#28 好き嫌いははっきりしているけれど文句を言うなら○ねば良いんじゃないかな
間が空きましてすいません
頑張ります(泣)
多分また時間かかるかもしれませんすいません
「グスターク様っていつから戦闘練習入られました?」
皆がゆっくりと食事を始めた頃のこと、ヘルミーナが気になっていたらしく紅茶を飲みながら問いかける
紅茶は出発前にグスタークに淹れて貰ったもの
グスタークはヘルミーナに凭れながらナイフを手にとる
「んー、四歳からかなぁ」
「早いですね」
「えっ、いや、お前演習場使い始めたの五歳」
ルーシスはびっくりして振り返ってくる
四歳の頃はもう何だか大人びていて手を繋ぐのも抱っこもさせてくれなかった時期だ(リヴァストに抱っこされたいから母親以外の抱っこ拒否)
ルーシスは自分の弟がそれなりに小さいときからハチャメチャだった事に絶望した
「駄目って言われたから」
「駄目って言われたら使わないんだよっ」
「兄上うるさい」
「うるさくないよっ」
ルーシスとグスタークの喧嘩だが、実質ルーシスしか怒ってはいけない
怪我をしたらどうするんだ!と言われても、そんなの興味ないしーとグスタークは舌を出す
そんなグスタークの頭をヘルミーナがぺちんと叩くと「あうっ!」とグスタークは首を縮こまらせる
それにリヴァストも便乗して怒ってくる
『お前、許可取ったって言ってたよな』
「そんなことは言ってないな、許可は一応取りには行った、って」
『絶対許可取ったって言ったぞ!』
「はえーん、しらね」
グスタークは興味なさそうに歩き出す
正直グスタークに何を言っても素直に聞いてくれないので無駄だ
だけど、それでもちゃんと言い聞かせてきたリヴァストを全員が尊敬する
『お前本当に大人の言う事は聞くもんだぞっ!』
「はぁーい」
『返事だけだよなお前いつも!』
いつもそうと言うわけでもないが、基本は右から左なグスタークにリヴァストはもう何度目かもわからない言葉を言う
「んまー」
当人に全く響いてないけど
グスタークは指を舐めて食べ進めて行くがリヴァストはギリギリ牙を軋ませる
『おぉまえなぁぁ!』
「はい」
グスタークはうっさいな、とリヴァストの嫌いな食べ物で口を塞ぐ
『ンゴッ!!!!!!!』
『リヴァァァ!』
嫌いでも食べないと好きなものを作ってくれないのだがリヴァストはそれどころでは無い
ハディレイは叫びつつもヘルミーナの後ろに隠れてやり過ごそうとしている所を見ると、ハディレイにも苦手なものが今目の前に存在しているらしい
『…………うっま』
咀嚼を少ししたリヴァストは、はた、と口を動かしてそう呟く
「しょーでしょ?」
よしよし、とリヴァストの頭を撫でてグスタークは嬉しそうだ
料理は得意なのだ
リヴァストやハディレイ、後ルシュテーカも案外好き嫌いが多い
その為食べられる食事を作るのに苦労したのだ
『ガキ扱いすな』
「えー?美味しくなぁい?」
『美味いけど!』
「ミーさんも食べる?」
「食べ、食べます………」
何か複雑、とヘルミーナは、んんん、と唸る
「はいあーん」
「大きすぎませんか!」
グスタークはほぼ切らずにヘルミーナの口へ持っていこうとする
完全にリヴァスト達に対する扱いと同じだ
あまり家族と食事をして来なかったために……
「え?でもリヴァストはこれくらいのサイズだよね」
『俺と人間の口の大きさを一緒にするな』
「………そっかぁ……」
『お前、俺らのせいだけど、感覚麻痺し過ぎだろ』
リヴァストはヘルミーナに悪い、と手を振る
基準が精霊や聖獣なのはもう仕方ないが、だがそれでもそこまで毒されないで欲しいものだ
「んー、そうだねぇ…………でもさぁ、いっぱい入れた方が食べた気がするし」
『俺らとお前はな、他は違うだろうが』
「そっかぁ………」
『さて、食ったらもうちっと移動するぞ』
「はいっ」
食事を終え、危険区域外まで歩き、そのまま野宿となったため準備を始めるグスタークとリヴァスト
と言うか、他の面々よりも格段に準備が早い
グスタークの手際が良すぎる
ハディレイは周囲を警戒するために妖精達に指示をしている
「リヴァスト〜ハーブティー飲むー?」
『ラディロットな』
「なんで頑なにラディロットなのさ」
『他のは味が甘すぎてくどいんだよ』
話しながらも手だけは動く二人に、そこに茶々を入れているように見えてきちんと手伝っているハディレイ
ヘルミーナはぐぬぬぬ、と三人の姿に唸る
一応結婚すると決まってからはグスタークを意識するようにしているし、なんなら結構可愛い所が多いのでリヴァストの近さに嫉妬心が収まる所を知らない
「そう………ミーさんもハーブティーで良い?」
グスタークがヘルミーナの方へ向いて微笑むと、ヘルミーナはさっきまでの唸り声が嘘のように満面の笑みになった
「はいっ」
同パーティーメンバーとルーシスは笑いそうになりつつ、ヘルミーナを応援する
変わり身が早いのはヘルミーナの良い所だ
「ハディー、何飲みたい?ホットワインなら出してあげるけどお酒なら」
『あー、ラディロット水で薄めて飲むわ』
ハディレイはグスタークがちょいちょいと手を出して来てその手の上で自身の手を遊ばせつつ要望を言って必要なくなった道具を片付ける
家族よりも実はそれなりに長く過ごしている精霊聖獣達の方が家族らしい動きをしている事にルーシスが今度は拗ね始める
「そう、リヴはラディロットハーブティーでミーさんがハーブティー、ハディーがラディロット水割りね…………」
「グスタ、兄ちゃんには?」
「泥水啜ってろ」
低音で言われた言葉にルーシスはなんで!なんでそんな冷たい!と叫ぶ
リヴァストは冷ややかな目をルーシスに向けてしまう
幼い頃からのグスタークへの扱いの問題である
すぐにチビ扱いする
それはリヴァストも同じだが、更にそこに、まだグスタークが赤ちゃんか何かかと勘違いしてるのか?と言われるくらいに子供扱いしている
度を越した甘やかしにグスタークがブチ切れた末の扱いである
「兄ちゃん泣くぞ!」
「へぇ」
「へぇって!」
本当に俺の扱い雑だな!とルーシスは地面を殴る
ルーシスの友人も兵に混じっていたらしく笑われているが、ルーシスは噛み付くように睨む
兄妹の仲がいい家族は笑ってられて宜しいね!とルーシスはキレている
グスタークは暫くルーシスを見つめた後、ため息をついてマグを出す
「じゃあテュールティーでも飲む?」
「テュールってどこに自生してるん」
「え、そこいらに生えてる」
指を指すグスタークに全員が首を横に振る
そんな馬鹿な、と
「嘘だろ!それこそ嘘だろ!」
「いや、目の前に生えてたから言ったんだけど」
『テュール、幾つだ』
「それテュールに似てるあれじゃなく!?」
「いや、そのままだね」
全員思った、創世神はグスターク贔屓し過ぎていると
いや、今更だが
「じゃあ俺ご飯するから、………テュールティーと、ラディロット水割りね」
『俺のはー』
「リヴァストはハーブティーも淹れなきゃなんだからすぐには無理だよ我慢して」
『チッ』
グスタークは食事をテキパキ作っていく
見た所は簡単にパンと昼の残りのグリュールの肉にハーブや香辛料を合わせた肉料理
スープは具は野菜だけ入っているがしっかり味付けされていく
『あ"ッテメェまたっ!』
「好き嫌いするんじゃないよ」
グスタークは躊躇いなくリコラを入れていく
リコラとはまあ赤い酸っぱい(甘い物もあるがそのまま食べると腹痛を起こす)野菜
煮込み料理に使われるものだが、それを山のように突っ込んでいくグスタークにハディレイもリヴァストも青い顔をしている
『不味いだろうがっ』
「リコラ尽くしにしてやらぁ」
『ふざけんなっ』
「なんでそんなリコラ嫌いなんだよっ使い勝手いいんだよっ」
煮込む焼く飲み物加工!と叫ぶグスタークにリヴァストとハディレイは勘弁してくれ!と叫び返す
二人の共通の嫌いなものらしい
グスタークは更に炒め物にまで投下するものだからハディレイは頭を抱えて座り込んだ
「あそこの会話はお母さんと息子なんですねぇ」
『それはなぁ………確かに、問題起こすのは基本グスタだけどよぉ、一番扱いが大変なのは好き嫌いが多いリヴァストだぜ?出されたら食うけど文句ばっかだからな』
ハディレイはこそこそ逃げて来てヘルミーナの後ろに隠れる
「わー………」
『グスタは食うなら良いって言うし、基本無視してやがるけど、普通にあれはうぜぇよ……』
「……………うっせぇ!」
『ゴフッ!!』
また詰め込まれたリヴァストは後ろへひっくり返る
リコラばかりは無理らしく青い顔が可哀想だ
グスタークはそんなリヴァストの口を自身の手で押さえている
「飲むまでこのままな?」
『あれはいつもの流れだから気にすんな』
「ええ……」
「なんだかんだで魔力回復に適してるんだから食え」
リコラは、味はともかく回復したいなら、という上位ポーションの一つの素材となっている
加工するよりも強い効果を得られるので生食いを推奨するグスタークに毒耐性なかったら死ぬ!とハディレイは頭を振って居る
生で食べたら腹下しを起こす
最悪死ぬことだってあるのでそんなこと推奨するな!とハディレイは叫んでいる
ヘルミーナも知り合いにやってしまった者がいるため、正気か、と疑う
『ムンッムグッグブッ!!!』
「なんだって?」
『リヴァスト、大人しく飲んでから話した方がいいぞ……』
「ほら、ハディーも言ってる…はいハディー」
『オグッおえ"ッ』
ハディレイの口にもリコラの実を突っ込む
小さい物でもそれなりのサイズのリコラを突っ込まれて危うく窒息死かけたハディレイ
こういう雑な所アレクそっくり!と内心怒るハディレイだが、口には出さない辺り仕返しが怖いらしい
「出したら殺すぞ」
『ひゃい……』
「ほら、ハディー偉いよ?ほらほら」
リヴァストに飲めよ、と言い続けるグスターク
なんと質の悪い子供だろうか
『ムゴーッ!』
「聞こえねえ」
日に日に口が悪くなるグスタークに何故かときめいているヘルミーナを、病気かお前、と後日リヴァストに言われる事になった
病気である
殴られてもいいかもしれないと勘違いするほどに
まあグスタークはそんな趣味ないので絶対やらないが
『ムッングッ!テメエな!自分だって嫌いなもんは食わねえだろ!』
「は?食わないじゃないよ、細かく切り刻んでんだよ」
『え』
『は?』
そう言えば、嫌いな物でも食べてたな、とリヴァストとハディレイは思い出す
文句も言わずにきちんと咀嚼して味わう辺り、グスタークはハディレイやリヴァストにとやかく言われる筋合いのない良い子である
「嫌いだとしても食えば栄養があるなら処理する、わかったな?俺はガキじゃねえ、そもそも食べ物は大切にしろ、文句言うならさっさと死ねば良いんじゃないかな」
『ごめんなさい』
『……ごめなしゃい……』
「今グスターク様の背後に何か居たような……」
そして二人が小型の魔獣と精霊にしか見えなくなった
「気にすんな、気にしてたらキリねぇよ」
ルーシスは口へテュールティーを含む
弟がヤバイのは一緒に暮らしてきたから知っている
今更突っ込んでも負けだと思っている
「そ、そうですよね……」
『グ、グスタ、次から切って』
「あ、うん、そうしようね」
『丸ごとはデカイしキッツい……』
「ん、わかったよ」
よしよしと頭を撫でるグスターク
ハディレイはリヴァストの方へ向いて親指を立てる
リヴァストはそのハディレイの親指をへし折った
ハディレイは「リヴァーーーッ!!!!」と叫ぶ
グスタークはリヴァストにやめなさいと怒るが面白くないのだからやりたくなるのは仕方ない
「リヴァストの名前ってその悲鳴から来てるの?」
『んなわけあるか!俺じゃなくてハディレイだろうが!』
「いや、よくその悲鳴を出させてたからなのかなぁって」
『遺憾!後!名は産まれた時には刻まれてるんだよ!』
「へぇー」
『雑!お前雑!』
グスタークはそんな騒ぐリヴァストを放置して席に座る
そんなことよりもごはんの精神である
ただ、あれだけ食べてもまだ空腹なのでその辺は大変そうだが
燃費が悪いのだろう
「さ、てと、後どれだけ距離あったかな………」
グスタークは地図を開いて位置を確認する
「……この速さならあと2日」
『それくらいだろ』
「うん」
そんな時だった
急に背筋を駆けてくる不快感と全身に立った鳥肌にグスタークは勢い良く後ろを振り返った
『どうした』
「………いや、うん、大丈夫、なんでもない」
その時の事を、グスタークも、その時彼と共にいた人すべてが後悔することになる
もっと気にしていればよかったと…………
wktk




