歓迎は歓喜の音で
【2】
「これから行く島なんですが、今年の夏終りから学校、神社、船などが壊される案件が発生しているようです。最初は誰かの嫌がらせかと思われてましたが、人では出来ない壊れかたなどがあったため島の住職より会社に依頼がありました。」
凜は紙に書いてある内容を伊藤に伝えた。
「ふぅ~ん。」
伊藤は特に感心を示さず窓の外を見た。
「まぁ、行って確認するしかないわね。凜ちゃんと島でバカンスも悪くないわね❤️」
凜はマスクを押さえながら、
「はい、はい。」
とあしらった。
島の空港は秋晴れだった。
「空が高ぁ~い!天気いい~!」
伊藤は両手を天に突き上げ叫んだ。
「ってか、何にも無くね?」
回りには何もなく、ただただ広かった。
凜は時計を確認し
「伊藤さん。もうすぐ車がきますから。」
遠くの方から一台の車が向かってくる。
「ああ、あれね。」
伊藤と凜がこちらに向かう車を見つめていたときに風が吹いた。
「ちょっ!うわっ!」
伊藤の黒髪が乱れる。
「伊藤さん!!」
凜が叫び、伊藤の手を引っ張る。バランスを崩して前に崩れた。
「ぷぎゅうっ」
その声と同時に迎えの車が大きな音と共に縦に割れた。
「大丈夫ですか!!伊藤さん!」
凜が叫んだ。繋いだ手を起こす。
「いてて...。凜ちゃんイキナリすぎてお姉さん対応できなかったよぉ♥️」
冗談を交えながら立ち上がる。
「大丈夫だよ、凜ちゃん♥️手荒い歓迎だねぇ~。」
凜は手を離し真っ二つになった車を睨んだ。
「そうですね。」
そんな凜をニッコリみた伊藤。
「ねぇ凜ちゃん。私達どうやって依頼者のお寺に行こうかねぇ。」
「え...,あっ!」
凜は急いで携帯で依頼者に連絡を取っていた。
伊藤は手を天に突き上げ
「なんだ、もう秋になったんだなぁ」
と静かに呟いた。