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不幸の果ての異世界転移  作者: まつたけ
第1章 白き軍の侵食
20/20

19話 緊急依頼

先週は更新出来ずに申し訳ありませんでした。

来週は2話投稿して帳尻を合わせる予定なので、どうぞ宜しくお願いします。

「うきゃあ!!」


まただ。さっきから、やたらとこの白い猿が襲ってくる。恐らく少し前に戦ったあの猿の色違いか何かなんだろうが、あの時の猿達のように連携する素振りも見せず個々に飛び掛って来るだけだ。


木を伝ってこちらに飛び掛って来た白い猿を蹴り飛ばし、イロジオンのいる方角へと走る。進むにつれ猿の数が少しずつ多くなっている気がする。イロジオンは今1人だと予想を立てたのだが、早計過ぎたか?


「ウガアアア!!」


マーキングされた場所まであと少しと言う所で新たな刺客が現れた。そいつを一言で表すのなら、真っ白なゴリラだ。体長はおよそ3mオーバー。周りに白猿を侍らせている所を見るにどうやら白猿達のボス的な立ち位置らしい。その白ゴリラはこちらに向けて咆哮を上げ、自分の胸を強く叩き始めた。その行動に反応してか、侍らせていた白猿やまだ周りに潜んでいた白猿が一斉にこちらに向けて踏み込んで来る。


「ライラは猿の相手を頼む。俺はあのゴリラを引き付ける。猿の始末が終わり次第、こっちも手伝ってくれ」

「了解しました。ですが、私もこの数は・・・。出来れば、私の方に加勢をお願いしたいのですが・・・」


何やらライラがすごく情けない事を言っているようだが、気にしない。まあ、ヤバそうなら加勢するが、ライラだし大丈夫だろ。


「【威圧】!」


取り敢えず、威圧を発動させておき、自分にヘイトが来ないようにしておく。我ながら酷いと思いつつも、自分の事に集中するためにゴリラを見据える。


「ガアッ!!」


ゴリラは強く地面を蹴り、天高く舞い上がる。あれは前に戦った猿も使ってきた踵落としか?いや、あれはしなやかな体躯を持つ猿だから出来たことだ。あいつの攻撃で最も気を付けなければいけないのは、あの強靭な腕から繰り出される殴打だ。となると、この飛び上がった行動の意味は・・・。


「アームハンマーか!」


ゴリラは華麗に宙で回転し、遠心力を付け勢いそのまま地上から上を見上げていた俺目掛けて、その発達した剛腕を振り下ろした。そんな物で攻撃されたら、俺のこの華奢な身体は容易に潰されてしまうだろう。だが、普通に考えてそんな攻撃範囲の狭い攻撃当たる訳が無い。俺は後方へと飛び、その叩き潰しを躱す。


「なっ!?嘘だろ!?」


だが、やはりゴリラは普通じゃなかった。地面へと衝突したゴリラの攻撃は地面へと食い込んだ後、小規模な地震を引き起こした。その揺れに足を取られ、一瞬身動きが取れなくなってしまった。その隙を付いたゴリラはすぐさま腕を地面から引っこ抜き、俺との距離を詰め腕を振りかぶった。


「ちっ!【闇破炎焼弾(イービルフレア)】!」


俺は咄嗟に、球を象った黒炎をゴリラにぶつけ、吹っ飛ばすことで九死に一生を得る。俺の攻撃を正面から受けたゴリラはと言うと、黒炎に身体を包まれ、何とか消そうと地面を転げ回っていた。しかし悲しきかな。俺の黒炎の特性は不滅の炎。俺の意思無しでは消えることは無い。ゴリラはそのまま身体の動きが緩慢になり、遂には動かなくなってしまった。


《ユニークスキル【報酬】の効果により、エクストラスキル【鼓舞】を獲得しました。》


「・・・・・。」


黒炎怖っ!何だよアレ!1回着火したら最後、敵が灰になるまで燃え続けるなんてヤバすぎるだろ!現に今でも燃え続けてるし。もういいだろ、流石に。ってことで、黒炎を消火しライラの方へと顔を向ける。


「・・・・・。」


こっちもこっちで、ヤバイことになっていた。20匹ぐらいいた猿達全員の眉間に寸分違わず突き刺さる短刀。恐らく全員、脳をやられ即死したのだろう。それをやった犯人は当然ライラだ。大方、短刀を念動魔法(サイコキネシス)で飛ばしたのだろう。それならば、狙いが外れるハズも無い。


「エゲツねぇな・・・」

「・・・セレーネ様に言われたく無いです」


ひょっとしたら、ライラより俺の方がエグい殺し方をしてしまったのかも知れない。片やライラは眉間に短刀を突き立て一瞬で命を刈り取った。片や俺は苦しむゴリラに何をするでも無くただ見ていて、焼け死ぬのを待っていた。うん。俺の方が非道だわ。


「よし。先に進もうか」


惨い殺し方をしてしまったゴリラに内心謝りつつ、こんな所で時間を食っている場合じゃないと、イロジオン討伐に意識を向ける。


「・・・・・・ゴリラさん、可哀想でした」


ゴメンって!謝ってるんだから、それ以上俺に罪悪感を植え付け無いでくれよ!そんな目でゴリラの遺灰を見るんじゃない!


◇◆◇


走る。走る。走る。

イロジオンとか言う魔物の討伐をセレーネ達に任せ、妾は一秒でも速く組員達に魔物の迎撃準備を伝えるため、ロークスへと駆けていた。森の出口近くまではあの蛇に転移させてもらった。どうやら、あの蛇の転移は蛇自身が一度行った事のある場所にしか転移する、またはさせる事が出来無いらしい。それでも、自分の足で移動するよりは断然早く、相当の時間短縮が出来ていた。


ロークスの門が見える。しかし、ここで入街手続きなどやっておっては時間のロスになる。妾は門で一番人のいない入街口、つまり貴族専用の門へと迷うこと無く向かい、手続きも踏まず門を突破した。何やら後ろで喚いておるようじゃが、今はそのような事知ったことでは無い。お咎めならば、街を防衛した暁にいくらでも聞いてやる。それより、妾の今の速度をしっかり目で追えた門兵がいたとは驚きじゃ。これでも昔は雀の涙ほどの膂力をカバーして余りある速度で敵を斬り刻んだスピードアタッカーとして名を馳せておったのじゃが、衰えかのう?


ギルドが見えた。門を突破してすぐに妾は屋根へと飛び上がり、街の民達に被害が出ぬよう心掛けた。通常の街路を使っていないこともあり、5km近くある距離をおよそ1分で走破する事が出来た。妾は走る勢いそのままにギルドの扉に突っ込み、声を張り上げた。


「聞け、皆の者!今この街に大量の魔物が進軍しておる!猶予はそれほど無いが、ある程度装備を固める時間くらいはあるだろう!ギルドはこれよりランクD以上の組合員達に緊急依頼を出す!」


緊急依頼:魔物の軍勢の横行を阻止せよ

条件:ランクD以上の冒険者全員

成功条件:ロークスの防衛

失敗条件:ロークスの陥落

報酬:1人あたり金貨10枚

内容:ロークスの森より進軍する魔物の軍勢から街を防衛する。


「金貨10枚だと!?」

「何だこの馬鹿みたいな金額は!」


組員達の驚愕ももっともだろう。しかし、街1つの存亡がかかっているのだやる気を出してもらうにはこちらもこれぐらい出さずにはいられぬ。


「チェル二ィさん!ロークスの森にはセレーネが視察に行っていたハズだ!セレーネは大丈夫なのか!?」


アレスタか・・・。よほどあの吸血鬼を気にかけているようじゃ。普段のサバサバした性格とは違い今は子を案ずる母のように慈愛に充ちた表情をしておる。丸くなったものじゃな。


「案ずるな。あの吸血鬼なら心配無用じゃ。じゃが、奴はメドゥーサと共に指揮官の首を獲りに行ってしまったのじゃ」

「何で止めなかったんだ!」

「セレーネ達が戻った所で魔族の戯言など誰が聞くのじゃ?」


止めようと思えば止めれた。じゃが、セレーネが妾の代わりにギルドに戻ったとして状況が好転する事など何も無い。セレーネを魔族だと知っている者はセレーネの言葉に耳を貸さず、いざ魔物が来てみればお前が仕組んだのだろうと心無い言葉を浴びせるじゃろう。そして、ロークスは陥落。妾がイロジオンを討てたとしてバッドエンドは免れぬ。よって、これが最善策。グッドエンドを導く唯一の道筋。


「セレーネ達は勝てるのか?」

「知らぬ。妾はあ奴の戦っておる所を見た訳では無いからのう。じゃが、信じて待つというのも保護者の務めではないか?」


あ奴と言うのはセレーネの事では無い。敵将イロジオンの事じゃ。妾のスキルによって一目見た者の大体の戦力は測る事が出来る。セレーネもその口で情報を得た。非常に強力な魔法にスキル。どちらも1級品であることは確かじゃった。じゃが、もしイロジオンがそれを超える強力な切り札を持っていたとしたら、それをセレーネよりも上手く使いこなす事が出来たのならば。セレーネの苦戦は必至じゃ。出来ることなら、妾とて加勢したい。じゃが、このギルドを率いる者としてここを抜ける訳にはいかぬ。


「アレスタ、お主とメナルド、それにセリエナ、バルトラは低ランク帯の冒険者には手に余る魔物を率先して倒して貰いたい。お主にはセリエナとバルトラにこの事を伝えるため急ぎ自宅へと戻ってもらう」


この場にメナルド、セリエナ、バルトラはいない。それもそうじゃ。飛び込んだ先に都合良く主要人物がおることなどまず無い。アレスタには悪いが、セレーネの加勢に行くと言い出す前に先手を打たせてもらう。メナルドの所へは妾が行く。どうせ、領主館かマームの近くであろう。


「・・・でも、アタシはセレーネの・・・っ!」

「お主のわがままで街1つを棒に振る事など許容出来る訳が無かろう!その気があるのはお主だけでは無いのじゃぞ!」


案の定加勢に行くと言い出したアレスタに妾は殺気と共に強く言い放つ。強さには責任が伴う。強くなればなるほど、その強さを宛にする者は増える。アレスタは歳の割に強くなり過ぎた。戦において将軍が1人欠けるだけで戦力が大幅に削られ、それだけで戦に負けかねない。アレスタのやろうとしている事はまさにそれだ。若いとはいい事だ。愚かで経験不足で、何より素直だ。妾は歳を食い過ぎたのであろうか?少し考えが擦り切れがちじゃな。


「アレスタよ、戦況が落ち着き次第セレーネの下に駆けつける許可を出す。じゃから、早く片付けるためその力を存分に奮うことじゃ」


妾はそう、微笑み掛けてやった。妾は恐らく最後まで戦場を離れる事が出来ぬ。妾が行けなくとも仲の良さげなお主が行くならば、セレーネも少しは気が楽になるじゃろう。妾は何故か避けられておる気がするからのう。


「さて、アレスタよ。戦争と行こうか。物知らぬ民達を守る冒険者と狂気に染まった魔物達との戦争をのう」

「ああ。待ってろセレーネ。すぐに終わらせて、駆け付けてやるからな」


アレスタはそう言い、ギルドを飛び出した。

・・・不安じゃ。あ奴、セリエナとバルトラに参戦の言伝を忘れておるのではあるまいな。まあ、信じて待つというのも保護者の務めじゃしのう?

名前

種族 尾長猿(テールモンキー)

性別 個体による

年齢 ???

称号

状態 【洗脳】【眷属化】


『エクストラスキル』

【空歩】【身体強化】


イロジオンのスキルにより洗脳、眷属化をされた尾長猿。身体が白いのは眷属の証であり、通常の尾長猿より身体能力が高い。


名前

種族 大猿頭領(コングヘッド)

性別 個体による

年齢 ???

称号 【群れの長】【森の賢人】

状態 【洗脳】【眷属化】


『エクストラスキル』

【鼓舞】【空歩】【身体強化】【激震】


イロジオンのスキルにより洗脳、眷属化された大猿頭領。見た目は地球にいるゴリラとほとんど変わらない。相違点は少し牙が長い程度。身体が白いのは眷属の証で、元の色は黒。通常の大猿頭領より身体能力が高い。

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