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不幸の果ての異世界転移  作者: まつたけ
第1章 白き軍の侵食
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18話 特定

「何故だ・・・。何故貴様がその刀を持っている!」


何でって言われてもなぁ・・・。俺はルナから貰っただけだし?そもそもルナが何でくれたのかも知らないし?思えば俺、あいつのこと何にも知らねぇな・・・。


「それは我が同胞【謙虚】のオファニエルの武器であるぞ!数百年前、黒神に奪われ紛失してしまった刀!この世にもう1振りと無い契約宝具(アーティファクト)である!その効果は模造刀でも贋作でも再現不可能な【魔法切断】!何故貴様がぁぁぁ・・・!!」


1人で無茶苦茶盛り上がってるよ・・・。だから、知らないんだって。そのオファニエルとか言う奴の事も、黒神──多分ルナ──に盗られたってことも。俺には関係無いし、今の持ち主は俺だ。現にこの刀は俺と契約している。


「返せ!それはオファニエルが持ってこその武具である!低俗な魔物がおいそれと契約して良い代物では無い!」

「ごちゃごちゃうるせぇよ!低俗やら魔物抜かしやがって!この刀は俺を選んだんだ!返せと言われて、はいそうですかって、なる訳ねぇだろうが!」

「ほざけ!やはり魔物に交渉など不可能であったか!なれば、今ここで貴様を葬り去り取り返すのみである!」


何が交渉だよ。思いっきり恫喝じゃねぇか!

まったく・・・折角ルナがくれた刀だってのに盗られたとなっちゃあ面目が立たねぇよな!


「来いよクソ天使!その悪趣味な光る翼斬り落としてやるからよ!」

「セレーネ様ぁ・・・そんなに挑発しない方が・・・」


あ、ライラちゃん居たんだ。ずっと空気だっから忘れてたよ。


「何ですか!?その忘れてたみたいな顔は!?」

「魔物共がぁぁ!!駆逐してくれる!

出でよ!【聖盾・アイギス】【聖剣・フラガラッハ】!!」


ザフキエルの手元が一際輝くと、右手には蛇の文様が刻まれた白い盾、左手には刃から柄にかけて全てが白い長剣が出現する。


「びっくりするぐらい白を推して来るな・・・」


《【月光神の加護】の効果が発動されました。


個体名:ザフキエル(?)の完全武装を確認。


武具の説明を開示します。

【聖盾・アイギス】

古の白神アテナを模した防具。蛇の文様は【蛇王妃(メドゥーサ)】の首を表しており、【石化の邪眼】を無効化する。衝撃無効も付与されており、これは都を守護したアテナの偉業を表している。


【聖剣・フラガラッハ】

古の白神ルーを模した武具。

剣の射程範囲はルーの異名【長腕】を表すかの様に、切っ先から約1.5倍と非常に広い。また、【サウィルダーナハ】と呼ばれた事から魔術の補助や自動体力回復、自動装備修繕など様々な恩恵を齎す》


・・・ツッコミたい事が山ほどあるが、今はそうは言っている暇も無さそうだし、取り敢えずこの情報は頭の隅に置いておこうか。この情報を鵜呑みにする訳にはいかないし、間違っていたら目も当てられない。まずは、確認から行くとするか。


「ライラ、まずは石化の魔眼で奴の羽を固めてくれ」

「えっ!?何で知ってるんですか!?」

「まあ、何なくだ。俺の中でのメドゥーサのイメージがそうだったからな」

「了解しましたよ・・・」


ライラの瞳が黄色く輝く。恐らくこれが俺の受けた事の無かった石化の邪眼なのだろう。しかし、ザフキエルは一向に石化する気配が感じられない。


「ふっふっふ。無駄ですぞ?貴女の邪眼は吾輩には通用しませんぞ?」

「な、何で・・・!?」


まずは、1つ確証が取れた。次は・・・リジェネでも確認してみるか?


「上等だ、ライラ。次は俺がやる」


俺は魔力を練り上げ、純度を高めた黒炎を刀に集める。イメージするは鋭い突き技。一点に集中した鋭い突き技は時として盾をも砕く。


「【絶火深淵突(ゲヘナフレイム)】!!」

「っ!?これは!?」


地面を勢いよく蹴り、光速で飛来する俺に危機を感じたのか、咄嗟に盾を全面に突き出すザフキエル。何とか俺をその盾、アイギスで受け止める事に成功するが・・・


「それはあまりに愚策なんじゃないか?」

「何を抜かしておる。この盾には衝撃無効が付与されており・・・まさか!?始めから目的は!」


そう、てめぇの盾自体が衝撃無効を持っていたなら分からなかったが、てめぇの盾には衝撃無効が付与(・・)されているだけだ。付与されている以上、それは魔法。残るはその盾とこちらの刀、どちらの地金が硬いかだが・・・。こちらは超高温の炎を纏った刃、対して相手は付与された効果を消された硬い金属。結果は見えている。それが金属である以上、必ず融点が存在する。現にその盾、融解し始めているぜ?


「くぅ・・・!ここまでとは!」


俺の刺突は盾を貫き、鎧を貫き、そしてザフキエルを貫いた。しかし、鎧や盾は手応えがあったのだが、どうも本体に手応えが無く、まるで幻を斬ったかのような感覚だった。


《ユニークスキル【報酬】の効果が発動しました。エクストラスキル【衝撃無効】【邪眼耐性】を獲得しました。》


一応スキルは貰えたみたいだが、これは恐らく盾に付いていた魔法の効果だろう。つまり、奴のスキルは何一つゲット出来ていない。


ガシャンガシャン!!


「きゃっ!?」


ライラよ、可愛い悲鳴を上げるで無い。どうやら、奴の着ていた鎧だけが重力に引かれ落ちていったらしい。なるほど、あの通知の(?)は本物かどうか怪しいって意味だったのか。ふむふむ。


「セレーネ様!?1人で何か納得している所悪いですけど、落ちてますよ!?」


何を仰るライラさん。飛び上がったら落ちる、自然の法則じゃないか。まあ、自分でも良くこんなに飛べたなと思うよ?だって、ライラが小さく見えるもん。うーん・・・。転生したての頃もこんな事あったなぁ。確か黒炎を出して事なきを得たんだっけ。でもなぁ、あれ火事になるからなぁ。


ドォォォォォン!!


「セレーネ様!!ああ、セレーネ様が不幸な自己で・・・。南無」

「南無じゃねぇ!どこで知ったその言葉!?」


無事、墜落した俺に掛けられたのは、安否確認では無く死者の冥福を祈る語。生きとるっちゅーねん。


「ああ、こうしちゃ要られないんだった!ライラ、一旦俺はギルドに戻る!魔物の軍勢が攻めて来るらしい事を報告しに行かなきゃなんねぇ」

「待って下さい!行って何と報告するつもりですか!天使が真犯人だなんて言って信じる人なんて居ませんよ!ここは、1度老の所に戻って判断を仰ぎましょう?」

「くっ・・・。分かった。なら、とっとと戻るぞ!」


悔しいがその通りだ。アレスタさんが言っていたが、この世界の殆どが白神教だそうだ。その中にこんな情報を放り込んだら、異端審問にでも掛けられ処罰されかねない。


「んで、どうやって帰るんだ?ここには老の転移で来たんだぞ?まさか、歩いて帰るのか?」

「いえ、少々お待ち下さい」


ライラは目を閉じ、指揮者のように手を動かし始めた。


「何してるんだ?」

「老の所に置いておいたナイフで文字を書いているんです。それを見た老が変換の魔術で私達をあの隠れ家に戻してくれるんですよ」


ライラの説明を受けている間に、俺達の足元に魔法陣が出現し、瞬く間に隠れ家へと戻って来た。


「内容は聞いておる、ご苦労じゃったなセレーネ。ところで、お主に客人が来ておるぞ?」

「客?俺がここにいるって知ってる人何ていないハズ何だが・・・」

「ふん。あのクソ天使が出たと聞いたからわざわざ来てやったのに、もうお主が片し終わった後だとわのぅ。悶々とした気分じゃ」

「この声は・・・」


ギギギと音が聞こえてきそうなほど、ゆっくりと声がした方を向くと、案の定ギルドマスター、チェル二ィさんがそこには居た。仕事はどうしたと言いたい所だが、それよりも先にどうやってこの場所に来たんだと言う方が強い。


「それは、この蛇精霊がここに呼んだんじゃよ」

「そう、ワシが呼んだのじゃよ」


じゃよ、じゃよと非常にややこしい。まさかのキャラ被りである。


「失敬な。この凶悪そうな蛇と妾のどの辺りが同じじゃと言うのじゃ!」

「然り然り。この曲線美を理解せんひよっ子と同じにされては甚だ心外じゃ!」

「あっ・・・」

「何じゃ?」

「いや、今ひよっ子って・・・」


何だ?何でチェル二ィさんはそんな不思議そうな顔をしているんだ?


「この耄碌爺蛇に比べたら妾何ぞひよっ子もひよっ子。たかが、100年ちょっと生きた程度でこの蛇に文句を言うのは不可能じゃ」

「ふぉっふぉっふぉっ。お主のその他人の情報を覗き見る能力。なかなか興味深いのう」

「ふん・・・。お主の存在に比べたらまだまだじゃよ」


いやあ、バッチバチすねぇ。そんなにいがみ合って貰っちゃ、言いたい事も言えないんだが。


「おお!そうじゃった、そうじゃった。お主らが仕入れてきた情報の開示を求む。何やら急を要するとの事じゃったが?」


やっとか・・・。まあ、これ以上長引くようなら無理矢理でも会話を断ち切って話そうと思ってたから良いんだが・・・。


「えーっ、コホン。先程我らセレーネ、ライラの即席魔族パーティは白神の1柱ザフキエルの分身と遭遇、戦闘を致しました」

「分身じゃと?」

「確たる証拠はありませんが、奴が使用した契約宝具(アーティファクト)が奴の消滅と共に消滅したため、まだ生きていると愚考致しました」

「ふむ。続きを聞こうか」

「その戦闘中に聞き出した情報では、奴の目的は欲に塗れた人間の掃討。その手始めとしてこの近くの街ロークスを奴の因子【暴食】を埋め込んだ魔物【侵食者(イロジオン)】を筆頭に攻め滅ぼすとの事でした!」


さて、ここで俺達が取らねばならない行動は、次の3つ。1つが大将イロジオンの居場所の特定。これは、かなりの人数が必要になるのだが、2つ目の行動で人が必要になるため、俺達が引き続き事に当たる予定だ。2つ目がロークスの守りを固める。これが最も重要でたとえ、イロジオンを討伐したとしても、ロークスが落とされてはザフキエルの目的が達成されてしまう。ここに最高戦力を投入する事にはなるだろう。3つ目は不確定要素白い熊の捜索。これは1つ目と同時並行で出来なくも無いが、下手すればあの2体を同時に相手する事になる。だが、やはりこれにも戦力が割けないのも現実。ベストは白熊もロークス侵攻に加わってくれている事だが、そう上手く事が運ぶとも思えない。さて、チェル二ィさんはどう動くか。


「ふむ。面倒じゃのう。そうじゃのう、良し。お主の案で行こうか。イロジオン捜索はお主ら2人。ロークス防衛戦はギルドの連中に任せる。そして、白熊及び生存しておるザフキエルの捜索は妾で当たろう」

「ええっ!?それ考えるのが面倒なだけじゃ無いですよね!?」

「む?お主も遂に考えている事が分かるようになったのか?」

「その通りだったよ畜生!!」


《【月光神の加護】の効果発動されました。

発動内容は以下の通りです。

個体名:ザフキエルの魔力探知》


ん?これは・・・。頭の中に突如流れて来た地図と白い点。1つは恐らくこの森の中に、もう1つはここから遠く離れた何処かも分からない島。


あ、そうか。ザフキエルは自分の因子をイロジオンに入れて精神を壊したとか言ってたな。つまり、そのイロジオンの中にはザフキエルの魔力が入ってるわけだ。


「ふはははは・・・!!みいつけた!」

「えっ!?セレーネ様!?えっ!?」

「行くぞライラ!老、森の中層東寄りの地点に転移させてくれ」

「何があったか知らんが、そこの小娘が止めないってことは大して問題では無いと言うことであろう。では、せいぜい頑張って来るが良い。【神魔転移陣(ギュルヴィ)】!」


何もいきなり敵陣のど真ん中に突っ込む気は無い。俺が転移を頼んだのはその敵陣から約20分の位置。チェル二ィさんは常に俺の考えている事を読む様にしている節があるため、今の俺の考えも分かってくれている所だろう。ザフキエルがもうこの地にいない所を考えると既に進軍命令を出したと見るべきだ。ならば、チェル二ィさんは即座にギルドへと戻り、冒険者達を集め守りを固めなければならない。そして俺達は、少しでも被害を減らすために大将首を取らねばならない。


「恐らく今、イロジオンは1人だ。周りに味方が居ない今の内に叩かねば、こんなチャンスそうそう回って来ないぞ?」


転移が完了するや否や、俺は手っ取り早くライラを担ぎ目的地へと走り出した。

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