血塗られた手
某国 ルーネン協会 AD1820.2
誰もが嫌悪し誰も近づかない、古びた薄暗い墓。
その墓の下には、地下へと続く空間がある。
腐乱した死体が散見し、臓器を蝕むような陰湿な気配を漂わせ、見る者を狂気に陥らせるような空間。
異様な空間に黄色いローブに身をまとった集団がいた。
そのうち一人が、周りを確認する。
「ふむ。全員そろったか...」
「では、始めるとしよう」
・・・・・・・・・・・・・・
「忌々しい奴らは我々を内側から支配しようと企んでいる!
故に我々は戦わなければならない。
奴らを排除し、我が国引いては世界を取り戻すのだ!
我々は人類を牽引する使命を担っている。
だが、憎むべき奴らは内側にまで浸透している。
奴らを排除しなければならない!
そのためには我々は自らの犠牲を恐れてはならないのだ!
そのために今我々は宣言する!
我々が世界に示すのであると!!
我々の科学は世界が未だ到達しえない領域に踏み込んでいる。
しかし、これでは金虫どもが財力に物を言わせて、世界を己がものにしようとするはず。
そのために、我々は作られた!!
占星術、錬金術、魔術、悪魔、霊魂...
ありとあらゆる古来の秘術を探し出せ!!
奴らに思い知らせるのだ!我々の恐ろしさを!!」
__________________________
永遠の不毛 AD1930.2
「ルーネン文字に書かれたこの文献によれば、
350年前、『孤独なるもの』とやらが祭ってたとされる神Ein Sancho Myia
その神の力とされる現象は、死者蘇生。
人類が夢に見るその力!それは神の技に他ならない!!
しかし、所詮はただのオカルト話に過ぎん。
偉大なるわが民族ができないことを下等な蛮族共ができるはずがない!
だが、やつらの思い込みの力は目を見張るものがある。
我々の世界一の科学力で文献を解読した結果、
奴らは未知の薬物を使用していた疑いが極めて高い!
アムフェタモンのような中毒性がなく、催眠状態で洗脳できる力は素晴らしい。
我が偉大なる祖国に害をなるウジ虫どもも正直になるだろう…
故に、諸君らには、この遺跡を調べてもらいたい。
あることはわかっているのだ!
見つけられないなどということは、偉大なる民族にありえるはずがない!
では、頼んだぞ!!」
軍服を身にまとった男はそういうと、車に乗り込みその場を後にした。
見渡す限りの荒れ地。
その場所には、似つかわしくない白衣の2名の若者と老人1名がいた。
「ふざけんなよ...」
そのうちの一人の女が、ポツリと呟いた。
「ふざけんな!何がルーネンだ!
我々は科学者だぞ!!考古学者にそんなことは任せろ!!」
女は地団駄をしながら喚き散らす。
「落ち着いてください。××博士」
それを見た若い男が女を諌める。
「いや、これは暴れさせた方がいい」
白髪の男が諌める男を制止する。
「しかし!」
若者(男)は白髪を睨む。
「仕様がないだろう。我々は体よく捨てられたのだ。
この荒れ地のみが延々と続く土地に...」
白髪は、ボソボソと怯んだように言う。
「ここに送られた者は、皆生きて帰ってこない。
だから、体制に批判的な学者を送り込むって話だ。
我々は捨てられたんだよ...」
白髪は、泣きそうな顔になりながら顔を手で覆い隠した。
延々と続く不毛の大地にその言葉は他の人間には届かなかった。
人間を発見。
情報を検索。
結論、科学者。
100年前の契約。接触。