プロローグ
オーディション。
それは、夢見る若者たちによる自己表現の発露の場である。
が、アイドルになりたいと思う気持ちは時として暴走しがちでもある。
「十八番! ええっと、できることとかないので……とりあえず、脱ぎます!」
「脈絡もなく脱ぐな!」
「二十三番です! プ、プロデューサーさん、わたしをお嫁にもらって?」
「そういうのいいから!」
「三一番、趣味はポエムです! 『あの花はどうして日陰で咲いているのかしら。ここに輝ける太陽――すなわち私がいるというのに』」
「太陽神!?」
「四九番、顔も性格もいまいちで特技もないけど、やる気だけは誰にも負けません!」
「そのやる気をすこしはアピールに向けてっ!」
僕はぜぇぜぇと息を荒げ、次に部屋に入ってきたメイド服の女性に言う。
「……で、君は?」
「いえ、わたしはただのお付きのメイドですが」
「紛らわしいよ!」
つっこみにも疲れて、僕は改めて僕の左右に座る審査員たちを見る。
妙齢のエルフの美人さん、金髪のお姫さまみたいな少女、ピンク髪の元気そうな幼女。
さっきまでのアイドル志願者たちだって、髪の色だけでも金銀赤青緑黒、種族では人間エルフドワーフまで。
そう。ここは、異世界アイドランド。
そのファンタジックな世界で、僕はなぜか、アイドルのプロデューサーをさせられている。
どうしてこんなことになったのか?
それをわかってもらうためには、一昨日の初めから振り返ってみる必要がある。
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よろしくお願い致します。
天宮暁