#4 グスタークは王位継承権なんかよりもハーブティーが欲しい
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暫くしても誰も現実に戻ってくれなかったので、仕方なくナタリシアに再度祈りを捧げて全員を四階に連れて行く
そもそも、四階まであの長過ぎる回廊を歩きたくないのがグスタークの本心だ
だって、外観から見ても5階の自身の部屋までで二時間はかかる
是非とも建築方法に物申したい所である
「グスターク様、いつから浮遊魔法は使えたのですか?」
ヴォルに尋ねられて、「多分覚えてても5、6歳で飛べてたぞ」そうグスタークに全員また絶句した
もうどこから突っ込めばいいのかわかんないぞ、と聞こえてくるが、そもそもナタリシアは良い子なんだ、眠いだの面倒だの言わない限りは
「ナタリシア様は」そう言ったグスタークは急に身体から浮遊魔法の効果が無くなって慌てて床に足を着地させる
全員が首を傾げる
急に使えなくなったのはやはり持続的には使わせてもらえないのか?と思った矢先
「っ悪かったよナタリっ」
だから急に加護を消さないで!そう口走ったグスタークに今度は泡を吹きそうになった一同
そう、単に【ナタリシア様】と呼ばれただけでナタリシアは加護をやめたのだ
グスタークは再度加護を使い、空を浮遊する
「危ないな……そういうの良くないと思うよ……ウィルナスとどっこいどっこいとか言われたくないだろ」
すると、グスタークの周りに小さな白い光達が集まっている
「嗚呼ごめんねごめんね、お前たちに言ったんじゃないよ、驚かせてごめんね」
白い光は小精霊と呼ばれ、白はナタリシアの力を分け与えられている子供達と呼ばれている
だが、白い光の小精霊達はまず見る事が叶わない……のだが
「うん、ありがとうね、また後で遊ぼう、うんうん解った」
グスタークは光の小精霊達を一通り相手してから辿り着いた食事を摂る為だけの部屋の前に足を下ろす
「ヴォル、合ってるだろう?」
「え、ええ」
ヴォルは落ち着きを取り戻してグスタークを案内する
席に着いたグスタークは群がってくる紫色の光を出している小精霊達に溺れてあぶあぶ言っている
紫色の小精霊は魔海域守護聖獣ウィルナスの眷属とされており、ウィルナスは魔海域という海洋魔獣を従えて魔の海域を守護している
その為、海には危険が多く、沖に出ると行方不明となって遺体も戻ってこない……
ただ、ここ数年はウィルナスからの脅威もなく、落ち着いた時を過ごしていただけにその場は一時騒然となった
紫色の小精霊は破滅の象徴なのだ
慌てて光魔道士を呼ぼうとする全員を他所に、グスタークは何やら困った顔をしつつも楽しそうだ
「ちょ、何、今日多くない?そんな要らないよ減らして減らして」
減らす?全員がグスタークの方へ向き直ると、グスタークは手であしらう様に小精霊達を追い払っている
そんな恐ろしい事その場にいる誰もできない
「早く座ればいいのに、カイウス様、エディ様、歓迎ムードですよ」
赤と黄色の小精霊達が、二人の席の近くでくるくると回す光景に、お祝いムードはありがとう、だけどまだ国王ではないよ、とカイウスとエディは方をガクリと落として席へ座る
このグスタークに色々言っても無駄なのはもう理解したのだ
この二年の間に
ある時は、リンディハイム家へ赴いた際、二人が来ていることに気付かずグスタークが廊下で歌を口ずさみながら精霊達と遊んでいたり
またある時は、学園へ乗り込みグスタークへ挑戦しようとした際に、素で危機回避されたり
極めつけは、家族ですら恐れるグスタークの私室
近付く者がいれば、どこからとも無く大型魔獣の唸り声なんかが聞こえてきて、容易に近付けなかった
ただ、更に恐ろしいのは、その魔獣を手懐けているのか「うわ、また?そういうのやめた方がいいね、怖がられて嫌われるよー」という、魔獣に対してアドバイスしているらしいグスタークの呑気な声だった
全員が分かったのは、魔獣はこの危機管理意識が誰よりも抜けているグスタークの守護をしてくれているのだと
正直、グスターク本人に何かをやろうもんなら世界が破滅するんじゃないかと思ったくらい唸り声は低く恐ろしかった……
その後、グスタークや国王と共に四人での外交(三人は外交中の見学)をして、色んな意味でグスタークには驚かされた
何より国王並みの知識を独学で学び、暇さえあればその国にも赴いていたらしい
それは過去の事
〚あの、兄様〛
〚どうした、ター〛
〚もう、いいそれで……今だけはっ……〛
〚ははっ、すまんすまん、グスタークどうした〛
〚………あそこにある木が元気がないのです、恐らくは、地の加護を受ける場所が何かにせき止められているのかと〛
その言葉に、アルブエストが驚いていたのだ
見た目は葉などがあって大きな大樹なのだが、グスタークの目にはそうは見えなかったらしい
〚あ、あれ、余計な口はさみましたー……〛
グスタークは一歩下がった
その後、グスタークの話の通り、地の加護の力の流れを一時的に狭めてしまっていた為その原因を除去
すると、みるみる内に木々や草花にも元気が戻った
グスタークはそれでも終始生きた心地がしない、とルーシスにゴチていたけれど……
ただ、ルーシスはグスタークが屋敷の花やハーブの植わっている位置を変えたことにより美しい庭園になっていたことを知っていたのでそこまで驚かなかった
屋敷には庭師が居なかったので、それ以降はハーブを除いては庭師を雇って手入れされているので今のところ問題はない
とりあえず、首を振って記憶は脳内の今要らないものを収納する部分に押し込んだカイウスとエディ
「グスターク様は苦手な事などはないのですか?」
「基本的にどれも卒無く熟してらっしゃるのが素晴らしいです」
「ああー……苦手な事苦手な事…兄をあしらう事ですかね」
「「えっ」」
そう、グスタークにとって兄は最早うざい存在でしかない
王位継承権の話を知っていたらしいが、それで尚の事無駄に絡んでいたのは事実らしい
そもそも、ノイドやルーシスは何故ここまでグスタークを甘やかしまくるのか、何故母のように放任主義でいられないのか……
いや、まあ母のあれは父が絡み過ぎてうざがられているのをわかるから下手に絡んでこないだけなのかも知れないが
「皆様はお兄様方と仲がよろしくていらっしゃるのでとても微笑ましいですね、変な絡み方さえしなければあの兄でもいいんですけれど」
ヴォルは額に手を当てている
グスタークは貴族的な部分はきちんと勿論叩き込まれているが、変な所でポンコツというか……貴族らしい立ち振舞が全て無に帰すというか……
「グスターク様、お飲み物は何がお好きでいらっしゃいますか?」
「あ、ではハーブティーを」
「……すみません、ハーブを煎じられる者が居りませんので、出来れば他の……」
ハーブを使った物は、基本的に資格がいる上に、ハーブを見分けられないという致命的な事もあって、更には、図鑑も曖昧で間違った知識が載せられていて実際は違うもの、とグスタークはその図鑑を捨ててしまった
グスタークは、ハーブを使う為の資格を、史上最年少で持っているので問題ない
今は資格もグスタークしか持っていないことを失念していた
「はっ……フレッシュとかドライとか……あー……お、オレンジで、あとヴォルのお薦めの紅茶を食後に」
「畏まりました」
グスタークは自分の足をつねりながら溜息をついたのだった……
それからの日々といえば、魔法を使いこなすための訓練を初日で終え、必要な教養から勉学、他国との貿易記録から何からを2日でこなしたグスタークは僅か二ヶ月で国王育成寮を去った
まあ流石にそれではバーティス家の三人が可哀想なので、二人の教育が終わるまでは、【基本常識】というものをグスタークに教えるという事でリンディハイム家へ滞在して頂くという形となった
グスタークの脳内の常識と、世間一般、平民から貴族までの【基本常識】では大分違うということもあって、グスタークは1から教えられていったのだが……
何分自室ではあの魔獣の唸り声があって近寄れず、勉強用の部屋を作ってもらいその部屋で勉強をする事となった
外からは、グスタークは部屋の中で何やら作業をしているのが分かる、だが、屋敷の中に入るとグスタークの部屋に近寄れなくて困るのだ
それから、寮から外出という形でグスタークの元へ訪れていたカイウスとエディであったが、グスタークの淹れるハーブティーが本当に好きになってしまい、何度もリンディハイム家へ訪れて、本来の目的を思い出す頃には、既に寮、という事が続いた
そんなある日、突然グスタークは、「そうだ、王位要らないから皆を迎えに行こう」と謎の発言を残し、リンディハイム家から風の如き速さで飛び出して行ったのだった……
釈然としないカイウスとエディ、ヴォル、ノール、アンナの、深い、海の深さよりも深い溜息をついたのは言うまでもない……
【ハーブについて】
この世界では、ハーブを煎じる為には資格が必要となり、販売する際も、その資格が有るのか
資格がなかった場合は重罪として投獄されます(毒草と間違えて煎じられると死者が出る為)
ハーブには、飲み物にするだけでは無く、別の工程を入れると高位ポーションになる為、沢山の人が資格に挑みますが、今の所、グスタークのみその資格を保有しています(単にハーブティーが飲みたくて勉強したらハーブに詳しくなって資格の勉強をしてみたら偶々受かりました)
カイウスとエディの話はまた書けるといいな、と思います
では