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日常

高校三年生、春。短いような長いような春休みが終わりを告げて、新学期。始業式の朝を迎えていた。今日から三年生というのもなかなか現実味がないというか、実感がわかないというのはなぜだろうか。あれか、卒業式の日と同じ。終わってから、「ああ、卒業したのか」って感じるのと一緒なのだろう。と、ぼんやり考えた。日常が、また始まる。多少違えど、同じものが。


「おはよ、(りん)


どこかつまらなさそうに空を見つめていると、誰かが声をかけてきた。


「おはよ、(あきら)


声をかけてきたのは幼馴染の1人、緑川晶。家を一つ挟んで隣に住んでいる。成績優秀で運動神経抜群、眉目秀麗。全く持って非の打ち所がない人間。こいつ、人生イージーモードなのかな。なわけないか。


「…おはよ、二人とも」

「「おはよ、瑠璃」」


眠そうな目を擦りながら挨拶をしたのは、俺の家のはす向かいに住んでいる幼馴染の藍水(らんすい)瑠璃。成績晶と比べると少し劣るが優秀で運動神経抜群、眉目秀麗。こちらも、非の打ち所が少なそうなやつだ。晶も瑠璃も身長が高くて大変羨ましい。何を食ったらこんなにでかくなるんだよ。と、何度思ったことか。もう諦めたけどな。そこでふと気が付いたのが、そろそろ登校時間に差し迫っているというのにもかかわらず、幼馴染残り二人がいない。


「はぁ、瑠璃。眠そうなところ悪いけど、綺羅(きら)起こしてきて。俺と晶で(まこと)を起こしてくるから」

「りょ~か~い」


瑠璃は間の抜けた声で返事をして、俺の家の向かいに住んでいる幼馴染の灰簾(かいれん)綺羅を起こしに行った。瑠璃の相変わらずの緩さに苦笑が漏れたが、まぁいいや。そんなことよりも、真を起こさなければと晶とともに真の家に行った。

真の家は、俺と晶の隣…つまり、間の家。幼馴染で集まるときは、都合がいいからか真の家が多い。まぁ、正直中間くらいにある家ってそんなもんだよな。真の家のインターホンを押すとしばらくして真の母が出てくる。軽く挨拶をして中に通してもらい家に上がる。居間にいた真の父にも挨拶を済ませて真の部屋に向かった。階段を上り、突き当りまで行くと真の部屋のドアがある。ドアを軽く三回ノックするが返事はなかった。晶と顔を見合わせると、ため息が出た。今度はノックもなしにドアノブをひねり、中に入る。


「真ー」

「おはよー」


挨拶しながら部屋の中に入るが、部屋の主はいまだにベッドの上で寝息を立てていた。本日二度目のため息がこぼれた。仕方ないと真の側まで行き、体を揺する。


「真、真。起きろ、朝だ」

「ん、ん~?」


寝ぼけて、言葉にもなっていない声を発する。ゆっくりと体を起こして、目を擦る。開かれた目が、俺たちの姿を捉えた。


「おはよう。燐、晶」

「「おはよ、真」」


長い髪を少し揺らして、ふわっと笑う。大変かわいらしい。幼馴染の一人、月長(つきなが)真。成績はそこそこで運動神経抜群、眉目秀麗。努力家な可愛らしい女の子である。挨拶を済ませて、真には支度を済ませてもらう。真が支度を終えて、家族に「行ってきます」と行って家を出る。真の後に続くように家を出ると、綺羅と瑠璃が玄関先で待っていた。


「おはよ」

「おう、おはよ」


四人の幼馴染のうちの一人、灰簾綺羅。成績優秀で運動神経はそこそこ、眉目秀麗。俺の周り、美人やらかわいいやつやら多くないか?かくいう俺もよくそういうことを言われるのだが。まぁ、世辞という風に考えておこう。こいつらは、世辞ではなく本当に綺麗だしかわいい。そんな幼馴染たちと一緒に学校へ向かう。

それが俺にとって……俺たち幼馴染にとっての日常の始まりでもあった。しかし、その日常が数日後にはなくなることをこのときは、知りもしなかった。

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