#11 得意な事は料理だけど、好きな事はハーブティーを淹れることなんだよね……
結果、小一時間しか寝れませんでした……
それから!ツイッターのいいねもリツイートもとても有難く、皆様の小説も読ませていただいております!
本当にありがとうございます!
「グスターク・フォン・リンディハイム様!入室されます!」
入口前に立っていた兵にグスタークは声をかけると、兵はすぐに取り次いで中へ声をかける
それまで少し騒がしかった声はそれで静まり返った
暫く間をおいて中から声がかけられる
「通せ」
扉が開くと、アルブエストや貴族の目には、幼女姿のナタリシア、それをどうにか歩かせようとするグスタークが居た
その横や後ろには、黒い大きな魔獣姿のリヴァスト、竜姿のウィルナス、黒いマントを羽織る人型のハディレイと、ダンディーなおじ様の状態なゴリアテが共に居る
「………ナタリ、歩こう?」
『いや……めんどくさい』
絶対歩かないとばかりにぶら下がってろくに歩こうとしないナタリシアにグスタークは肩を落として抱き上げる
ナタリシアは嬉しそうにグスタークの肩に頭を乗せてグスタークの行動を見つめ続ける
「………リヴァスト」
『俺はこの姿でいてやるだけマシだろ』
人前とかマジ最悪、と、リヴァストが言えることでは……とグスタークは溜息を吐く
何故だろう、ひたすら溜息しか出ない、とグスタークは泣きたくなった
「マシて……ウィルナス」
『殺るか!』
ウィルナスのいつも通り具合に安心はするがやめて欲しいグスターク
ウィルナスとやりあうとハイポーションしか使えない(肉体損傷の具合が酷くて)ので断固戦闘拒否である
以前一度だけウィルナスに勝ってからこうなので勘弁願いたいグスタークだけれど、そんな事言ったって誰も止めてやくれない
止めてくれたら幸せなのに
そもそも全員(ナタリシア、レティシア、ラーフェン除く)が戦闘狂だが
「やらない、はぁ、お願い、ゴリアテ、ハディ」
『はい、畏まりました』
『私は嫌ですけど』
「ふぁー、ゴリアテ良い子ぉ、ハディ見習って」
ハディレイは舌打ちしながら姿を変える
すると、偉いねーとグスタークはハディレイの頭を撫でる
すると、俺も俺も!とウィルナスがやって来て、そしたらナタリシアまでナタリもナタリも!と騒ぎ始めてしまった
そんな状況のグスタークに優しく肩を叩いてくれるゴリアテ
『扉開いてますよグスタ』
「あらま………失礼します」
その部屋に通されると、正面にはバタディーク王国の現王、アルブエスト・ナディ・バタディークが今にも立ち上がりそうになりながらグスタークを見ていた
その横にいる臣下達も喉を鳴らしつつ何も言わずに立っている
グスタークはその横を普通に歩きながら、アルブエストの前に立つと、膝をついて頭を垂れる
「グスターク・フォン・リンディハイム、ブルスト、南の洞窟、魔海域、空挺聖域より無事帰還いたしました」
グスタークが膝をついて頭を垂れると、アルブエストは頷く
「うむ、良く無事戻った、して、その後ろの聖獣様方は?」
「聖獣王リヴァスト、精霊王ハディレイ、南の洞窟守護聖獣、ゴリアテ、魔海域守護聖獣ウィルナス、空挺聖域守護精霊ナタリシア、系五名です」
「!全て一人で出迎えたのかっ」
出迎えというか、気分で迎えに行っただけなのであるが
グスタークは、貴族社会と王位継承権とか要らないからこのまま放置してほしいと本気で思う
だって、アルブエストからの呼び出しはないがアルブエストが屋敷を訪れる事は多すぎて困る
いや、呼んでも来てもほぼ心労は一緒なんだぞ、とグスタークはナタリシアの頭を撫でる
後何気にカイウス、エディも張り合ったりしてくるので、これからはウィルナスやハディレイの相手も含めて地獄でしかない
グスタークは顔を上げてアルブエストを見る
というか、周囲が固まっているのは何故だろう?そと首を傾げるグスターク
取り敢えず、と口を開く
「ええ、元々幼少期にリヴァストと出会って以来、よく相手方より話し相手をしてくださりました」
「なん………16聖獣様達の五名を」
「ナタリ、一回ごめんね」
『ねむい……』
「んん……ふふっ」
ナタリシアを降ろすと、ナタリシアは背中の方から抱きついて『うー、うー』と何かご不満だが、グスタークが手を撫でると嬉しそうに微笑む
そういえば、昔は手を触られるの嫌だったのに、時が移ろうと触られて嫌がる場所も変わるのかな、とズレた事を考えるグスタークに、解ってないわーとリヴァスト、ゴリアテ、ハディレイは天を仰ぐ
でもこういう所が何だかんだで好きなのだ
「…………グスターク、そなたに聞きたい、ハーブティーとやらの薬草園を王宮内に作る予定だ、だから、頼む、宮廷薬剤師達に見分け方を伝授してやってほしい」
「……まあ、構いませんけれど、ハーブですよ?」
ハーブはそもそも自生しているものを探す方が早い
まあ、それでももう、種の芽吹かせ方から、栄養や何が必要かは解る
ある程度の魔力を与えれば、魔力がその場所に定着して芽吹きを助けてくれるだろう
ハーブに関してはグスタークが好きな分野なので今から楽しみな事が増えた、と微笑む
その顔に、5柱の精霊、聖獣達もどこか嬉しそうだ
「ああ」
「……畏まりました」
「それから、宮廷魔道士にも契約魔術を教えてほしい」
「畏まりました」
契約魔術は、リヴァストに赤子の頃に適当にかけた契約魔術もそうだが、リヴァストやナタリシアとの契約魔術の方かわ良いかな、とグスタークは悩む
基本、グスタークの契約魔術は相手がすでに了承することが分かりきった契約なので、最悪は野良の魔獣を何匹か連れてきてその魔獣達と契約をさせるべきか、と悩む
何だかんだ嫌だとか逃げ出したりしてもグスタークはそういう所はキチンとしている
「………其方からは何もないのか」
「……特別な事は特にはございません」
「そ、うか」
「はい」
「……其方等は何もないか」
何もないかと聞いても、聖獣陣が威圧していて口を開けないようだ
まあ、当人達は威圧というより飽きてきたからハーブティー飲みたい、で機嫌が悪いのだけど
ナタリシアはグスタークの頭の上でご機嫌であるが
「では、皆、夜に夜行会を開く、それまでに支度しておくが良い、グスターク、まだ話がある、残れ」
「畏まりました」
まだあるのかぁ、とグスタークはナタリシアの頭とリヴァストの毛並みを撫で堪能しながら溜息しか出なかった
もういくつの幸せ逃したかな、と呟くグスタークにゴリアテだけが慌てて『そんなことないさ、きっと幸せも見つかるからな』と優しくしてくれる
ゴリアテは一番この中で優しいなぁ、とその筋肉ガッチリダンディおじさんの身体に擦り寄るグスタークだった
それから小一時間ほど待たされてグスタークは何故か王の私室でハーブティーを淹れていた
何故、その言葉しか出て来ない
「ハーブティー飲みたいが為に残らされたのか僕は」
『グスタ、ラディロット寄越せ』
リヴァストがグスタークの魔法袋を漁ろうとするのでグスタークは魔法袋の口を抑える
こんな時間に酒(になる実)を身体に入れるなんて、とお母さんかな?と思わせる発言をするグスターク
「こんな時間から食べるのやめなよ」
『ハーブティーに入れんだよ』
「ハマったの?」
『おー』
事実、ハーブティーは何杯目?くらいに飲んでいるリヴァストなので嘘ではないだろう
それにしても、ハーブティーにハマってから、何故か精霊や聖獣達も飲むようになったなぁ、嬉しいけど、とグスタークは魔法袋からラディロットの入った瓶を取り出す
そろそろ買い時だな、と瓶の中身を見て眉を寄せる
買ったのこの間なのにと言う言葉が透けて見える
「そう…………はい」
『………ま』
美味いを『ま』だけで表現するようになったリヴァストに苦笑する
というか、何故かリヴァストはグスタークから離れようとしない
ナタリシアに嫉妬した?リヴァストも可愛い所あるなーとほのぼの考えるグスタークに、グスターク変なこと考えてるなあれ、とゴリアテ、ハディレイはハーブティー用に厳選された砂糖をカップに落としながら飲み啜る
突っ込まないのはリヴァストの為だ
何か言ったらリヴァストに半殺しにされる……
「そっか、というかさ、甘党だった?」
『黙秘』
「それは確定だね」
『うっせぇぞ』
ラディロットを貰い満足したリヴァストは、静かにテーブルまで戻ってハーブティーを飲む
全員と種類が違うのは、リヴァストと他の面々の好みが少しばかり違うからだろう
リヴァストは甘い物がナタリシア並かそれ以上で好きな所がある
以前、リトレという、お菓子の店が多い国で片っ端から食べようとして仕方無しに一週間滞在するハメになったのは全部リヴァストのお菓子好きのせいだ
ちなみに、それのおかげで危うく魔獣がリヴァストを迎えに来そうになった………
『グスタ!殺るぞ!』
「やらないて……」
ウィルナスはあいも変わらず自由だ
『グスタ、なたりもらでぃろっと入れたい』
「甘いの好きだもんねぇ、もうちょっと美味しくて甘いのにしてあげようねナタリのは」
『?なぁに?』
「じゃーんっ!トゥレーゼシロップ!早朝王城に来る前にトゥレーゼを市場で買ってきたのをハーブティー用シロップにした~」
トゥレーゼは、赤い拳くらいの大きさの果実だが、そのトゥレーゼをつける木が基本的に人の手で育てる事が難しく、世間一般では高級な果実
今の所人の手で育てる事への成功例は無く、たまたまトゥレーゼを見つけた、ただトゥレーゼは数個しか無いから売っても高い
甘さは手間をかけてようやく甘くなるし、元はとても酸っぱい
だが、シロップにしたり、焼くと熱に反応してその過程で甘くなる
だから人気な果実である
それを複数個買ってきたらしい
大体ひとつで【5000メル(5000メルは5000円と思ってください)】である
『!とれぇぜすきっ』
「今度トゥレーゼのジェラート作ったげようね」
『うん!』
「ふふっ」
二人でトゥレーゼのシロップをハーブティーへ流し込む
少しそこに果実の欠片が沈殿していくと、ナタリシアは嬉しそうにその少し緑がかっていたハーブティーが赤と緑になるのが嬉しくて、綺麗で……微笑んだ
グスタークはいつも楽しかったり、嬉しかったり、聖獣や精霊達に沢山のものを与えてくれる
悲しい事も沢山あったけれど、それでも前を向いているのだけは解る……
「グスターク、私にはないのか」
「どれにします?トゥレーゼ、ラディロット、ロゼマーニ」
「ロゼマーニも混ぜられるのか?」
「はい、さっぱりした甘さと、程よい渋みが特徴です、トゥレーゼは熟したものを使用し、ハーブティーに入れると甘さを増します、ラディロットはトゥレーゼに劣りますがロゼマーニよりも甘みがあってクッキーに合います」
ロゼマーニは、表面は青く、匂いは薔薇のような香りがするのに、果汁を絞ると爽快感のある香りがする変わった果実
果汁は青色だが、とても美味な果実だ
トゥレーゼ程ではないが希少なもので、量産できる木は二本しかなく、それ以外はトゥレーゼ同様森のどこかにあるのだ
しかも、同じ木に実を付けるのが野生だとなかなか実らない事もあって、だからこそ貴重なのだ
ただ、グスタークは内緒でトゥレーゼの木もロゼマーニの木も持っているし、何より自分で育てた木なので高級食材がタダである
ただ、トゥレーゼを買った理由は人に見られるのが嫌だから、という理由らしい
「なる程、ではラディロットを試してみようかな、気になっていたんだ」
甘いもの好きなんだろうな、とグスタークはハーブティーの事に対しては嬉しいのか微笑む
「グスターク、私にはロゼマーニを」
「はい父上」
「これは冷めても飲めるのか?甘ったるくはならないのか?」
アルブエストはハーブティーを飲んでグスタークに尋ねる
確かに、冷たくなると甘すぎる時もあるからそこは気になることだろう
「あ、これ冷めたほうが甘くなるんですが、その場合でしたらゼリーにするのがおすすめです、お作りしましょうか?ゼリーに使う物によっては、冷えても甘さは変わらず美味しいですよ」
試行錯誤を重ねた末の発見で、おかげで料理上手になったと言える
それを見てか、リヴァストも料理に興味を持つようになって、グスターク程ではないけれど料理が美味しい
「どこでそんな知識を」
「旅していると、色々試すんです」
そう、不味くなることもあったさ……
誰だって失敗の1つや2つはある
「………!ロゼマーニを入れたら緑が紫色になったぞっ」
「反応するんですよねロゼマーニに」
そういう種類のハーブティーを試しました、とグスタークは返す
見た目で楽しんで貰えれば、とグスタークは更に別のハーブティーをアルブエストの前へ置く
それにリヴァストは反応した
だって、リヴァストの一番好きなブレンドのハーブティーだったから
「夜に出せないのか?」
「んー………急だから量は準備できないです、ロゼマーニやらトゥレーゼやらは市場にももう無いでしょうし……」
取りに行くのは見られたくないから嫌だし、と悩むグスターク
一応禁止区域内でリヴァストが見てくれているから着いてこられることも考えたら嫌なのだ
「そもそもゼリーを作ろうと思ったらジーラいるし」
ジーラとは食べ物を味をつけずに固めるものの原料なのだが、粉末にする前の状態だとそれだけでも食べられるし、美味しい
それをそのまま使うと中から液体が出てきて、それをゼリーにすると味も引き締まるのだ
ジーラは量産できるので市販で買うのだが、ゼリーなんて作る予定はなかったので購入していない
「よし、すぐ準備させる!」
「どんだけだ〜………」
「なたりもとれぇぜのぜりぃ食べたい、グスタのつくったのぜんぶすき」
「んんん……そっかぁ……うれしいなぁ」
グスタークはナタリシアを抱き締めて、じゃあ一緒に作る?と優しく問いかけたのだった…
グスタークは私の中ではちょっと気持ちが病んでてほしい……
のに周りが優しすぎて病み展開が来ない……