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#22 なんてこった………

仕事復帰初日、地獄!

レジムが【終わり無き回廊】に封じられて暫くした後の事



外が慌ただしくなって来て、ああ、終わったのかな、とナタリシアが外を眺めていると、布の擦れる音がこの広い部屋に響く



慌ててナタリシアが振り返った



「…………な、……た…り」



『グスタ!グスタっぐすたよかったぁっ』



グスタークは息をゆっくり吐いた後、泣くナタリシアを抱きしめて背中を擦ってやる



上手く動かないが、それでも、抱きしめたり少し撫でる程度はできる、とグスタークはナタリシアにごめんね、と声をかける



「………ごめんね、もう、だいじょぉぶ……」



『うんっうんっ』



ナタリシアは負担にならないように抱きつきつつも、グスタークからは離れようとしない



グスタークも嬉しそうに微笑んでいる



『でるぁ!おらグスターク!テメェ俺に言うことあるよな!』



扉を勢い良く音を立てて開いたリヴァスト



グスタークは驚かず、ナタリシアも見えていたので驚きもせずグスタークに抱きついている



来る気はしていたし、来る気しかしなかった



グスタークは、ナタリシアの背中を撫でてやりながら口を開く



「ないかな」



『ああ!?』



グスタークはゆっくりリヴァストの方へ顔を向け、凍りついた笑顔を向ける



即座に出て行ったゴリアテ、ハディレイ、ヴォザークは賢い



見てたら多分序でにチクチク刺されていただろう



【notとばっちり】である



「………ジレムに片腕取られるような人の言う事なんてないかな」



グスタークの刺々しい言い方に、コイツッ!と言いたいリヴァストだが、グスタークはああ言えばこう言う、という正確だし、口では勝てないのである



だが怒りたいものは怒りたい



『ああ!?』



「へえ、僕との約束も覚えてないんだ」



リヴァストは『約束ぅ!?』と言いつつ、グスタークとの約束の事を思い浮かべて悩む



それなりに長くいるので色々な約束もしてきたのでごちゃごちゃになっていて思い出すことに苦労する



そして、リヴァストは勢い良く顔を上げる



『あ……』



「だから、聞かねぇって言ってんだよ、僕の予知夢を察せないボケ野郎が」



グスタークとの約束、それを思い出したリヴァストは顔を青褪めさせる



完全に忘れ去っていたのである



リヴァストはベッドに手をついてグスタークに近付いて涙目である



色々思い出したが、この16柱の中で、誰よりも約束をさせられているリヴァストにとって約束の一つ一つなんて一々覚えられていないのだ



約束と言う名の契約魔法は確かにあるので必要ならそこから記憶を漁るのだが、今回は本気で思い出せなかった



【予知夢の内容はうまく思い出せないが、前提で体に影響があるので基本毎日以上がないかどうかだけ確認をして欲しい】と言う約束



忘れていたということは途中からやっていなかったということである



『先に言えよぉ!それが分かるの心読めるノーアンくらいだからな!?』



「ノーアンとか今どうでもいいよ」



忘れてたんだろ、毎日って言ったのに、とグスタークが言うとぐぅの音も出なくなったリヴァスト



ベッドに突っ伏したリヴァストの頭をナタリシアは撫でる



『グスタ、でも、リヴァスト、いっぱいグスタのためにうごいてた、だから……』



「……………まあ、当分レジムも出てこれないだろうしね」



あの【終わり無き回廊】から今の所、最短脱出できたのはグスタークただ一人だ



というか、大喧嘩の末、リヴァストが反省しろ!と突っ込んだのに、最短半日脱出してきてリヴァストは涙目になった



ちなみに今じゃコツを掴んで放り込んでも秒で出てくる



ただ、精霊や聖獣には反発魔法が発動して、長くても百年は出てこれない



しかも、グスタークは【終わり無き回廊】と【ナイトメア】を組み合わせてくるので、一番怖かったことが繰り返し目の前で起こるのでメンタルがえげつない事になるのだ



正直もっと優しくして欲しい



こちらから開いて連れ出すのは容易いが、中からの脱出が難しいのを理解している癖に更に虐めてきやがる!とリヴァストも一度そんな目にあっているので何となくレジムに同情的になってしまう



「あの……」



そこに、精霊、聖獣達以外の声が響いてグスタークは顔を上げる



声の主はヘルミーナだった



「えっと……リフィターニャ家の、えっと、ヘルミーナ様、ですよね」



「はい、ヘルミーナ・ロス・リフィターニャです、この度はお目覚めになられまして、誠に良かったです」



リヴァストはグスタークの腹に腕を回して横になる



ちょっと居た堪れない気分になったヘルミーナには多分ちょっとあっちの気(同性愛好き)がある気がする……



「ご迷惑をおかけ致しました」



「いえ、あの、大丈夫ですか?」



グスタークは微笑む



もうあの氷のような笑みではなく安心した



「ああ、平気ですよ、ただ少々やり過ぎました、皆さんの方はどうですか?大怪我された方は?」



なんせレジムとリヴァストの攻防だけでも相当な負傷者が出ていたのだからそこは気になるところだ



「幸い、命に関わる程の怪我をした者はおりません、グスターク様のおかげです……」



そう、多分あの時声をかけずに放置していた場合、死者が出ていた



しかもあの場にはアルブエストも居たので余計にまずい状況ではあった



「俺も今回は油断していたので、精霊や聖獣は何をしてくれるかわからないトコロがあるので正直驚きましたが」



レジムに魂を抜かれるなんて、少しは考えていたけど現実になるとは思わなかった、とげっそりした顔で言うグスターク



リヴァストもナタリシアもそれには同意見で、洒落にならない、次出てきたらまた同じ事されるって勉強させよう、と誓った



「あの、グスターク様は精霊様や聖獣様方が話している言葉がおわかりになっていらっしゃるのですか?稀に皆様人の言葉以外を話されていて」



「あ、そうなんですよ、生まれつきなんです」



「生まれつき、というのは凄いですね」



生まれつきで、最初に覚えたのが精霊や聖獣が遣う言語だった



その為、最初の頃は家族との意思疎通ができず、聖獣、精霊達はやってしまったぁ!と後悔したしめちゃくちゃ申し訳なくなった



どうにか人の言葉も全員で教えて、三歳すぎにようやくカタコトの会話をするようになった



「良くもないですよ、ひたすらに煩いですからね、上手く力を使いこなせないような幼いときは特に」



そこら中にいる精霊や魔獣達の声を拾ってしまうので、大混雑で耳元で叫ばれている感覚、ですね、と説明されてげんなりするヘルミーナ



確かにそれはうるさい、と



『それでもお前には才能があったからな、すぐに話し始めて全員が驚いた』



人の言葉はからっきしだったのにな、と言われても原因は精霊、聖獣、魔獣達にある



グスタークのせいではない



「勝手に驚いたんじゃないか」



「グスターク」



グスタークはベッドから降りようとする



それをアルブエストが止めてグスタークはそのままクッションに背を預けて座る



ナタリシアは腕を掴み、リヴァストは腰に腕を回してグダっているのでそもそも降りられないが



「………王様、お手数をおかけ致しました」



「いや、無事ならそれでいい、むしろ戻ってこれてよかった、相手はあのジレム様だったからな」



「昔からあんな感じだったそうですので、今回の事で今後は懲りてくれるといいのですけど」



『懲りるか?』『懲りないと思う』そう話すリヴァストとナタリシア



グスタークも何となくそんな気がして少し悲しんだ



『やっぱり無理だろう、アレはお前に執着しているからな』



「そんな執着される程の力があるわけでもないのに」



グスタークとリヴァストは、溜息を付く



ウィルナスを見習って欲しいほどである



「………グスターク、話あってな、お前の許嫁を決めた」



グスターク、ナタリシア、リヴァストは硬直した



「流石にアレクばかりを愛しているグスタークには悪いとは思ったが、人としては許嫁は必要と思ってな、紹介するまでもない………お前の許嫁になるヘルミーナ嬢だ」



そこでヘルミーナも硬直した



グスタークは久しぶりに動かす身体を使ってアルブエストの服を掴む



久しぶりに立ったこともあるのでガクガク足が震えるがだとしてもアルブエストは言い聞かせようとする



まあグスタークにとってそんな急な話やめてほしい



「ヘルミーナ様は兵で冒険者でもありますよね!?」



グスタークは震える足を酷使しながらアルブエストを揺すって止めようとしている



「だからだ、お前はすぐに逃げるし外にも行く、なら、お前の外での護衛兼仲間兼嫁だ」



「長いぞ肩書……」



グスタークは頭を抱えながらも受け入れようとだけは絶対にしない



強情だな、こんな事になったのに、そう言われてしまえばもはや何も言えないグスターク



『お前、全部自業自得だな』



「くっそがぁ……」



「それから、グスターク、お前には【王立大学】に編入してもらうことになる、これは飛び級は無いのでな」



グスタークはとうとう崩れ落ち、現実逃避で気絶し、また全員に心配させたのだった












漸くヒロインが出来ました←

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