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不幸の果ての異世界転移  作者: まつたけ
第1章 白き軍の侵食
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17話 天使襲来

まったく・・・酷い目にあった。

模擬戦に真剣持ち出す俺も俺だが、わざわざ麻痺毒を塗ったナイフを飛ばしてくるライラもライラだ。まだ身体がプルプルする。


「セレーネ様が怖いですぅ・・・」


怖いも何もこうなった原因は誰かと問うてやりたい。そもそも・・・あれ?模擬戦しようって言い出したの俺じゃん。ハハッ・・・元凶俺じゃん。


「良し、捜索に行こうか」

「お主、まだ震えが治まっておらんぞ?」

「・・・・・・。」


勇んで出掛けようとした所を老に水を差される。

そこは、黙って行かせて欲しかった・・・。


「ライラ、解毒草を持ってきてやりなさい」


何だと・・・。解毒草?ちょっと待て、それってアレだよな。毒状態を治すアレだよな。さっき受けたのは麻痺毒。つまり、毒だ。老が取りに行かせた所からも効果があるものなんだろうと想像が付く。


「何で、そんな物があるならとっとと出さなかった!!」

「いやぁ、お主があまりにも健気に頑張るのでな。つい、このままにしておいた方が良いのではないかと思ってしもうた次第じゃ」

「良い訳ねぇだろ!誰が好き好んで痺れていたいんと思うんだよ!」

「お爺ちゃん持ってきましたよ!解毒草です」


ライラの手には先端にブルーベリーのような粒状の物が数粒付いた花があった。しかし、老はそれを見て態とらしく疲れたように息を吐き、


「・・・・・・ライラよ。そのまま持ってきてどうする。解毒草などそのままでは固うて噛めたもんじゃ無いじゃろう。すり潰した物を持ってくるんじゃ」

「す、すみません!」

「嫌がらせかこの野郎!爺、態と間違えるように言いやがったな!」

「【圧縮(プレッシャー)】!!」


ぶしゅううう・・・!!


「ごぼっ!?ゲホッゲホッ!」


ライラぁ!俺が口を開けている隙に解毒草を押し潰して果汁を口に流し込むんじゃねえ!

それから、何でそんなやりきった感出してんだよ!殺す気か!あ、麻痺が消えた・・・。


「ライラぁ!」

「ひえええ!何でですかぁ!」

「これはワシは関係無いぞい・・・」


◇◆◇


さてと、気を取り直して改めて捜索に行こうか。

だが、やはりこの森を虱潰しに探すのは骨だ。


「取り敢えず、最奥から調べてみてはどうじゃ?お主の実力ならば問題無いじゃろうて」

「だが、俺は自分で言うのもなんだが方向音痴だぞ?辿り着くのに相当時間が掛かっちまう」

「その事については心配無用じゃ。ワシは高位の精霊じゃからな。転移魔法ぐらい造作も無い」

「・・・それで大将首捕りに行けないの?」

「無理じゃな。何せこの魔法は1度行った事のある場所にしか行けぬ。それに、もし行けたとしても敵軍のど真ん中に2人だけで行くなど自殺行為させる訳無いじゃろう」


老にしては珍しく正論だ。それに珍しく俺たちの身の心配をしてくれている。少し見直したかも知れない。


「お主、今失礼な事を考えておらんか?」


どうやらこの世界の生物は総じて心を読む能力に長けているらしい。まったくプライバシーもへったくれも無い。


「セレーネ様は顔に出過ぎですよぅ・・・」

「そんなにか?」

「ハァ・・・自覚無しか。まあ、良い。では、始めるぞ」


そう言うと、老の目が紅く光り、俺たち2人の下に魔法陣が形成される。


「おう、唐突だな・・・」

「では、頼んだぞ。・・・【神魔転移陣(ギュルヴィ)】!!」


うぉっと。周りの景色が全く違うな。精霊も居なければ、葉の緑の具合もどこか異なって見える。


「ここが最奥か・・・」

「っ!?セレーネ様、魔物です!」


ミシミシと枝が音を立て、何かが来たことを教えてくれる。音の正体は黒い猿だった。ただ、一匹では無く7匹ほどの小さな群れの様だ。長い尻尾を持ち、その尻尾で枝に掴まった個体もいる。


正体は小隊を組んだ猿だった様だ・・・。

・・・何でもない、忘れてくれ。


「「うきゃああああ!!」」

「うるせぇよ!」

「いちいち返答しなくても良いですよ!」


刀を抜き応戦の体制を取る。森の中であるため、やはり黒炎は使うことが出来ない。難儀だ・・・。

あっ・・・。そうだ、あれがあったよ。


「うきゃ!?」

「セレーネさん、何を・・・?」

「ふっ、スキル【威圧】だよ。徒党を組んでいる程個々の力などたかが知れている」


【威圧】は自身の魔力を周囲に飛ばして敵を牽制するスキルだ。だが、そこに圧倒的実力差があればそれはもう牽制では無く昏倒になる。要するに、某海賊王を目指す作品の覇〇色の〇気の様なものである。


「およ?一匹だけ耐えなさったか」

「あれが群れの長だって事ですかね」

「うきゃああああ!!!」

「激おこじゃねぇか!」


そりゃそうだ。群れの長が仲間を突如倒されて怒らないわけが無い。ボス猿は一際大きく鳴くと、筋肉を増幅させ1.5倍くらいに膨れ上がった。


「うわぁ、俺たちより大きくなっちゃって・・・」

「呑気な事言ってないで迎撃体制取って下さいよ!」


ボス猿の方へ改めて目を向けると奴は、三角飛びの要領で木々を登っていき、俺たちの頭上付近で踵落としを繰り出して来た。


「退避!!」

「あわわわわ・・・」


あの高さから繰り出される踵落としだ。下手に受けるより避けて自傷して貰った方が賢いだろう。


ズドーーーン!


土煙が起こり、地面が少し揺れた。

何て破壊力だ!?だが、あの威力だ、足への負担も尋常じゃないだろう。


「ライラ!仕留めろ!」

「はいです!【念道力・射出痺れ牙】!」


俺を苦しめたナイフがボス猿へと殺到する。

ドスドスと鈍い音が鳴り、その後何かが音を立てて倒れた。当然、ボス猿である。


「なんて事無かったな」

「いやいやセレーネさん!何終わった感出しているんですか!?周りの猿達はまだ気絶しているだけなんですよ!」

「そう言えばそうだな」


俺とライラで目覚める前に猿を順に止めを刺して回った。幸い、どの個体も目を覚ますこと無く眠ったまま逝けたと思う。


《ユニークスキル【報酬】の効果により、エクストラスキル【空歩】【身体強化】を獲得しました。》


スキルも無事ゲットだ。しかし、思い返すと初めてバルトラと出会った時のあの熊を倒した時は何でスキルを入手出来なかったのだろうか・・・。

考えられる事としてはあの熊がスキルを持っていなかったって事だが・・・。いや、思いっきりスキル使ってたろ・・・。ま、分からん物はいくら考えても分からんのだ、考えるだけ無駄だろう。


「さて、行くか」

「どっちに行きます?」

「うーん、取り敢えず時計回りでどうだ?」

「了解です」


◇◆◇


あれから数時間辺りを捜索したが、最初の猿の襲撃が嘘のようにまるで何も起きない。


「何も無いですねぇ・・・」

「普段からこんなにも魔物が居ないものなのか?」

「私は最奥に行った事が無いから分かりませんが、これだけ歩けば浅い所でも数体は出会えますよ?」


つまり異常って事だな。生活していた跡の様な物は所々に見れたのだが、どうにもその魔物や魔獣が見当たらない。


「あっ・・・」

「どうしました?」

「1度川の方へ行ってみないか?最初に斑点が発見されたって言うあの川に」

「そうですね。いつまでもここで彷徨っていても謎が深まるばかりです」

「んで、川ってどっちだ?」

「・・・あっちですね。っ!?何か来ます!」

「っ!?この気配は・・・光魔法か?」


突如として現れた強大な光の気配。

それはあまりに神聖でしかしどこか────


───くすんで穢れていた。


「おや?おやおや?まだこの近辺に支配されていない魔物がいたのですかな?」


これでもかと言うくらいに白光を放った飛来物は俺たちの頭上で停止し、そう宣った。


「誰が魔物だ、誰が!何もんだテメエ!」

「ふっふふふ、野蛮ですねぇ。吠えることしか能のない低脳には魔物の称号がお似合いですよ。忌々しい吸血鬼風情が」

「聞かれた事にも碌に答える事も出来ねぇ奴に低脳などと言われる筋合いは無いと思うが?」

「おっと、これは失礼。魔物なりの下らない自尊心を傷つけてしまいましたかな。では、改めて。私の名はザフキエル。【七つの美徳】の1柱、司るは【忍耐】で御座います。以後お見知りおきを魔物諸君」


そう言うと同時、放っていた白光が消え中から純白の鎧を纏ったちょび髭の下卑た笑みを湛えた白髪オールバックのオッサンが現れた。その背中には顔とは不釣り合いの白い翼が生えており、未だに輝きを放っている。


「なるほど。テメエ【白神】か・・・。だいたい読めたぜ。テメエがこの森の騒動の主犯だろ!」


ルナの言っていた『大罪獣を生み出した犯人。白神』。あくまでこれは推測だが、【大罪獣】【七つの美徳】【白神】【忍耐】この全てを繋ぎ合わせると、【七つの美徳から生まれたのが大罪獣、即ち七つの大罪】。ってことは、忍耐の反対は──あれ?傲慢、怠惰以外の全てに該当しねぇか?


「ふっふふふ。貴女のその低脳でもその程度のことは理解出来る様ですね。では、私の計画をお教え致しましょうか。私がこの森で捕獲した小さき魔物。そこに私の持つ負の要素【暴食】を組み込む事により、小さきその魔物は自我を失う。ですが、生みの親たる私には従順です。それに都合良くその魔物は進化しましてねぇ。ついでですから、【イロジオン】と言う名前も授けてあげましたしねぇ」


【イロジオン】、確か意味は『侵す』とかだったよな。つまり【侵略者】ってことか?


「んで?そのイロジオンを使って何しようとしてんだよ。従順な下僕を作ってはい終わりじゃねぇだろ?」

「当然です。まずは手始めに近くの街を潰して貰いましょうかねぇ」

「っ!?そんな事して何になる・・・!」

「天誅ですよ。欲に塗れた人間(まもの)に対するねぇ」


こいつ・・・!何が白神だよ!こいつの方が真っ黒じゃねぇか!ルナと立場交代しやがれ!


「まったく天使が聞いて呆れる。そんな事聞いちまったらここからテメエを返す訳には行かねぇわな!」

「良く分かりませんが、貴方は個人的に嫌いです!」


俺は刀を抜き、ライラは髪を蛇へと変化させ、無数のナイフを宙に浮かせる。


「ふっふふふ。貴女達魔物は知らないでしょうが、貴女達には私に勝てない理由がある。至極単純な理由です。【光魔法】、私達天使や勇者が得意とする魔法であるこれは魔物、魔族、魔獣、悪魔に圧倒的なまでの殲滅力を有する」


ん?光魔法?俺、魔族だけど持ってるんだけど・・・。


「上位の攻撃系魔法ならば掠っただけでも即死級の威力です。そして、それを私は・・・ノータイムで放てる。滅しなさい【光槍天雨(ライトニングシャワー)】!!」


下向きの光の槍が俺たち目掛けて降下してくる。なるほど、槍が降るとはよく言った物だ。


「ライラ、俺思うんだわ」

「こんな時に何ですか!?」


刀を横に振る。ただそれだけの行動。だが、それで十分。俺の刀【月光牙】の効果は魔法を斬り裂く。その効果は俺の想像の通りに空を覆っていた槍を全て斬り裂いた。


「俺、あいつに勝てるわ」

「な、何ですか!何なんですか貴女は!」

「ただの吸血鬼の美少女だ。覚えてろクソ野郎」

「魔物風情がぁぁぁぁ!!!」

名前

種族 尾長猿(テールモンキー)

性別 個体による

年齢 個体による

称号 【集団行動】【器用】


《エクストラスキル》

【身体強化】【空歩】


名前

種族 尾長猿王(テールコング)

性別 個体による

年齢 個体による

称号 【集団行動】【器用】【統率者】【仲間思い】


《エクストラスキル》

【身体強化】【空歩】【縮地】


名前 ザフキエル

種族 大天使

性別 男

年齢 ???

称号 【白神】【忍耐の天使】【七つの美徳】


《ユニークスキル》

【???】【???】


《エクストラスキル》

【???】【???】【???】


《属性魔法》

【光属性魔法】

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