【閑話】元カノVS今カノVS聖獣様(不本意)
ヘルミーナは真剣な顔をして口を開いた
「リヴァスト様、グスターク様ってお子はご自身で頑張れるお方ですか」
二人で少し真剣な話し合いをしていた合間での急なことにリヴァストの脳みそは一瞬活動をやめて、ヘルミーナの言葉を理解するために活動を再開する
『俺ちょっと外行ってく「は?」ぐしゅたこいちゅこわい』
リヴァストは机に突っ伏して怖い女ってなんでこうも、とぶつくさ言う
女の基準がヘルミーナやアレクなのであって、理想のお淑やかさはグスタークの夜行会の時の姿だ
「そもそも大問題ですよ、彼あんな感じじゃないですか」
『ま、あ………』
「殿方の尊厳を踏みにじる手段しか最近頭をよぎらなくてですね」
明確にどんなこと、というのを口走りそうなヘルミーナをリヴァストは必死で止める
要らない情報はある程度カットしたいのだ
『俺それどうかと思うのだが、でも彼奴はお前が思うよりも【ガキ】だからな?正直お前がリードするとかの問題じゃねえよ』
グスタークは誰もが思うほど大人びてはいないし、そもそも、大人びて見えるのはそうあろうと必死なだけ
そんな事はヘルミーナもわかっている
だがそこまでとも思っていなかったというのも事実だ
「それはつまり、最初から最後まで彼はオニンギョウだと?」
『そうそう、料理し切らねえとな』
始まっても終わっても混乱しかしてなさそうである
気がついたら終わっている上に全く学習できていないタイプの人間
ヘルミーナは眉間を抑えた
「はぁ………なるほど」
『俺はそういうの嫌いじゃねえよ?けど、数日、彼奴は羞恥心で生娘みたいな反応しながら逃げ回るだろうよ』
リヴァスト達精霊や聖獣に裸を見られるのはいいのに(ナタリシアとカリュファーは除く)家族に見られた時は発狂したグスタークが半年家に帰らなかったのが例だ
基準がわからねぇ!とリヴァストは叫んでいた事を思い出した
家族に裸見られたくらいで、とグスタークは割り切れなかった
「あら、願ったり叶ったりですわねお可愛らしい、要は彼はvirginと、アレク様はお手を出されなかったんですね」
手を出されるのがグスタークなのか、と思うとリヴァストは余計に頭が痛くなってきた
だが、親心丸出しなリヴァストとしては子供をそういう事で穢したくない
だから官能の物語や噂話もグスタークに届く前に音魔法相殺で掻き消していた
『ああまあな、お前、アレクとグスタークの年齢差は10以上だぞ』
「あら、ふふっ!私も10は上ですけれど?」
そう、ヘルミーナとグスタークの年齢差は13歳差
現在グスタークは16なので、まあ計算すればわかる
結婚したくなくて軍に入ったが、適齢期がギリギリだと言われていたのでグスタークと婚約できたのは有り難い(家族が)
アレクはそれよりももう少しだけ上である
「言い方が悪かった、グスタークがチビの時に会って死んでるんだから手を出せるわけがない」
「あら、そのくらいの殿方に手を出した友人が二三人居るのですけど」
「はぁッ!?させるか!」
リヴァストは立ち上がる
愛息子(箱入り)が危ないとわかると必死だ
できることなら結婚なんてさせたくも無いし、人間が何故そこまで一人の人間に固執するかは解らないが極力、グスタークには結婚なんてさせたくないのである
「ふふっ、やはり、男性寄りの精霊様、聖獣様の皆様がお止めしていただけですね」
リヴァストは頭がどんどん痛くなってきて抑えている
『ぐ、ぐぅっ……』
「それにしても、殿方ならそういう教えはありませんの?」
『誰が、そんなもん教え受けさせるかよ……』
「ふふっ、………………やはり皆様のせいですわね!」
『ぎゃぁぁぁ!』
リヴァストにヘルミーナは容赦なくなんでそんなことします!?と説教する
リヴァストは想像以上にアレク寄りのヘルミーナにだから人間って!と叫ぶ
例外中の例外がグスタークで人間な筈なのだが、例外だから、というか、聖獣、精霊にそれを大切にして欲しいという面々が多いだけだが
その点、ジレムやヨナーンは例外として手を出したい勢だ
「リヴ〜〜〜?」
グスタークはひょこっと二人が話をしていた部屋へ顔を見せる
『お前は来るなァァァ!』
「え!?ひどい!ひどい!」
グスタークはひどいと叫びながら廊下を走っていく
あわててリヴァストが廊下へ顔を出す
『どこ行くんだよ!』
「アレクのところ!」
わけわからないのにいきなり怒られた!そう叫ぶグスターク
確かに会話を聞いていなければいきなり怒られた事になる
そういう所だぞ!とリヴァストは言うがグスタークは止まらなかった
『危ねえ危ねえ危ねえ!あいつ今なら手を出しかねな『なんだって?』アレク!?』
呼ばれたから来たんだけど?と微笑むアレクに嫌な顔をするリヴァスト
この二人はグスタークがいないとあまり相性が良くない
とは言ってもアレクともそれなりに過ごしてきたのでその嫌な感じなのはもう理解している
男よりも男をしているし、街へ行くと実はグスタークが嫁でアレクは旦那なんじゃないか?なんて言われていたくらい二人の性別が逆なのだ
『やぁねぇ、本人が嫌がれば出さないわよぉ?けどね、私ももう精霊だから常識が外れてるから止まれるかどうか…………』
『っ!おまっお前らはやっぱりグスタに近付けさせるか!』
結局、リヴァスト達にとってはグスタークが一番大事なのだ
「あっ!ナタリお昼寝しよー?」
『あんな幼気な子供に何するって!?』
幼気というかもう大人に近いというか、というアレクとヘルミーナが考えるが、確かに子供だもんな、言動行動、と頷く
リヴァストは何か言えよ!と叫ぶ
何も言われないと不穏な空気過ぎて辛いのだ
「アレク様、もうグスターク様は私の婚約者ですし、そもそも精霊様が人間と?」
『ふふっ、精霊だとしても大丈夫よ、それに、ヘルミーナはグスタークの事まだきちんとは知らないでしょう?あの子が何に弱いかとか、ネ?』
「ぐっ」
ヘルミーナとアレクの攻防にリヴァストは勘弁してくれ、と頭を抑える
もうこれ以上頭痛を悪化させないで欲しい
「きああああああ!」
急に別の部屋からグスタークの甲高い悲鳴が聞こえて来てバタバタガシャンと何かにぶつかる音が聞こえてきてヘルミーナとリヴァストはアレクの方を見る
『ぐっぐすたっそれたぶんおどかされてっ』
ナタリシアのおちついて!という声に耳も貸さずグスタークは話し合いの部屋へ飛び込んでくる
「みーさぁぁぁ!」
「わっ……ど、どうしましたの?」
「むむむむむむじがでだぁぁぁぁ!」
ヘルミーナはグスタークを撫でる
そして、アレクに向かってとてもいい(マウント返しの)笑顔を見せてグスタークを抱き締める
「大丈夫ですよ、このミーナが必ず排除してまいりますわね、虫苦手だったんですのねぇ」
「むじぎもぢわるいよぉぉっ」
アレクは暫くリヴァストを蹴り続けていた
「扱い!」
しかし、その後原因を知ったグスタークは嘘つき!とヘルミーナから離れてリヴァストに飛びついたのはお約束……そしてその後ろから二人に半殺しにされそうな殺気を浴びせられ、グスタークに泣きついていたのだった
これが聖獣様かぁ、とグスタークに呟かれたのはお愛嬌なのか……
リヴァストはグスタークを大切にしたいだけで別に一人でいてほしいわけではないです




