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不幸の果ての異世界転移  作者: まつたけ
第1章 白き軍の侵食
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12話 買物

会議が終わると同時に、鈴のようなものを鳴らし、ギルド職員を呼びつけるチェル二ィさん。

チェル二ィさんはそのギルド職員に一言二言指示を出すと、職員さんは了承の旨を伝え退室し、5分とかからず帰ってくる。

その手にはトレイを抱えており、そのトレイの上には布製の袋が乗せられていた。

どうやらあれが支度金らしい。


「これが支度金じゃ。まあ、何を買えば良いかは、アレスタにでも聞くがよい」


そう言いながら差し出された袋の中身を確認する。

総額、銀貨20枚。薬草採取が銅貨10枚だったことを考えると破格の値段だろう。


「あんた今、破格の値段だとか思ったろ?」

「当たりじゃ」

「何で貴女が答えるんですか・・・」

「言っとくけど、これはかなり少ないぞ。

最低でも金貨数枚は下らないハズだ。それを銀貨だなんて・・・。一体どういうつもりだ」


そうなのか?だが、俺は相場を知らない。

アレスタさんの言う通りだとするなら、俺もチェル二ィさんを問い詰めないといけないが・・・。

真相は如何に?


「適切な値段設定じゃよ。お主は偵察依頼を勘違いしておる。じゃが、これはお主の時と違い、不確定要素を多分に含んでおる。居るかどうかも分からぬ敵に対してこれ以上は払えぬわ」

「それにしても、少なすぎるって!

アタシの時と比べていくら何でもこれは無いでしょ」

「む?・・・ふっ、そうじゃったな。

お主の時は確かに破格の報酬じゃったのう。

じゃが、お主のあれは特例中の特例。

何処に偵察依頼を受けたその日に元凶を探し出し、剰えその元凶を単騎で討ち滅ぼす者が居るか!」


えぇ・・・。どう曲解したらそうなるんだよ。

偵察って現状を詳しく把握して、情報を持って帰ってくるのが仕事だろう?それを・・・。

改めて、アレスタさんとんでもないね。


「事件の早期解決、A-ランクの魔物の撃破、最貢献者としての街からの報奨金及び、謝礼金。

その他諸々合わせたら、当然相応の額にはなるじゃろう」


後で聞いた話だが、どうやらB+ランク以上の魔物を倒した場合、ギルド側からその魔物に見合った金額が贈られるらしい。

ちなみに、A-ランクは金貨5枚なんだとか。


「全額でいくらになったんですか?」

「たしか、金貨30枚はあったな。けど、何だ・・・偵察依頼は絶好の収入源だと思っていたんだが違ったのか・・・」


そりゃ、1回の依頼はで金貨30枚も稼げたら美味しいだろうな。

しかし、A-ランクを1人でか・・・。

たしか、普通ならAランク冒険者が3人必要なんだっけ?


「まったく・・・。とんだ言いがかりじゃよ。

もう良い。今日1日は準備に充て、翌日からは任務を開始するのじゃぞ」

「ぐぅ・・・。へいへい、行ってきますよ・・・」


チェル二ィさんの傲岸不遜ぶりは気にしたら負けだと悟ることにした。


◇◆◇


さて、準備をするにしても、何をすればいいやら全く分からない。

ただし、それは俺1人だったらの話だ。


「まずは背嚢だな。どれだけ薬を買い込んでも、持ち運べなきゃ意味が無いからな。これは必須だ」

「俺、収納系のスキル持ってるんですけど・・・」

「・・・・・・そうか。だが、どちらにせよ自分の情報を秘匿するって意味では買っておいた方がいいと思うぞ。それと、スキルや魔法は必要に駆られるまでは無闇に口外するんじゃねぇぞ。ああ、あと種族もな」

「どの口がそれを言ってるんですか・・・」


やいのやいのと言いながらも、やはり先輩冒険者だというだけあり、為になることをたくさん教えてくれる。

ただ、アレスタさんの口から種族については伏せておけなどという言葉が出てくるのだけは、どうにも納得出来ない。


それから俺たちは、様々な店を回り、必要なものを揃えた。

背嚢から始まり、非常食としての干し肉や多少の調味料、魔力を多少回復させるマナポーション、ミノムシ型の寝袋、そして料理も出来ないのに調理器具を購入した。


「いや、何で調理器具が必要なんですか・・・」

「旅路で料理人に出会えるかも知れないだろ?

それに、料理が出来るようになれば、道中も美味い物が食えるぞ」

「今じゃなくて良いですよね!何で、限られた資金の中で今これを買ったんですか!買った俺も俺ですけど!」

「ああ・・・。確かに?」

「ちくせう」


そして、最後に訪れたのがこの店。


「おお・・・ここが魔道具専門店か」


大通りの一角にある周りの店とまるで変わらない店構え、扱う商品を示す看板には火の点いていない、しかし周囲を明るく照らすランタンの絵が描かれていた。


「何ていうか・・・普通ですね」

「当たり前だろ。迷宮都市の魔道具屋じゃあるまいし、他の街にもある極一般的な店なんだから」


どうやら、この店はどの街にも展開しているチェーン店の1つで、言葉から察するにその迷宮都市とやらが本店だろう。


「ここでは何を買うんですか?」

「前にも説明した【無限水筒】って魔道具だ。

今は金が少ないから大それた物は買えないが、まあ水限定の物なら買えるだろう。これだ」


アレスタさんが指差したのは、地球にもあった魔法瓶のような形をした青色の筒だった。


「使い方としてはまず蓋を外す。それから、外した蓋の方に水を溢れるくらいまで入れる。その後、蓋を閉める」

「それって、水が零れちゃうんじゃないですか?」

「そうなっちまったら、商品として成立しねぇだろうが。まあ、上手いこと出来てるんだろう、零れるどころか水自体が無くなっちまう」


飲めねぇじゃん。

いや、そんな訳無いんだろうけども。


「水が無くなったのが確認出来たら、一度蓋を閉めて数分放置。そしたら、あら不思議。いくら、飲んでも無くならない水筒の完成でーす」


後半、急に感情の抑揚が無くなるアレスタさん。

しかし、これだけの手順で水源の確保が出来るのか。


「そりゃ皆こぞって買うだろうな・・・・・・

ゲッ!銀貨10枚!?」

「銀貨10枚と言えば、あの門兵の給料1ヶ月分だぜ?さすがに給料1ヶ月分抛ってまでこれを買おうとは思わねぇだろ」

「1ヶ月分!?じゃあ俺は今日だけであの門兵の2ヶ月分を貰ったって事ですか?」

「そうなる。冒険者ってのは、危険は多いがそんじょそこらの仕事よりよっぽど儲かるからな」


俺は、あの給料泥棒と罵られた門兵さんにそっと手を合わせ無限水筒を購入した。


「んじゃまあ、今日のところは帰るか。

あの白熊のことは一応、親父たちに話しておきたいし」

「そうですね。あの白熊との戦いは精神的に疲れました」

「今日はゆっくり休め。んで、明日からは森だ。

出来るだけ出発は早い方が良い。そうだな、日の出と同時にくらいが良いだろう」

「早くに出発した方が良いんですか?」

「ああ。護衛依頼を受ける時にはだいたい早朝までに準備を済ませておくもんだ。商人の朝は早いんでな。今回はその練習だと思え」

「了解です!」


◇◆◇


翌朝、俺はアレスタさんたち一家に見送られて出発した。ただし、予定より大分遅れて。

理由は至極単純、俺の寝坊である。

物凄い勢いで叩き起されましたよ。ハイ。


「ふわぁ・・・、眠い」


おおきな欠伸をし、頭を掻きながら森を目指す。

そこで、ふと思った。


「これって、どれくらい奥に行けば良いんだろう・・・」


普通に考えれば、白熊と遭遇した場所の辺りだろう。

しかし、ヤツは俺たちに尻を向けた黒熊と睨み合うように対峙していた。

つまり、奥から来た可能性が高い。


「深入りは厳禁だったよなぁ。でも、偵察が尻込みしてたら持ち帰れる情報も持ち帰れないし・・・」


そう呟くと俺は決心を固め、俺は森の奥部へと歩を進めた。

ミノムシ型の寝袋とは、真ん中にあるファスナーを下ろし中に入るアレの事です。顔だけが出てるヤツです。

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