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#37 大樹の王







ノーヴィス国北東に位置する妖精の門



その付近へ近付くと、魔獣から穢れの混じった妖精なんかが人間を攻撃していた



女子供老人、そんなこと関係なく殺している魔獣や妖精達に、どうにかやめさせようと動くリヴァスト達だが、見境がなく、リヴァスト達にも攻撃を仕掛けてくる



『やっぱり大樹の王の気配がある!』



ハディレイの言葉にギリッとリヴァストやアレクは唇を噛む



『大樹の王ッ……!どうやってコイツがこっちに干渉してる!』



「誰か肉体が朽ちにくい存在に憑依しているとしか!私達ではあの魔力の塊の王に勝てません!」



『………匹敵するレベルの存在をぶつけられれば……グスタが居ればなッ』



「『【落ちよ】者共』」



空から響いたその声に全員が空を見上げる



頭の上の3重の輪



ヴェールに包まれている身体



片足は裸足で、耳はエレーン(エルフに近いが妖精と同じ種族でもある)のように長い



包帯に覆われた片目に長い髪



黒い片腕………そして複数の声が重なったようなその声は不快な感覚がした



だが、グスタークの髪は短いし、耳も長くない



そして、その存在を見るだけで、それが何なのかを理解した



【大樹の王】という存在であるということを



大樹を使って世界の均衡を保つ役割を担い、その力で新たな生を生み出す存在



そんな大樹の王がこちらに存在するには、大樹の王の依代になるための器と大樹が必要だ



大樹はある



考えたくはないが誰かの身体を器としている



そして、器ということは等しく死にゆくことも



大樹の王が手を振りかざすと、そこからは、精霊、妖精達の世界でも嫌われるような化け物たちを召喚してリヴァスト達へ攻撃を仕掛けてくる



リヴァストは、化け物達を食い千切りながら大樹の王へ駆け寄り鋭い爪で斬りつけようとする



そこで、鼻に香った微かな匂いを感じ、後退った



『ば、かな』



『リヴ!何してやがる!』



『ッ…………お前が、お前が!お前のせいで!!!』



大樹の王とリヴァストの間に障壁が現れ、リヴァストの攻撃は大樹の王へダメージを与えることは叶わなかった



それどころか、リヴァストへダメージが返ってきてリヴァストは舌打ちをする



「『今、我、ミレニアノール(グスターク・フォン・リンディハイム)が希う』」



『何!?』



同時に響いた名を聞き逃すはずも無かった



ハディレイはどうなってる!とリヴァストの肩を揺する



だが、そんな事はリヴァストだって知りたいことだ



リヴァストは歯ぎしりをした後空を見上げた



『ミレニアノール!!!!』



「『我に仇為す愚か者に裁きの鉄槌を【ロディスノヴァ】』」



『ハディ!』



『解ってるよ!【防壁雨】!カリュファー!ナタリシア頼む!』



ハディレイは援護魔法を要求し、二柱は頷く



「本当にそれでいいの?」



だがその時、突然なグスタークの声にカリュファーとナタリシアの動きが一瞬止まる



「『愚かな………【追憶の前奏曲(RecollectionPrelude)】』」



『『きゃぁぁぁッ!!』』



吹き飛ばされたカリュファー、ナタリシアを慌ててヴォザークが受け止める



ウィルナスがその前に出て守りをするという異様な展開にヘルミーナは驚愕し、攻撃している主を見上げる



『お前!』



『「【Requiem】」』



そう呟かれると一気に全身が重くなり、数人の兵士が力なく突っ伏して行く



そして、あっけなく殺されてしまい、ヘルミーナは自身の足を短剣で刺すと駆け出した



グスタークではない



だが確証なんてない



だけど、こんな不条理許されない



ヘルミーナは物理攻撃が聞かない可能性もあるとは理解しても、それでも許せないという気持ちが大きく、大樹の王へ剣を振り翳す



「『我が呼び掛けに応え、現れよ【ゴライアス】』」



リヴァストは慌ててヘルミーナの身体を引っ張り、ヘルミーナもギリギリのところでグスタークの物理攻撃から逃れる



『【Howling】!!』



『【紅蓮剣】!!』



『【グレガス】!』



ハディレイが音魔法の中級魔法【Howling】を使い、ウィルナスが炎魔法の中級魔法【紅蓮剣】、リヴァストが闇魔法の上級魔法【グレガス】を使って攻撃する



【Howling】は音で魔法を完全相殺する中級魔法、【紅蓮剣】は物理攻撃ではあるが剣に炎を纏わせ肉体へ紅蓮呪と呼ばれる呪いをかける炎の中級呪術魔法、【グレガス】は能力向上をさせつつ相手へ呪縛を与えその場に縛る上級闇魔法である



大樹の王の力の特性上、この三魔法が特に有効な魔法であると考えた



音魔法なら、大樹の王の音魔法を相殺できるし、炎魔法なら大樹の王への物理ダメージにもなる



闇魔法はグスタークが結構闇属性魔法に弱い為にリヴァストが考え使っただけで有効手段かはまた別の問題だ



そんな三体に対して、大樹の王は召喚魔法の岩属性、【ゴライアス】を召喚してみせた



だが、そんな時だ



「【おいで】」



そう声が頭の中へ直接響くと、先程までは荒れ果てた街だったのに何もない真っ白な空間へ全員が召喚されたようだった



それだけの魔力を持ち、こんな魔法を使う人間をリヴァスト達精霊、聖獣達は一人しか知らない



全員が辺りを見回し警戒していると、ふと目に入った人物に誰もが驚愕し、そして久しぶりの安堵を覚えた



「………ここなら外部干渉を受けることもない精神空間だから、ついでにジレムに頼んで時間求めてもらったの」



ちらちらと空から降り注ぐ光の雨は、魔獣たちから受けた傷を癒やしていく



リヴァストはため息をつく



『そこでジレムなのか』



久しぶりの会話がこれかぁ、と空を見上げるリヴァスト



まあ確かに現状、外の魔獣や大樹の王に関しての事でグスタークと会話ができては居なかったから



「ジレム以外の精霊や聖獣はここに揃っているから、外部干渉受けないのはジレムだけだしねぇ……」



『確かに、あそこにいればそうなんだろうが……てか!お前これどういう事だよッ!』



「ああ、俺が消えた後のこと?」



これでも結構拒絶はしたんだよ?とグスタークは眉をハの字にして苦笑している



その顔は何故か泣きそうな顔に見えた



顔も大分と疲れた顔に見える



『そうだよ!お前ッ、大樹の王と何を』



『その件に関しては僕も不本意な結果なのだよ』



グスタークの後ろからフッ……と現れた少女



浮いているから地面にはつかないが、とても長いエレーン特有の美しい金髪



瞳は右が白、左が紅



現状外の大樹の王とは姿が違うので、暴走状態である事は納得した



「ノール……」



『ミレニアノール』



『そう、私が本物なの、この子の中にある私の種が、沢山の魔力を集められてしまったことで無理矢理に発芽させられたから、この子と私の精神は不必要に入り混じって、この子は危なかった』



ぽつりぽつりと《ミレニアノール》と呼ばれた元エルフ、前王の力を継承した精霊であり、大樹の王は何故こうなったかを話し始めた









何故かとてもじゃないけどハッピーエンドにできる自身がない件(でもハッピーエンド推しなんだよな)

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