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cul-de-sac

作者: 真北

山田と町村!

二人は仲良し!

山田「あー…もう胃液全部出した気がする…」

町村「大丈夫?俺の胃液要る?」

山田「要らなーい…」


 二人の月イチの贅沢「焼肉のサトーのプレミアム食べ放題(2680円)」の後、山田がその日摂ったものを近くの疎水へと還し、町村がそれを介抱するまでがセットになっている。


山田「うー…気持ち悪い…」

町村「上から出るか下から出すかの違いだし別に文句は言わないけどさー。」

山田「おげーれつー…」

町村「毎日毎日炎上の誘惑を我慢して地道にコンビニバイト続けてさー。俺だっておでんを床になすりつけてるの実況したいよ!竹輪をアレな感じに咥えたやつを鍋に戻したりしたいよ!それを我慢してだよ。毎日100円ずつ貯金してのやっとの焼肉様なのに、毎回毎回食べた分きっかりチャラにさせてなんなんだよそのエコシステム。」

山田「毎回ラストのギアラなんだよなぁ。あれ。鬼門。食いにくい。」

町村「じゃあなんで毎回頼むのか。」

山田「毎月のルーティンはちゃんとこなしていきたい。みたいな。」

町村「それをルーティンに組み込めって俺は言ってないよさ。」

山田「俺も言ってない。自然とそうなったよね。」

町村「なんで毎回頼むのか。」

山田「なんかこう。いいじゃん。ギアラ。ギアラ!怪獣みたいで。月イチで怪獣退治したいじゃん。」

町村「タン。」

山田「タン。ハラミ。」

町村「ハツ。」

山田「ハツ。だから怪獣をね。俺はね。倒したいんだよ。月イチで。カロリーを摂取したいんじゃないんだ。俺は焼肉で。怪獣を。怪獣を!倒したいんだよ!」

町村「酔ってんなー。」

山田「うps」


 口を手で抑えて疎水へと向かっていく山田。

 戻ってくる山田。


山田「ギアラ出た。」

町村「倒せてないじゃん。」

山田「倒せてなかった。経験値にもなれんやった。」

町村「物理的にも精神的にも実入りないよねお前にとってこの会。ガチャより無駄だよこの3000円。」

山田「思い出!思い出!お前との!大切なお前との!思い出!」

町村「……えへへへへ…」

山田「えへへへへへへへhf」


 突然再度口を抑える山田。

 でも今回はなんとか耐えたようだ。


山田「ギアラ出そうだった。」

町村「ゆーて大部分俺食ったじゃんギアラ。」

山田「その節はどーもー。」

町村「いえいえー。」

山田「…でもこうやってさ。俺はさ。思い出をさ作っていきたいんだよ。お前と。」

町村「もうちょっと積み重なるタイプの思い出がいいなぁ。」

山田「積み重なってるさ。俺の身体からは毎回なんかギアラは居なくなっちゃうけど。お前との深夜バイトで貯めた金で手に入れた焼肉。を敢えて!すべて吐いて失くして!その結果!純粋にお前との楽しい時間だけが残るわけよ。それを束ねてさ。積み重なった思い出には嘘はないよ。純粋に素敵なやつだよ。」

町村「無理だなー。いい感じに言っても隠せてないなー。もうどうしようもなく無為だもの。なんかもっとクリエイティブな要素が欲しいよ。」

山田「力が…欲しいか…ゴゴゴゴゴゴゴ……」

町村「それはクリエイティブ。なの?」

山田「力が…欲しい…主にラストのギアラをお前と楽しく消化しきれるような…そんな力…。」

町村「消化うんぬんよりは先ず計画性なんだろうなー。」

山田「仲間が欲しい…よく食べる…類まれなる咬合力と鉄の胃袋を合わせ持った…」

町村「駄目だよ。3人になったらどうせ量が1.5倍になるだけだよ。」

山田「可愛い女の子。」

町村「欲張りかよ。」

山田「いっぱい食べる君が好き。」

町村「好きだけれども。」

山田「お肉を消化することが得意だから。パイン。パインちゃん。」

町村「キラッキラだな。」

山田「もーキラッキラに可愛い。顔とかもこーんなにちっちゃい。」

町村「大食い要素どうなった。」

山田「いーじゃん。お前食ったものどこ行ったんだよ!みたいなキャラばっかじゃん。奴ら飼ってるね。腹に。ブラックホールを。その強大な魅力によってあんなにも俺たちを魅了するわけさ。」

町村「かわいい。」

山田「かわいい。パインちゃん。彼女の胃液なら!飲める!」

町村「溶けろ。」

山田「そして1.5倍のギアラを食う!デザートも本日のアイスと季節のシャーベットもどっちも食う!」

町村「溶けろ。」

山田「おーっとう!本当の食後のデザートはーパインちゃんになるのかなー??パインちゃんのパインパインはパインパインかなー??」

町村「……」


 想像するパインちゃんの形に両手を広げる山田。最高。最高に馬鹿だ。

 聴いてて楽しくないこともないが、空想上のパインちゃんに現を抜かす相方に生暖かい感じをアピールした方がいいかなと無言を選択する町村。

 と、近くのおっぱいでサービスするタイプのお店、の横で、メイドの格好で呼び込みをしている女の子。メイドの格好ではあるのだが、上に羽織った厚手のジャケットでほぼ隠れており、心はコスプレしていないことはひと目で分かる。


川安「…マッサージー…いかーっすかー…」


 夜目ではあるけど多分可愛い。可愛いが「コスプレをしていること以上は別料金ですんでー」と言わんばかりにサービス精神が無い。

 ない、が。


山田「…パインちゃん?」


 衣服越しでも分かる山田の両手の形が作る大きさにフィットするサイズ感。

 そしてその左胸には果物のワッペンに書かれたその果物の名前。


町村「……川安…?」

山田「えっ!?」

川安「ファッ!?」


 物語がいま始まろうとしていた。

異世界に行くつもりはまだあります。

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