1話 序章
「あなたに拒否権はありません」
目の前の少女は腕を大きく広げ人権を否定する。
なんだこの状況・・・。その前にどうしてこうなった?
そう、あれは数十分前に遡る。
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俺の名前は『月本 光牙』。普通の人より少しだけ運が悪い普通の高校生だ。今日もいつも通り学校へ行き、いつも通り授業を聞き流し、いつも通り家に帰る。
・・・・・・ハズだった。
異変が起こったのは、1時限目の前の時間──所謂HRの時間だった。
「あれ?担任遅くない?」
そう発したのは、ウマが合いよく話すことがある
『桐生 義人』だ。ウチの担任は時間、期限などをきっちり守るタイプの人でHR開始のチャイムと同時に教室に入ってきて出欠確認を行い、遅刻者にはプリントという名の罰を課す。そういう人だ。
「朝の会議が長引いているだけじゃないのか?」
俺はそう聞いてみるが、義人は、
「でも、あの先生『時間に遅れるくらいなら会議なんて抜け出してやる!』って言ってたよ?」
「え?あれって笑いをとるために言ったんじゃ・・・」
「いや。実際抜けて来てるらしいよ。この前学年主任に説教喰らっている所見ちゃったし・・・」
・・・時間云々よりも常識考えようぜ?正直そこまでの時間馬鹿だとは知らなかったよ・・・。
でも、そこまでの時間馬鹿ならチャイムが鳴ってから30分も経っているのにこの場に居ないのは少し気になるっちゃぁ、気になるな。
タッタッタッタッ・・・ガラガラ。
あ。来たか?
「みんなゴメン!何でか分かんないけど体育教師数名に見張られて抜け出せなかった!!」
・・・うん。うるさい。というか、何でか分かんないってその理由は明らかに毎回会議の途中で抜け出してるからだよね!?
朝から大声で教室に入ってきた人物こそが、俺たちの担任『刻境 莉桜』だ。
刻境は20代中頃だが童顔で男女共に人気のある数学教師だ。まあ、数学の方は刻境と違って男女共にウケは悪いのだが。
「時間が無いからとっとと出欠確に──」
バン!
刻境が教室に入り切るとほぼ同時に扉が凄まじい音を立てて閉まった。
『え?』
俺を含めた教室に居た全員が素っ頓狂な声をあげる。
しかしそれは、扉が急に閉まったからでは無い。
その直後に床一面に白い幾何学模様──魔法陣だと思われる──が現れたからだ。そしてその幾何学模様は眩いばかりの光を放ち、
────俺以外の生徒31名と刻境先生を幻のように消し去った。
・・・・・・この光景が何かは大体察しがつく。大方ラノベなどによくある『勇者召喚』ってやつだろう。しかし、これが『勇者召喚』なのなら疑問が浮かぶ。
「なんで俺だけ残されてるの?」
まさか、ココでも悪運発揮!?
イヤイヤイヤ勘弁して下さいよ!別に勇者になりたかったわけじゃないけど、どうせなら皆と一緒に飛ばしてくれないかねぇ!急に生徒達が消えて俺1人だけ残ってたら後々面倒になること確定でしょ!?
警察「他の生徒が何処へ消えたか知らないか?」
俺「いやぁ、急に魔法陣がですねぇ・・・」
警察「君は何を言ってるんだ?」
ハァ・・・なんで俺がこんな目に。
・・・・・・・・・ん?
なんて憂鬱な気持ちに浸っていると俺の足元にも先程と同じような幾何学模様が出現した。
「なんか黒くね?っていうか禍々しい?」
そして、先程と同じく光を放ち、俺の意識を刈り取り、教室にいる人間は0となったのだった。
1度、投稿していた者を一旦削除して出直してきました。
20数話まで修正、投稿の流れになると思いますが、ご容赦下さい。