8話 登録
一回、コピペに失敗したので1週間遅れました。
作者はスマホのメモに書き込んだものをコピペしているので、失敗するとどこにも残らず1から書き直しとなります。
はい。ただいま俺は冒険者ギルドへと来ています。
「今日中に冒険者登録して来いよ。付き添いにアレスタを行かせるから」
という、バルトラの一言によりアレスタさんを連れ立ってこの真っ黒な建物を再び視界に収めています。
冒険者ギルドは先に申した通り、真っ黒な建物である。
さすがに、窓や室内、掲げられている看板までは黒くないが・・・。
ギルドの看板には、四足歩行の角付きの蜥蜴が上体を起こし、胸辺りを剣で刺し貫かれている勇ましい絵が描かれていた。
おそらく、これが冒険者ギルドを指し示すマークなのだろう。
この街は──もしかすると、この世界は──大体の店にマークがあり、どこに何があるかをわかり易くしている。
例えば、鍛冶屋ならば『火とハンマー』、食堂ならば『フライパンと包丁』といった具合に。
そうすると、この冒険者ギルドは『ドラゴンと剣』と認識しておこう。
◇◆◇
「よっ。セラ、ちょっと良いか?」
アレスタさんは、3つあるカウンターのうち、真ん中にあるカウンターに躊躇い無く進み、超軽い調子で座っている受付嬢さんに声を掛ける。
「あ、アレちゃん。大丈夫だよ。どうしたの?」
こっちも軽い調子で応えるセラと呼ばれた受付嬢さん。
くせっ毛のある茶髪に茶色い瞳が印象的な綺麗な女性である。
以前バルトラが言っていたように、支部は黒がイメージカラーのようで、職員さん達が着ている制服も黒を基調として所々に金のラインが入ったシンプルなものだった。
ただし、女性の職員さんの制服の胸元がやたらと大きく開いていたり、スカートも短かったりと。
何というか・・・エロい。
「こっちの娘の登録を頼みたいんだが」
「おお、可愛い娘!女性の冒険者は少ないからねえ、可愛い娘はウェルカムだよ〜。ほい、どうぞ」
「あ、ありがとうございます・・・」
面と向かって可愛いと言われるって案外照れるな・・・。
「そう言えば、セレーネって字書けるのか?」
「あ、そこは大丈夫ですよ」
何せ俺には全言語理解があるのだから。
翻訳ではない、理解なのである。
よって、問題無い。
ってのは、あまりに無策過ぎるので一応、バルトラの家の庭で書けるということは確認済みである。
渡された紙はファンタジーではお決まりの羊皮紙で品質も良いとは言えないようなものだったが、ペンの方は羽ペンのような形のもので、魔法で常にインクが満たされているためインク切れが起きないようになっているといったものだった。
そう、魔道具である。やはり、便利成分魔法は凄まじい。
紙には、氏名、出身地、戦闘スタイル、アピールポイントの4つの項目があり、氏名と戦闘スタイルの横に※が書かれている。
「あ、それ4項目だけど、実質記入必須なのは氏名と戦闘スタイルの2項目だけなんですよね」
「出身地とかはいらないんですか?」
「あった方がいいって感じかな。冒険者って割と頸に傷を持っている人が少なからずいるからね。変に探られたくないってことで書かない人も多いんだよ。
アピールポイントの方は、あったらパーティを組みやすくなるからその手助けってだけだからね。
それに、氏名の方も最悪偽名でも通るよ?」
「え?大丈夫なんですかそれ?」
「それも出身地と同じ理由だよ。でも、こっちは名前が無いとギルドカードがうまく作れないから必須項目に入っているんだよ」
なるほど、なるほど。
しかし、出身地を書かなくて良いのは助かったな。
ってか、書けって言われてたら何て書けば良かったんだよ・・・。
森?野生児かって、地球?論外だろ。誰に伝わんだよ。
いや、ロークスで良いか?あの森もロークスの領地内だろ、多分。
・・・・・・じゃあ、別に書いても良くね?
ってことで、出来上がったのがこちら
氏名 セレーネ
出身地 ロークス
戦闘スタイル 魔法・剣術
アピールポイント
アピールポイントは何を書けば良いのかよく分からなかったので空白。
今のところ、特にパーティを組む予定も無いので多分、問題無いだろう。
「これでいいですか?」
「ちょっと、見せてみな」
「え?」
セラさんに渡そうと差し出した申請用紙を横からヒョイと取り上げられる。
そして、いつの間にやら彼女の手の中にあるペンと紙。
「うん。問題無し!」
そして、そのままセラさんへと。
何がしたかったんだ?アレスタさんは。
「じゃあ、確認させてね。
氏名:セレーネ、出身地:ロークスの森、戦闘スタイル:魔法・剣術、アピールポイント:吸血鬼です
・・・・・・・・・・・・??」
「ちょ、え?アレスタさんの仕業ですか!?違いますよ、セラさん。俺は森で生まれてもないし、吸血鬼でもないですよ!」
何してくれちゃってるんですかね、この人は!?
「しっ、ここは話を合わせて。ここのギルドマスターには嘘は通じないんだ。変に疑われるよりここは素直に書いていた方が良い」
「ギルドマスター?そんな偉いさんが、わざわざ新しく加入した冒険者の情報を調べたりするんですか?」
「普通はしない。だが、ここのギルマスは普通じゃねぇんだ」
「ほぅ?妾がどう普通でないか聞かせて貰おうじゃないか」
「ヒッ!?ギルマス・・・!」
小さく悲鳴をあげたアレスタさんの視線の先に居たのは7〜10歳ぐらいの黒いローブに身を包んだ茶髪金目の可愛いらしい女の子だった。
「お主が件の吸血鬼じゃな?ふむふむ。まあ良いじゃろ。セラよ、手続きを進めよ。こやつの登録は妾が認めよう」
この人がギルドマスターか・・・。
いや、それより──
「のじゃロリって初めて見たな・・・」
カチン
「はわわわわ・・・ダメだよセレーネちゃん!ギルドマスターは自分の体格のことをひどく気にしてるから、『小さい』とか『ロリ』とかは禁句なんだよ!」
「ま、まあ、初犯じゃし、本当に知らなぬようじゃし今回は大目に見てやろうじゃないか。次は無いぞ?」
怖い怖い怖い!!
何あの人!?あれが殺気をぶつけられるって感覚?
いやぁ、異世界怖いです・・・。
「セ、セレーネちゃん!登録進めよ?ね?」
声を震わせながらも、できるだけ平静を装うとする健気なセラさん。
って、セラさんまで殺気の影響受けてるじゃん!?
うわぁ、セラさん何も悪いことしてないのに・・・
「そうですね。次は何をすればいいんですか?」
「立ち直り早っ!?さっきまで一緒に冷や汗流してたじゃん!」
「いやぁ、巻き添え喰らったセラさん見てたらすごい冷静になれましたよ」
「酷い!?」
ん?いや、そういう意味じゃないんだけどね。
ただ、可哀想だなあって思っただけだからね。
「えぇっと、次はこの魔法珠に手を置いてね。これは、個人の魔力波を読み取る魔法具でこれで読み取ったものを元にしてギルドカードを発行するんだよ」
説明ありがとうございます。
取り出されたのは門で兵士が持っていたような形の黒い水晶玉で、手を置くと何か──おそらく魔力──が吸い取られるような感覚がした。
「はい。OKだよ。発行まで少し時間がかかるからここのギルドのことを教えてあげるね」
「あ、お願いします。ん?アレスタさんとギルマスさんは?」
「あれ?どこいっちゃったんだろ?さっきまでやいのやいの言い合ってたのにね」
「まあ、不安しかないですが大丈夫でしょう。ってことで、説明お願いします」
「なんか冷たくない!?」
だって、Aランク冒険者とギルマスでしょ?
ある程度常識くらいあるでしょ。
◇◆◇
長いわ!何だよ説明で4時間半って!!
よくそれだけ話す内容があったな!
まあ、実際ためになる話だったからこれ以上は言わないけどね。
まとめるとこんな感じだ。
まず、最初の30分を使用したここのギルドの説明。
今俺がいるのが依頼の申請やクエストの受注、冒険者登録などを担当する『受付用窓口』、通称『姉ちゃんがいる所』である。とんでもない呼ばれ方だが、その名の通りここを担当するのは必ず女性なのだそうだ。
次に、受付用窓口から見て右手が魔物などの解体や鉱石などの売却を担当する『素材用窓口』、通称『オッサンのたまり場』である。もっと他に呼び方があったような気がするが、この街はそれで通っているらしい。
たまり場の向かい、つまり受付用窓口の左手側は『厨房兼カウンター』である。どうやら、本来2階に設置するはずだったのだが、ギルド建設に関わった人のミスでその設置するためのスペースが無くなり、仕方なく1階に来ているらしい。
1階で飯を購入し、2階に移動。2階で食事をし、食器を1階に返しに来る。とまあ、ひと手間多いわけだ。
2階はさっき言った通り、食事スペースになっている。
因みに、2階へ上がるための階段はカウンターのすぐ横にある。
3階はギルドマスターの仕事部屋と私室となっているらしい。なんとあのギルマス、ここで住み込みで働いているらしい。
3階に行くためには、受付嬢が案内した先にある転移の魔法陣を使わないと行けないらしい。
これは、戦闘が苦手なギルドマスターを守るためにギルド本部が設定したきまりなのだそうだ。
正直な所、あの人にこんなもの必要無いと思う。
これがこのロークスギルドの説明だった。
次に、3時間使用した『ギルド制度と冒険者心得』についてだ。
ギルドは基本ランク制となっており、受けられるクエストは自分のランクの1つ下から1つ上まで。
ランク分けとしては、
F、E、D、C、B、A、S、SS、EXとなっている。
現在の最高ランクはSSらしく、EXランクは過去に1人だけ存在したらしい。
ランク分けと言えば、魔物達にもランクが設定されていてF、E、Dまでは冒険者と一緒なのだが、次からは変化しC-、C、C+のようにマイナスやプラスが付く。そして、S+より上はSSでは無く災害や災厄と表されるようになるという。
このランク分けはC-ならばCランク冒険者が3人で1匹を、Cならば5人で1匹、C+ならば10人で1匹を相手にできるように設定されているらしい。
ランクを上げるには2つの方法があり、1つはランクごとにクエストを指定数こなすこと。
ただし、1つ下のランクのクエストならば2つで1つ分、同ランクなら1つ分、1つ上のランクならば2つ分といった措置がとられているため、低ランクのクエストだけで上がろうとするとかなりの数が必要になる。
もう1つは、上がりたいランクの冒険者を3人指名し、3対1で闘い勝つこと。しかも、受けてもらうにはその人が欲しい何かが必要になる。それもそうだ、そうでもしなければその人達にはなんのメリットも無いのだから。
・・・はっきり言って全然現実的じゃない。
第一、ランクが上の人達が手に入れれない物を下のランクの人が手に入れれるわけが無い。
それを個別にだ。無理だろう。
その旨をセラさんに言ってみた所・・・
「私も同感。何でこんな意味のわからない制度作ったんだろうね?」
俺に聞かないで下さい。
ギルド職員ですらこれなのだ。ギルド本部なら分かるのだろうか・・・?
冒険者の心得についてはひどく簡単に説明された。
冒険者同士の諍いにはギルドは関与しないとか、他人のスキルについては深く追求してはいけないとか、罪を犯すとギルドカードを剥奪されるとかそんな感じである。
残りの1時間はクエストについてだった。
クエストは
『採取』『護衛』『雑用』『討伐』に分かれる。
採取は鉱石や薬草などを採ってくるクエストで、簡単そうだというイメージが付きやすいが実際は、自生している場所や鉱石の形、色などをしっかり把握しておかないと1日中探すハメになるため初心者には難易度が高いらしい。
護衛は商人の馬車や船などの用心棒としてのクエスト。Sランク以上にもなると、要人や貴族、王族の護衛まで頼まれる事があるそうだ。
雑用は主に低ランク帯が受けるクエストで、報酬は少ないが半日もかからないクエストが多く、数をこなせばそれなりに食っていけるらしい。
討伐は冒険者の花形だ。魔物や魔獣などを倒し、その倒された状態に応じて報酬が出る。つまり、一括りに倒すと言っても、剣で串刺しにした死体と、剣で首を一太刀にした死体ではまるで値段が違うのだ。
その他に緊急依頼というCランク以上強制参加のクエストがあるが、まあそれはクエストによってピンからキリまであるのでその時が来たらということにしよう。
◇◆◇
「お疲れ様。久しぶりにフルで聞いてくれる人で楽しかったよ」
「え〜、これみんな聞いてるんじゃないんですか・・・」
「当然じゃん。冒険者は荒っぽい人が多いからね。4時間も立ち話なんて無理だよ〜」
「ぐぅ。言われてみればそうか。話聞いてる間にも活動出来ますもんねぇ」
「でもね、そうやって話を聞かない人に限って、ヘマをしたり命を落としたりするんだよ。だから聞いてて損は無いってわけ」
「は、はぁ・・・。じゃあ聞いてよかったのかな?」
「終わった?」
「うぉい!?ビックリするじゃないですか!いつから居たんですか!」
「冒険者のランク分けぐらいから?」
「中盤ですね・・・反応に困りますよ。って、それよりどこ行ってたんですか?」
「ちょっと、ギルマスに呼ばれてあの人の私室に。お前のことを洗いざらいゲロさせられたよ」
「個人情報!!」