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1 転生

無人島サバイバルがうまく書き進められないので、練習兼気晴らしに何本か書いていた物のうち書き溜めが多めの物を放流します。不定期に更新しますのでよろしくお願いいたします。

「……よし、やっと出来た」


 "完了"のボタンをクリックすると、「本当にこのキャラクターでよろしいですか?」というダイアログが表示された。もちろんOKを押す。


『新規セーブデータが作成されました』


 画面に表示されたのはそんな文字列。

 表示されているのは艶やかな銀髪ロングヘアが美しい、背が低めの女の子だ。

 露出高めですこしエッチだけど可愛らしい、フリルいっぱいのファンタジーな衣装を装備している。


 今までずっと作ってきた妖艶なお姉さんタイプに飽きたので、少し雰囲気を変えてみようとロリっぽい雰囲気に初挑戦した今回のキャラだったが……完成してみれば、目鼻立ちの整った完全な俺好みの美少女が、そこにいた。


「はあぁ~、やっとキャラクリが終わった……ゲームは明日からにするか」


 買ってきたばかりのゲームをプレイしたい気持ちは確かにある……が、さすがに疲れすぎた。

 なんせ三日間(・・・)もキャラクリエイト画面とにらめっこしていたのだから。

 今年で31になるおっさんの身体は一日中座っていられるようにできていない。

 あちこち固まっている関節をバキバキと音を立ててほぐしながら、パソコンの電源を落とした。

 折角の一週間ある連休も既に折り返しだ。いつもどおりの事とは言え非効率プレイここに極まれりって感じがする。

 布団に潜り込みながらスマホを取り出して、既に先行してプレイを初めているネトゲ仲間のグループチャットに文字を打ち込んだ。


『キャラクター出来たから、明日からログインする』

『お、やっと出来たか。今回も女キャラ?』

『ああ、かなり可愛くできたと思う』


 当然のように女キャラを作ると思われている。その通りなんだけど。

 俺はキャラクター作成が出来るゲームをやる時、オンライン・オフライン問わず毎回、女キャラを作って遊んでいる。

 ゲーム内での口調もロールプレイの一環として女性っぽく寄せてはいるが、別にネカマプレイヤーという訳じゃない。

 可愛い女の子キャラに可愛い衣装を着せるのが好きなのだ。そして可愛いキャラは、自分の事を「俺」とか言わない。それだけの事だ。


 女装願望とか、ネカマ願望とか、そういうのとは微妙に違うんだよな。

 胸を張って言い触らせる趣味じゃないとは思ってるけど、何ていうのかな……

 俺にとって、自分の作った可愛いキャラは小説や漫画の中のヒロインなのだ。

 作者が男だからといって、ヒロインに作者の言葉そのままで語らせはしないだろう。そんな感じだ。


『お前のキャラ毎回完成度高いからなあ、今回も期待できる』

『今作のグラフィックかなり良いからな、見るのが楽しみだわ』

『余裕ある時に俺のサブキャラの外見も作ってくれ』

『はっはっは、期待しといてくれ』


 胸を張れる趣味ではないとは言ったが、それでもキャラクターの造形や振る舞いと言った部分にはそれなりにこだわりがある。

 そのおかげでネタをネタと分かってくれる人々の中には、中身は男と公言しているにも関わらずキャラの可愛さを評価してくれる人も多い。

 こいつらもその一部なので、明日のお披露目が楽しみだ。


 皆の反応を見てからタイマーをセット、スマホをロックして目を瞑る。

 明日からのゲームスタートが楽しみだ。














 そして目が覚めた時、俺は宙に浮いていた。


「は?」


 いや、正確には宙に浮いているかどうかさえ分からない。

 視界に広がるのはやや明るめのグレーの世界で、右を向いても左を向いても、何もない。

 それどころか自分の手足や身体さえ認識できない。何だこれ?


「おはようございます」


 急に声が聞こえたのでそちらに意識を向けると、何だろう……なんて表現したらいいんだ?

 確かにそこには何かがあるが、形や色が認識できない、『何か』がいるとしか表現できない……そんな存在が宙に浮かんでいた。


「急に呼び出して驚いていると思います。けれど、これは私の世界にとっては必要なこと。どうか許して欲しい」


 声は女性のもので、鈴の鳴るような透き通った艶のある声だった。


(どういう事ですか……?)


 俺はその存在に尋ねたつもりだったが、声が出ているかどうか分からない。

 なんだ、俺の身体は今どうなっているんだ?

 というか、俺は家で寝ていたはずなのに、どうしてこんな事になっているんだろう。夢かな?


「私の世界は緩やかに滅びに向かっています。それを何とかするために、あなたを呼びました。あなたが存在する事そのものが、私の世界を救う鍵になります。どうか私の願いを聞き入れて、私の世界を救ってはくれませんか」


 私の世界って……異世界か何か?

 という事は、この存在はその世界の神様なのか?

 それにしたって、いきなり要求されるのが世界を救う事だなんて、いくらなんでも重すぎる。


(世界を救うって、そんな急に訳のわからないことを言われても無理ですよ!)


 俺の心の叫びに、『何か』は少しやわらかい空気を発した。

 あ、これ微笑んでる……のかな。何となくだけどそんな空気が伝わってくる。


「大丈夫です、あなたに世界の命運を背負ってもらうつもりはありません。あなたが私の世界に存在して気ままに行動した結果、巡り巡って滅びの因子が薄れて行く事が私には分かっています。あなたは、気ままに生きてくれればそれでいい」


 うーん、そうなのか。

 じゃあ別に構わないかな。この手のお約束だと、俺は元の世界じゃ多分死んでるんだろうし。

 元に戻りたいと言っても無理なら、多少便宜を図ってもらって異世界でやっていけるようにしてもらったほうが得だよな。


「あなたは死んでいませんよ。今ここにいるあなたは、元の世界にいるあなたのコピーのような存在です。元のあなたは明日、目覚ましと同時に起きて楽しみにしていたゲームを始めるはずです」


 うおっ、頭のなかで考えてただけだったのに聞こえたのか。

 あぶないあぶない、変なことを考えなくて良かった。


 そうか、俺、死んでなかったのか。それは何よりだけど、『何か』の言う事が正しければ結局この「俺」の行き先はないじゃん。

 断ったらこのまま消滅でもするのかな? それは嫌だ。


(わかりましたけど、ただ知らない世界に放り込まれるのも不安なので、何かこう……特別な能力、みたいなの貰えたりしないでしょうかね)


 頼まれて異世界に転生するんだし、ちょっとしたずる(チート)くらい許してほしいのが本音だ。

 できているかどうかは分からないが、伺うような視線を向けると『何か』はまたふっと柔らかい雰囲気になった。


「もちろんです。どのような形になるかは分かりませんが、あなたには力を授けます。ある程度、あなたの思うままの能力が得られる筈です」


 多分、笑顔で言ったんだろうな……と分かる優しげな声で、『何か』は告げた。

 良かった、ずる(チート)ありの世界か。これである程度お気楽に暮らしていけるだろう。

 喜んでいると、目の前のグレー空間の中に肌色の人形のような物が突然現れた。

 『何か』がそれに触れると、目の前の人形は少女の形になった。


(うおっ、なんだこれ!? ……結構可愛い!?)

「それと、あなたにはこれも授けましょう。――です。あなたの――になります。あなたの好きなようにされると良いでしょう。ひとまず、こちらであなたの望みに近い形にはしますが、あなたの好みの姿にすると良いでしょう」


 サラサラの黒髪が肩のあたりまで伸びている可愛らしい少女。背丈は150cmくらいで、胸はそこそこ。そこそこあるバストの下は普通にくびれていて、太っても痩せても居ないといった感じだ。

 身につけているのは黒くて布地の少ないシンプルな下着だけなので、眼のやり場に困る。

 急に現れた美少女にテンションが上がってしまい、『何か』がなんと言っていたかあまり聞いていなかったけれど、どうやらこの少女はずる(チート)の一環として俺に貰えるものらしい。


 じっと見つめていたが、多分女性……だろう『何か』の前で、半裸の女の子を見つめるのもちょっとな……。

 そう思って目を逸らした先にあったのは、沢山のスライドバーだった。


 スライドバーには「頭部サイズ」「肩サイズ」「腰サイズ」といった大きなカテゴリがあり、その中にツリー状に「目傾き」「目サイズ」といった詳細な項目が連なっている。

 更にその下には「虹彩サイズ」「虹彩カラー」「水晶体カラー」「眼球:強膜基礎カラー」といった更に細かい項目もある。


 今の自分には自らの手も足も認識できないのに、スライドバーを動かそうと思った場所は思った通りの数値まで動いた。

 「腰サイズ:幅」と書かれていたスライドバーが右に動くと同時に、目の前の少女の腰のサイズが大きくなる。


 ……うん、これキャラクリエイトツールだわ。








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