている


それがから回ってしまっているのを見るのは、何時も苦笑してしまうけど、愛しくて、ああ可愛い、と愛でてしまう


その度に「笑わないで!」とか「だってむつかしい……」とか、色々な顔をするグスターク


誰も知らない、リヴァストにしか見せられなかったその顔


「お前には、グスタはただの兵器なのかもしれんがな、少なくとも実の親も俺も友人達も、グスタは大切な子供としか思ってない、人の子供を勝手にお前の道具にするな!!!【刻印魔法解除】」


解除されると、男は自身の身体から何かが抜け出て行くような感覚に襲われ、それがグスタークの身体へ流れていることに反応して目を見開いて怒鳴る


男の心臓へかけられた術は2つ


一つは男が逃げた時用の発見用魔術


そして、もう一つは、男の魔力を媒介にした精神制御の為の力の回復


「わっ私、の計ッ、画を"っ!」


刻印魔法をかけた理由は何かあってもそこから力を吸い上げればいいと考えたから


足りない力は周囲から補えばいい


『俺達の子供は、子供なくせに他人には、特に嫌いな人間には容赦がないんでな』


グスタークの肉体へ魔力が吸収されていき、魔力に反応して、原因のコアが強く反応して光を強くし始める


男は力なく倒れ伏し、だが誰からも心配されることなく死に絶える


『さて、ここからどうするか』


「!?ここからの事決めてないのです!?」


『ここまでしかアイツの考え読めてないからな』


「ええ……」


ヘルミーナとリヴァストの会話の間もフラフラと立ち上がろうとするグスターク


ただ、攻撃はしてこないのでハラハラしつつもハディレイやアリスたちは二人を見守る


『さあ、ここからあいつはどうするんだか』


「…………ですが攻撃は止みました」


『いや、まだ何かしてきそうなんだよな、所で………………ハディ、半分ねえけどどうした?』


キョトン顔で振り返ったリヴァストにハディレイはブチ切れている


『お前!が!俺を!盾に!した!から!』


『あ』


そう、実は、全員が吹き飛ばされたとき、結界を張る前にリヴァストが咄嗟に掴んでしまい盾扱いされて身体の半分を消し炭にされていたハディレイ


何だかんだで一番可哀想なまま放置されている

レティシアは申し訳なさそうに回復魔法を使うがまだハディレイは怒っている


咄嗟に盾にするな!と後ろのグスタークを気にしつつ言うハディレイにリヴァストはケタケタ笑って謝る


『さて、あの暴走を止めてやらないとなのか……もしくは自分でどうにかするのか……』


できるわけ無いんだが、とリヴァストはグスタークの様子を見てそう思った


「『【フォトンヘイム】』」


『リヴァスト!』


グスタークの攻撃にハディレイは叫ぶ


いくらリヴァストでも食らえば大ダメージだからだ


何よりも、今のグスタークに遠慮なんてものはないのだから



『【ウォータージェイル】!』


『そんなの効くかよ!【ダークネスフレイム】!』


「【ディストラクションフレイム】!」


『【アンチダークネスフレイム】【アンチディストラクションフレイム】【アンチウォータージェイル】!』


リヴァストに全阻止された面々は驚きのあまりリヴァストを睨む


『何してんだよ!』


『よく見ろ、発動してねえんだよ』


『は?』


「ガ、ア、た、ぐ」


『ヘルミーナ!お前聖魔法使えるか!』


「使えますがッ、いかがされましたか!?」


『ラディの属性はどれも等しく魔属性だから聖魔法に敵わないはずだしまだ完全に力を使いこなせてないならッ【フォトンフレイム!】』


「【HolyJavelin】!」


「光の精霊、光の加護をもたらす慈悲深き精霊ルシュテーカよ……」


言われるまであのひねくれ者が光の加護の精霊なんて分かんないよなぁ、とハディレイとリヴァストは苦笑する


「どうか我らの願いをお聞き届けください………【HolyVert】」


あたりに光のベールが出現すると、少しだがグスタークの動きが鈍くなった


さらにヘルミーナは詠唱を行う


「光の精霊、光の加護をもたらす慈悲深き精霊ルシュテーカよ……悪しき力から、我らの愛しき人をお救いください【HolyCircle】!」


『グスタ……………帰るぞこの寝ぼすけ!』


リヴァストは拳を握り振りかざす


普通の人間なら受けとめきれずに死ぬだろうが……


「あ、あがっ、あ」


【アシッドブレイク】と言おうとしたグスタークの懐までリヴァストは入り込む


『おせぇんだよ!自分の力もマトモに使いこなせんようになったか馬鹿息子がぁ!』


「ひっ!」


そんな顔をしタグスタークを見たのは、誰もが初めてだった


『リヴァスト・レイズの名において命ず!』


リヴァストは自身の隠された名を口にする


隠し名というのは他の16柱達にも等しく存在する

人から死んでなったアレクは隠せないものの、存在するその名は多数の魔法にも通ずるもの


『我が右手は救いの右手!闇に惑いし哀れな子供を今救わん!【リ・レイズ】!』


グスタークの腕がガードのために動いたが、やはり制御ができないのか動きが遅く、グスタークにリヴァストの近距離砲撃魔法は炸裂する


『掴んだ………お前ら破壊しろ!』


リヴァストは大樹の種からコアだけを分離して放り投げる


コアは依代を失ったことで依代へ戻ろうと、残らせていた種子の力を使いグスタークへ戻ろうとする


『『『散れゴミクズ!【リボルバーストライカー!!!!】』』』


口悪!とは誰も言わなかったが口が悪い


ゴリアテ、ハディレイ、ルシュテーカから放たれた砲撃


コアも流石に耐えきれずに亀裂が入るがまだしぶといのは流石兵器利用されていた部品


『俺の大切な子に何しやがんだこの部品風情が!【アシッドガルフェイラ】!』


ヴォザークがトドメとばかりに物理で殴って潰す

ああ、コイツそういえばゴリラ、とリヴァストは口元を引きつらせた


『後はやるわ……【ヴァルヘイラ】!』


ジレムは時空を捻じ曲げてコアを握りしめる

そして、コアを握り潰して完全に欠片を消滅させる


『良いのかよ、そんな鎖まみれで』


『うるさいわよ、私だってグスタを抱きしめたいのよ』


『うわ魂ごとやらかすタイプだ、帰れよ』


『うっさいわね、戻るわよ、完全にここから出られたら次こそは……』


ジレムは終わり無き回廊へ戻される


リヴァストは執念怖い、と目を伏せる


「グスターク様!」


ヘルミーナの声に全員がグスタークが吹き飛ばされた方を見やる


コアが離れ、一時的に種子が離れてしまったグスタークの身体は一部がなく、自己再生ももはや出来ないほどコアに食いつぶされていた


脳の修復も種子の助けで回復していたからかジワジワと目から光が失われていく


こんなにも酷く扱われたのに、グズダークは誰かを攻める言葉は一切言わないのが、人間からしてみれば腹が立つのだ


いっそ責め立てて欲しかった


お前たち人間のせいだと


だけど、グスタークは誰かのせいにはしない


それは、もう、わかってた……


『グスタ!』


「……リヴ」


『再生手伝ってやる!お前!得意だろ!な!?』


グスタークは微笑む


「僕ね、嬉しかった」


グスタークの《僕》と使う話し方に、精霊、聖獣達は悟った


リヴァストも……


「むかしから、僕はともだち、できなくて……にいさまにも、とうさまにも、ひどい悪態しかつけなくて……だから、いま、こんなふうにたくさんともだちできてうれしいんだ」


『お前は、バカか?これから沢山友達とやらを増やせばいいだろうが』


カイウスやエディだけではなく、もっと沢山増やせばいいのだ


グスタークは友達になるまでは長いが友達になるとそれはもう可愛い弟にしか見えなくなるのだ


なので、増やせばいいのだ


もう一人で居なくていいのだ、そうリヴァストは言う


だけど……


「いいや……ふへ、……………リヴ、ありがと、ぼくね、リヴいなかったら、たぶん外に出てなかった…」


「グスターク様っ」


「リヴ、いくら、みーさんがリュークに見えたとしても、それは、本人じゃないよ……」


優しく微笑むグスタークにキラキラ光る雨が降る


グスタークは残った腕を伸ばしてリヴァストの頬を撫でる


過去のグスタークが頭を過る


すぐに抱き着いて人見知りを発揮したり、かと言えば拗ねて叩いてきたり


風呂が嫌いだと暴れたり、戦闘になると性格が変わったり


それでも、大切な子供だった


『わか、ってる』


「もう、意地悪しちゃ駄目だよ……」


『そんな事は如何でもいい!少しは生きることを考えろ!』


「んー、むり、かなぁ……」


その言葉は聞きたくなかった


人一人の命を犠牲にしたわけではない今回の事件だけど、生きられる、まだ生きている人間には生きてほしいと願うのは、結局の所精霊や聖獣達の変えようのない本質なのだ……


なのに、子供はそれでも、大切だと思う子供はいつも他社の為に自分を切り捨てる


エテーナアロゥも、グスタークも、アレクだってそうだった


『な、っに……』


「ぼくは、みんなをひとりじめしすぎた、ごめんね」


『グスターク様っどうか生きようとしてください!貴方は私達のっ』


「僕はアロゥじゃないよ」


『知っています!』


『ぐすた、なたり、わるいこと、した?なたり!ぐすたと一緒にいたい!』


『グスターク!俺との戦いがまだだ!』


「えー、なたりは、わる、い………こ、と………し、してな、い……ウィル、は……ゆるし、て、それで、し、ぬ」


今にも逝ってしまいそうなグスタークにルーシスもノイドもアリスも耐えられずに涙を零し、アンナ、ノール、ヴォルも信じられないという顔で涙を堪え続ける


「リヴ………はーぶ、おねがい、…………で、きる………?」


『見ていてやる!だから!』


グスタークは優しくリヴァストの頬をするりと撫で、ヘルミーナの方へ向くと微笑んで震える手でヘルミーナの手を掴む


「みー、さ………り……い、たず………き…………から……」


途切れ始める声にヘルミーナはグスタークの口元に耳を寄せる


「りぶ……の………こと………み……の……………と……よろ………く………」


グスタークの手はするりとヘルミーナの手から抜けて地面に力なく落ちる


『………ッぁ……』


誰の物かも分からない泣き声が、荒れ果てた大地に響き渡り続けた……












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