#35 【アチラ側】と【コチラ側】
あれから早半年、ラウデリッシュ王城地下へ赴いたが、最早そこにグスタークの姿は無かった
『まだ見つからねえのかよッ』
リヴァストは焦り、爪を噛み千切る
その姿に数人の人間が震え上がったが、理由が理由なだけに息をのんで落ち着かせようとする
リヴァストの怒りは最もだが実の親をも凌駕するその怒りは
「はい………」
『……精霊達も捕まえられねえとか言ってるしな』
『………』
『リヴァスト、あんまりやべえ事はするなよ』
『……………』
『おい………』
リヴァストは繋がりが絶たれた事なんて今までジレムの件位だったし、ジレムの時はジレムのそばにいると分かっていたからそこまで取り乱さなかったが、今回ばかりは駄目だった
完全に絶たれたことは初めてだった
そこに居ないことがここまで不安にさせると思わなくて
いや、何処かでこうやって取り乱すかもしれないということは分かっていた
こんなに早いとは思わなかっただけで
『…………集めろ』
『……わったよ……アレクならちっと調べてそうだけど』
『ああ……』
リヴァストは部屋を出る
正直、グスタークの部屋にいても焦りが募るだけだ
『…グスタ、どこだ……ッ』
『ごめんなさい、私も加護としてグスタには付けていたんだけど、弾かれてね、しかも弾かれてこっちに反動があって動けなくてね』
ハディレイと共にすぐ来たアレク
リヴァストが振り返ると、治りきっていない傷の一部を抑えながらアレクがそこに居た
その傷を触ると、少しまだ魔力残滓を感じ取る事ができて、相当派手に弾かれたことがわかった
『反動だと』
『ええ、ズタボロにされたわよ、相手は、余程私達から遠ざけたかったんだろうけど……』
『逆効果だ』
そんな事をされれば身内をやられたということでさらに猛り立つことなんて分かるはずなのに
余程場所を知られたくないのだろう事だけは理解できる
『………リヴァスト、私はこのまま探させるから、ルシュテーカとヴォザークが空から探してる、ナタリシアも……ヨナーンは相変わらず今回は無理って、まあ忙しいからね」
『ヨナーンが関係してるとかではないのか』
『妖精付けてるけど、それはないわね』
寧ろヨナーンも探すことは協力的で、未来予知からこうなることは分かっていた、だが遮ることができなかったと発狂しているので置いてきたらしい
そうしてくれて正解である
ヨナーンもジレムと同種のメンヘラなので一緒に来られても困る
『そうか」
「ええ……手ずからやらずに誰かにさせているなら話は別だけど………あの子、回りくどいこと嫌いでしょう』
脳筋のウィルナスよりも脳筋とあだ名につけられているのでウィルナスの方がまだ理性的だ
なんなら、いざとなると誰よりも理性的になるのでウィルナスは案外リヴァストと仲がいい理由もそれだ
『そうだが』
『あの子は人にやらせるなら自分でやるでしょうし………だとしたら、あちら側かなと』
あちら側
つまりは精霊の世界に関する事が原因の可能性がある
ただ、精霊はほぼ全員の意見から精霊の世界にグスタークがいる可能性は低いとの意見だった
理由は、精霊の世界ではまず人間が出す周波は異なるので誰かが入り込んでもすぐにわかるということ
そして、グスタークの周波は他の人間よりも鮮明に覚えているのでずくにわかるということ
あのとき逃げ込んだのが向こう側ならその時点で精霊や妖精たちは気付いて出迎えたはずなのにそれが無かったということ
『………向こうに連れて行くために世界を滅ぼすなんて考えは愚考だ、こちらとあちらは表裏一体………こちらが壊れればそれはあちらも壊れるということ』
『ええ』
みんなそれは分かっている
だからこそ、そんな精霊や妖精たちの探知魔法にすら反応しないようにしているのだとするならば……
『何をする気かは知らんが分かっててやってるなら………グスタが壊れるぞ』
『そうなる前に助けるのよ……』
あの子はなんだかんだで弱い子だからね、とアレクは目を伏せた………




