「転校生」
「昨日未明、〇〇県を中心に発生していた連続通り魔事件で指定手配されていた犯人が原因不明の遺体で見つかりました。死因は感電死ですが近くに電柱などは無くーー」
「んんん.....」
朝のニュース番組の報道で目が覚める。
「朝か.....いま...何時だ....?」
時計見ると、ちょうど午前8時を指したところだ。
「まだ8時か.........うぁぁぁぁぁぁぁ!!!???」
ベッドから飛び起きパジャマを脱ぎ捨てる。
制服の袖に腕を通しボタンを留めつつ1階へと駆け下りた。
「母さん!!どうして起こしてくれなかったんだよ!!今日から学校って言っただろ!?」
「何度も声かけたわよー。それなのにアンタが起きてこないから...」
「叩き起こしてくれよー!!あ、ご飯要らないから!!行ってきまーす!!」
夏瀬明希はカバンを掴み勢いよく家を出た。
「ヤバいヤバい...新学期早々遅刻したら怒られるよ!!」
全速力で学校へと向かう。今日から新学期。通いなれた通学路にはちょうど見頃の桜が花を咲かせているが遅刻寸前の明希の目に桜は映っていない。
少し走った先に女子が見える。
「おー!おはよー!明希!!」
追い越しざまに声をかけられ、足を止める。
「葵!?」
この女の子、いわゆる世間的に美少女と呼ばれる女の子が、明希の1つ上の幼馴染み。冬空葵である。
「お前こんなとこで何やってんだよ!!遅刻するぞ!?今日高校の入学式だろ!?」
「うん。明希は中学3年生だっけ?受験生だね!!」
明希の急ぎ口調に、葵は淡々と答える。
「そうだよ...ってかそんなことより!!本当に遅刻するぞ!?葵だって高校初の登校日が遅刻じゃいい笑い者だろ!!」
「あー...そんなに急いでいる明希君に、お姉さんが素晴らしいことを教えてあげよう。」
葵は胸元のポケットに入っていた紙を取り出し明希に見せる。
「素晴らしいことって...入学式の要項じゃん....って登校8時半んんんん!!??」
「そう。君が何をどう勘違いして焦っているのかわからないけど、私はこのまま歩いても遅刻しなくて済むのだ。」
得意気にドヤ顔をする葵をよそに、明希の頭の中は遅刻仲間を失った絶望で真っ黒である。
「なんだよ...遅刻するの俺だけかよ...昨日目覚まし時計セットしたのになぁ...」
自分の記憶を辿り、はっきりと時計をセットしたことを確かめる。
「ふっふーん。セットしたはずの目覚ましが鳴らない!!そんな怪奇現象を体験した明希君にもう1つ素晴らしいことを教えてあげよう。」
お前に付き合っている暇は無い。と言わんばかりの目線を葵に送るが、彼女は気にも留めない。
「君の目覚まし時計は、今朝君が寝ている間に私が解除しておいたのだぁぁぁ!!」
「はぁぁぁぁぁ!!??」
また得意気にドヤ顔を決める葵を見て、頭の中が絶賛混乱中だ。
「なんでそんなことしたんだよ...」
ようやく頭の中が落ち着き、冷静に尋ねる。
「楽しいから♪」
「楽しいからってお前なぁ!!」
「解除しようがしまいが、明希が遅刻することには変わりないでしょ?寝起きすごく悪いんだから。むしろ今日時計を止めてあげたお陰で遅刻せずに済むんだよ?感謝して欲しいくらいよ。」
「そ、そうだけど...」
こっちは朝食を抜いてきたんだぞ。と言いたいところだが、彼女のおかげで遅刻せずに済みそうなのは事実である。
「で、でもどうやって?俺、部屋の施錠はしっかりしてるのに...」
葵は唇の下に人差し指をあて、いかにも「考えてます」ポーズをとり
「んー...それは、ヒ・ミ・ツ♡」
彼女のウインクに妙な寒気を感じる。
「ほら!そんなことより早く行きな!遅刻するよ?」
葵に背中を押され再び学校へと向かう。
校門をくぐり校舎へと入る。クラスは2年生の頃と同じで、階だけの変更だ。
「俺の教室は...と。」
自分の教室の位置を確かめ、教室へと向かう。教室の扉を開けて周りを見渡すと去年と同じメンバーで既にグループが出来つつあった。
「おー。明希。珍しいなー遅刻の王様のお前が遅刻しないなんて。」
朝一で明希に嫌味を浴びせるのは春園綾。明希とは小学校からの付き合いになる。
「お前は相変わらず嫌味口調だな。」
聞き慣れた親友の嫌味を流しつつ席に着く。
「悪かったよ。遅刻の王様は言いすぎた。せめて遅刻の王子様ってところか。」
「どっちも一緒だろ?とりあえず、俺がバカにされてることは変わりない。」
「よくお分かりで。」
ニヤニヤと明希を馬鹿にする綾。
「あ!今朝のニュース見たか!?うちの県で起きてた通り魔の犯人が死んだって!!」
「あー...電柱も何も無いのに感電死したってやつだろ?」
「そうそう!不思議だよなー。原因不明の感電死。昨日は晴れで雷も」
「ほらー。自分の席につけー。」
綾の話の途中で先生が教室に入ってくる。先生の声が聞こえた途端、まとまっていたグループは散り、綾も自分の席へと戻る。
「お前らも今日から受験生だ。後悔のないようにこの1年を――」
先生の現実を見せる発言に多くの生徒がため息をつく。
「それと、今学期からうちのクラスに入る転校生を紹介するー。」
生徒たちは先ほど告げられた現実から早々に目をそらし、一気にわくわくムードへと切り替わる。
「自己紹介して。」
「秋山恵です。今年1年間、よろしくお願いします。」
「秋山は親の都合で転校してきた。受験期ってこともあり大変だろうから、みんな助けてやるようにー。じゃあ秋山、席はそこの窓際の奥のとこだ。」
「分かりました。」
彼女は先生の指さす席へと向かう。
「明希、お前の隣じゃん。」
「そうみたいだな.....」
前の席である綾が振り向いてこちらを見るが、明希は朝の一件の疲れで転校生のことなど考える余裕はない。そんなことをしているうちに恵が席につき明希へ手を差し出す。
「私、恵。今日から宜しくね。」
「あぁ。俺は明希。宜しく。」
明希は彼女の手を握り返した。
心地よい風と桜の香りが、新学期の始まりを告げる。
次章「秘密」
初めての投稿です(*^^)v
暇があればこまめに投稿していきたいと思います!
読みにくいところが多々あると思いますが、作品と共に成長していきたいと考えてます!!
次章は2016年2月中の予定ですm(_ _)m




